今年10月、オレゴン州ローズバーグのアムクワ・コミュニティ・カレッジで発生した銃乱射事件を受けて発表した声明の中で、バラク・オバマ米大統領は、同様の銃犯罪が起きた地名を列挙した。
コロンバイン高校(コロラド州)、バージニア工科大学、フォートフッド陸軍基地(テキサス州)、トゥーソン(アリゾナ州)、オーロラ市(コロラド州)、サンディフック小学校(コネチカット州)、ネイビー・ヤード(ワシントン海軍工廠)、イスラビスタ(カリフォルニア州)、チャールストン(サウスカロライナ州)、そして今回のローズバーグ――。
これらはみな、アメリカにおける「銃犯罪、暴力、銃規制」という、複雑に絡まり合った問題を象徴する場所だ。
オバマはこれまでと同様の主張を繰り返し、ローズバーグで銃乱射事件が起きたのは、米連邦議会と各州政府が、銃を販売する際の安全確認と身元照会を定める法律の見直しを迫られている証拠だと述べた。
InsideGov(編集部注:当記事の提供元Graphiqの姉妹サイト)は、「銃による暴力防止法律センター」と「銃による暴力を防ぐブレイディ運動」のデータをもとに、銃規制法が州によってどう異なっているかを調査した。両団体はいずれも、より効果的な銃規制の導入を目指しており、銃規制の厳しさに応じて各州を0点から100点のスコアで評価している。スコアが上がるほど規制が厳しいという意味だ。
上の地図を見るとわかるように、東海岸の州は、銃規制に関してスコアが高い傾向がある。規制の厳しさで最上位の6州のうち5つは東海岸北部の州で、具体的にはコネチカット州(84点)、ニュージャージー州(82.5点)、メリーランド州(80.5点)、ニューヨーク州(79.5点)、マサチューセッツ州(74.5点)だ。
しかし、銃規制で89点を獲得し、総合1位となったのは西海岸のカリフォルニア州だった。銃による暴力防止法律センターによれば、カリフォルニア州では、銃を販売できるのは認可を受けた販売業者のみと定められている。また、購入者に関しては身元照会が必要なほか、筆記試験に合格して銃を安全に取り扱えることを証明するHSC(Handgun Safety Certificate)を取得しなければならない。同州ではさらに、1カ月に購入できるハンドガンは1丁と決められていて、銃の売買は記録に残されている。
一方、スコアが最も低かったのは、アリゾナ州(6点)、アラスカ州(7点)、ワイオミング州(7点)、サウスダコタ州(9点)だ。カンザス、ミシシッピ、バーモントの3州は、10点で5位タイとなった。
銃による暴力防止法律センターのウェブサイトでは、各州の銃規制法を紹介しており、アリゾナ州の場合は、州の認可がなくても銃を販売できることや、1度に購入できる銃の数に制限がないことが説明されている。さらに、ライセンスを所持していなくても公共の場で銃を隠し持ったり、攻撃用ライフルや50口径ライフル、大型弾倉を購入・譲渡したりできるという。
ところで、銃規制を厳しくすれば、銃による犠牲者が本当に減るのだろうか。オバマは記者会見で次のように主張した。「ご承知の通り、銃規制が厳しい州では銃による死亡者が少ない。銃規制には効果がないとか、法を順守する人々が銃を手に入れにくくなるだけで、犯罪者はそれでも銃を手に入れるといった考えには根拠がない」
InsideGovでは、米疾病対策センター(CDC)のデータをもとに、10万人あたりの銃による死亡者数を州別に地図で表してみた。
10万人あたりの銃による死亡者数が最も多かったワースト5は、アラスカ州(19.6人)、ルイジアナ州(19.2人)、アラバマ州(17.8人)、ミシシッピ州(17.6人)、ワイオミング州(17.5人)だった。そのうちアラスカ、ミシシッピ、ワイオミングの3州は、銃規制が最も緩い州に挙げられる。
一方、10万人あたりの銃による死亡者数が最も少ないベスト5は、ハワイ州(2.7人)、マサチューセッツ州(3.2人)、ニューヨーク州(4.4人)、コネチカット州(4.5人)、ロードアイランド州(5.3人)だった。そのうちニューヨーク州とコネチカット州は、銃規制の評価で上位に入っていた。
この2つのデータを1つのグラフにまとめると、あるパターンが浮かび上がってくる。そしてそのパターンは、銃規制の厳しい州では銃による死亡者が少ないという、オバマ大統領の主張を裏付けているように思える。
上のグラフでは、縦軸は10万人あたりの銃による死亡者を示しており、上に行けば行くほど銃で命を落とす人が多いことを意味する。横軸は銃規制の厳しさを示しており、右に行けば行くほど、銃規制が厳しいことを意味する。つまり、上のグラフはおおむね、銃規制の厳しい州では銃による死亡者が少ないことを表しているのだ。
とはいえ、こうした総合的な傾向と矛盾する事実もある。カリフォルニア州は、銃規制に関する評価で89点と最高点をマークしている。また、10万人あたりの銃による死亡者数は7.9人で、全体で8番目に少ない数だ。ところが、ロサンゼルス・タイムズ紙によるアメリカ史上最悪の銃乱射事件リストを見ると、発生件数が最も多いのはカリフォルニア州なのだ。同州では1984年以降、9件の銃乱射事件が起きている(2015年10月時点)。
カリフォルニアは面積ならびに人口が全米トップの州とはいえ、銃乱射事件の発生総数は他州と比べ群を抜いている。例えば、フロリダ州は人口がカリフォルニア州の約半分だが、銃乱射事件は過去34年間で1件しか起きていない。
全般的に見れば、銃規制が厳しければ銃による死亡者も少なくなることをデータは示唆している。ただし、カリフォルニア州での銃乱射事件の発生件数は、留意すべき異例の事態だ。この数字は、何よりも、アメリカにとって銃問題がいかに複雑であるかということと、適切な銃規制についての合意形成がなぜこれほどまでに困難であるかということを表しているのかもしれない。
[原文は2015年10月7日執筆]
パルマー・ギブス
コロンバイン高校(コロラド州)、バージニア工科大学、フォートフッド陸軍基地(テキサス州)、トゥーソン(アリゾナ州)、オーロラ市(コロラド州)、サンディフック小学校(コネチカット州)、ネイビー・ヤード(ワシントン海軍工廠)、イスラビスタ(カリフォルニア州)、チャールストン(サウスカロライナ州)、そして今回のローズバーグ――。
これらはみな、アメリカにおける「銃犯罪、暴力、銃規制」という、複雑に絡まり合った問題を象徴する場所だ。
オバマはこれまでと同様の主張を繰り返し、ローズバーグで銃乱射事件が起きたのは、米連邦議会と各州政府が、銃を販売する際の安全確認と身元照会を定める法律の見直しを迫られている証拠だと述べた。
InsideGov(編集部注:当記事の提供元Graphiqの姉妹サイト)は、「銃による暴力防止法律センター」と「銃による暴力を防ぐブレイディ運動」のデータをもとに、銃規制法が州によってどう異なっているかを調査した。両団体はいずれも、より効果的な銃規制の導入を目指しており、銃規制の厳しさに応じて各州を0点から100点のスコアで評価している。スコアが上がるほど規制が厳しいという意味だ。
上の地図を見るとわかるように、東海岸の州は、銃規制に関してスコアが高い傾向がある。規制の厳しさで最上位の6州のうち5つは東海岸北部の州で、具体的にはコネチカット州(84点)、ニュージャージー州(82.5点)、メリーランド州(80.5点)、ニューヨーク州(79.5点)、マサチューセッツ州(74.5点)だ。
しかし、銃規制で89点を獲得し、総合1位となったのは西海岸のカリフォルニア州だった。銃による暴力防止法律センターによれば、カリフォルニア州では、銃を販売できるのは認可を受けた販売業者のみと定められている。また、購入者に関しては身元照会が必要なほか、筆記試験に合格して銃を安全に取り扱えることを証明するHSC(Handgun Safety Certificate)を取得しなければならない。同州ではさらに、1カ月に購入できるハンドガンは1丁と決められていて、銃の売買は記録に残されている。
一方、スコアが最も低かったのは、アリゾナ州(6点)、アラスカ州(7点)、ワイオミング州(7点)、サウスダコタ州(9点)だ。カンザス、ミシシッピ、バーモントの3州は、10点で5位タイとなった。
銃による暴力防止法律センターのウェブサイトでは、各州の銃規制法を紹介しており、アリゾナ州の場合は、州の認可がなくても銃を販売できることや、1度に購入できる銃の数に制限がないことが説明されている。さらに、ライセンスを所持していなくても公共の場で銃を隠し持ったり、攻撃用ライフルや50口径ライフル、大型弾倉を購入・譲渡したりできるという。
ところで、銃規制を厳しくすれば、銃による犠牲者が本当に減るのだろうか。オバマは記者会見で次のように主張した。「ご承知の通り、銃規制が厳しい州では銃による死亡者が少ない。銃規制には効果がないとか、法を順守する人々が銃を手に入れにくくなるだけで、犯罪者はそれでも銃を手に入れるといった考えには根拠がない」
InsideGovでは、米疾病対策センター(CDC)のデータをもとに、10万人あたりの銃による死亡者数を州別に地図で表してみた。
10万人あたりの銃による死亡者数が最も多かったワースト5は、アラスカ州(19.6人)、ルイジアナ州(19.2人)、アラバマ州(17.8人)、ミシシッピ州(17.6人)、ワイオミング州(17.5人)だった。そのうちアラスカ、ミシシッピ、ワイオミングの3州は、銃規制が最も緩い州に挙げられる。
一方、10万人あたりの銃による死亡者数が最も少ないベスト5は、ハワイ州(2.7人)、マサチューセッツ州(3.2人)、ニューヨーク州(4.4人)、コネチカット州(4.5人)、ロードアイランド州(5.3人)だった。そのうちニューヨーク州とコネチカット州は、銃規制の評価で上位に入っていた。
この2つのデータを1つのグラフにまとめると、あるパターンが浮かび上がってくる。そしてそのパターンは、銃規制の厳しい州では銃による死亡者が少ないという、オバマ大統領の主張を裏付けているように思える。
上のグラフでは、縦軸は10万人あたりの銃による死亡者を示しており、上に行けば行くほど銃で命を落とす人が多いことを意味する。横軸は銃規制の厳しさを示しており、右に行けば行くほど、銃規制が厳しいことを意味する。つまり、上のグラフはおおむね、銃規制の厳しい州では銃による死亡者が少ないことを表しているのだ。
とはいえ、こうした総合的な傾向と矛盾する事実もある。カリフォルニア州は、銃規制に関する評価で89点と最高点をマークしている。また、10万人あたりの銃による死亡者数は7.9人で、全体で8番目に少ない数だ。ところが、ロサンゼルス・タイムズ紙によるアメリカ史上最悪の銃乱射事件リストを見ると、発生件数が最も多いのはカリフォルニア州なのだ。同州では1984年以降、9件の銃乱射事件が起きている(2015年10月時点)。
カリフォルニアは面積ならびに人口が全米トップの州とはいえ、銃乱射事件の発生総数は他州と比べ群を抜いている。例えば、フロリダ州は人口がカリフォルニア州の約半分だが、銃乱射事件は過去34年間で1件しか起きていない。
全般的に見れば、銃規制が厳しければ銃による死亡者も少なくなることをデータは示唆している。ただし、カリフォルニア州での銃乱射事件の発生件数は、留意すべき異例の事態だ。この数字は、何よりも、アメリカにとって銃問題がいかに複雑であるかということと、適切な銃規制についての合意形成がなぜこれほどまでに困難であるかということを表しているのかもしれない。
[原文は2015年10月7日執筆]
パルマー・ギブス