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男尊女卑のサウジで女性が選挙に初参加

ニューズウィーク日本版 2015年12月16日 16時45分

 サウジアラビアで12日に行われた地方議会選で、少なくとも19人の女性が当選した。同国で初めて女性の立候補と投票が認められた選挙になる。

 英字紙アラブ・ニュースによれば、13日の開票の結果、2106人の候補が当選し、そのうち19人が女性だった(女性議員の数を14~20人と報じる通信社もある)。

 今年1月に死去したサウジアラビアのアブドラ前国王が、女性に地方参政権を与えると約束したのは2011年9月。約束がついに果たされた。11月29日の政府の発表によれば、最終的な立候補者は6917人で、うち979人が女性だった。

 今回当選した女性たちは、全議席のわずか1%を占めるにすぎないが、聖地メッカからサウジ最大の東部州まで、当選した選挙区は多岐にわたる。彼女たちの多くは、働く女性のための託児所の時間延長を訴えたり、若者のためのスポーツ・文化活動のための公共施設設置を約束した、とAP通信は報じている。

 選挙結果は大きな一歩ではあるものの、サウジの「女性の権利」改革は今も遅々として進まない。同国では女性の運転を禁じる法律はないのに、女性には運転免許証が発行されない。女性が車を運転すれば、罰金を科され、逮捕される危険もある。

国政レベルの有権者は国王だけ

 他にも、パスポートの取得から結婚、旅行、高等教育まで、「男性保護者」の許可がなければ女性には認められないことばかり。

 せっかくの初の地方参政権を、行使しない女性も多かった。サウジの登録有権者のうち女性はわずか6%――150万人のうち推定13万6000人――を占めるに留まった。

 当選した女性にしても、その権限は限られている。選出されたのは各州の自治評議会であり、州政府に助言したり予算を監督したりする権限はあるものの、立法権がない。

 それでも、選挙結果を歓迎し、将来に希望を抱く女性もいる。サウジの商工会議所でビジネス女性部門のトップを務めるヌーフ・アル・ラカンは、アラブ・ニュースにこう語った。「当選したのは、さまざまな分野で、すでに実績を作っている人ばかり。彼女たちが評議会に出席することで、サウジ女性の有能さを全世界に証明してくれる」

 政府当局も結果を歓迎しており、アブドルラティフ・ビン・アブドルマリク・ビン・オマル・シェイフ都市村落相はアラブ・ニュースに、当選議員らが地方の発展に最大限の貢献をしてくれるだろうと語った。

 国政レベルでは、2013年に故アブドラ国王が「ただ一人の有権者」として、国王に助言する諮問評議会(定員150人)に女性30人を任命したのが初の政治参加となっている。


ナタリー・イルズリ

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