文部科学省の調査によれば、日本から海外への留学者数は2004年をピークに毎年減っている。それでも今、新しいタイプのアメリカ留学ブームが起きていると、本誌ウェブコラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」でお馴染みの在米ジャーナリスト、冷泉彰彦氏は言う。一体どういうことなのか。
これまで主流だった「語学留学」や「大学院留学」とは違う。グローバル化の潮流を背景に、日本の優秀な高校生が「アイビーリーグ」の8校をはじめとするアメリカの一流大学を志望する、全く新しい動きが起こっているのだ。実際、予備校が海外進学を目指す高校生向けのコースを設置したり、国内の一流大学と併願していた海外の大学を選ぶ学生が少数ながら出てきたりしているという。
実は冷泉氏は、1997年以来、ニュージャージー州にあるプリンストン日本語学校高等部で進路指導にあたってきた。プリンストンやコロンビア、カーネギー・メロンなど多くの名門大学に高校生を送り出してきた経験をもとに、『アイビーリーグの入り方――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)を上梓した冷泉氏。アメリカの高等教育の仕組みから、秘密のベールに包まれた「アイビーリーグ入試」の実態、厳選した名門大学30校のデータまでを1冊にまとめている。
ここでは、本書の「Chapter 1 志望校をどうやって選ぶのか?」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。そもそも「名門大学」とはどの大学を指すのだろうか。
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『アイビーリーグの入り方
――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』
冷泉彰彦 著
CCCメディアハウス
※第1回:これまでと違う「アメリカ留学ブーム」が始まっている はこちら
◇ ◇ ◇
リベラルアーツ・カレッジとは?
こうしたグループ全体を「名門大学グループ」と呼ぶのであれば、実はこれに加えて三つのカテゴリを加えなくてはなりません。
それは、「リベラルアーツ・カレッジ」、女子大学の「セブン・シスターズ」、「公立大学に併設のオナーズ・カレッジ」という三つのカテゴリです。この中にも、大変に優れた大学があり、併願リストの中では十分に考慮の対象となってきます。
まず「リベラルアーツ・カレッジ(Liberal Arts College)」ですが、これはアイビーや名門の大規模私学のように「ユニバーシティ」を名乗らない大学群です。あくまで「カレッジ(単科大学)」を名乗っていることから「手軽な」という印象を受けるかもしれませんが、決してそうではありません。
特に、「リトル・アイビー(Little Ivy)」というニックネームで呼ばれる大学群を中心として、名門総合大学と比肩する教育体制を備えており、優秀な学生を集めているのです。その「リトル・アイビー」ですが、ホンモノのアイビーとは違って連盟組織があるわけではないので、何をもって「リトル・アイビー」とするかはいろいろな説があります。
最も広い定義を採用するならば、
●アマースト・カレッジAmherst College(マサチューセッツ州)
●ベイツ・カレッジBates College(メイン州)
●ボードイン・カレッジBowdoin College(メイン州)
●コルビー・カレッジColby College(メイン州)
●コネチカット・カレッジConnecticut College(コネチカット州)
●ハミルトン・カレッジHamilton College(ニューヨーク州)
●ハヴァフォード・カレッジHaverford College(ペンシルベニア州)
●ミドルベリー・カレッジMiddlebury College(バーモント州)
●スワースモア・カレッジSwarthmore College(ペンシルベニア州)
●トリニティ・カレッジTrinity College(コネチカット州)
●ウィリアムズ・カレッジWilliams College(マサチューセッツ州)
の11校、さらにこれに「カレッジ」を名乗らないウエスレヤン大学(Wesleyan University コネチカット州)とタフツ大学(Tufts University マサチューセッツ州)を加えてもいいでしょう。
ちなみに、アイビー8校の一角を占めるダートマス・カレッジは(実際は大学院も併設されているのですが)、この「リベラルアーツ・カレッジ」のカテゴリに入れることもできます。
小規模で柔軟性が高いリベラルアーツ・カレッジ
この「リベラルアーツ・カレッジ」ですが、いくつかの特徴があります。
第1は小規模ということです。1学年あたりの学生数が1000人前後以下という中で、カウンセラーや教授陣が個々の学生と家族的なコミュニケーションを取る雰囲気があると言われています。この点は、在学生や卒業生に聞くと重要な点だそうです。
第2は(厳密に言うと例外もあるのですが)、大学院を併設していないことです。院を併設していないということは、教授は院生の指導をしていないわけで、一見すると「最先端の学問から遠い」印象を受けるかもしれませんが、決してそうではありません。
むしろ、学部学生への指導のプロに徹しながら自分の研究に専念できる、つまり総合大学の教授陣のように、学部生指導+院生指導+研究という「三つのタスク」を背負っているわけではないので、より行き届いた研究ができるという評価もあります。
第3は、幅広い専攻科目を揃えている中で、主専攻(メジャー)と副専攻(マイナー)の選択の柔軟性が高いということが言えます。
例えば、バイオテクノロジーと美術史などという「意外な組み合わせ」を主専攻+副専攻にして卒業するなどということは、大規模な総合大学では学科によってキャンパスが異なるとか、専攻科目のプログラムが欲張りすぎていて、別分野の副専攻との両立が難しいなどの問題が生じることがあるわけですが、小規模で融通の利く単科大学の場合は比較的楽だと言われています。
第4は、これは意外な点なのですが、単科大学であり大学院の併設されていない「リベラルアーツ・カレッジ」の方が、意外と「ロースクール(法科大学院Law School)」や「メディカルスクール(医科大学院Medical School)」への進学実績が良いということが指摘できます。
柔軟なカリキュラム編成を活かして、「プリ・ロウ(法科大学院予科Pre-Law)」や「プリ・メッド(医科大学院予科Pre-Med)」のコースで高い評価を得ている場合があるのです。
そんなわけで、この「リベラルアーツ・カレッジ」というのは知る人ぞ知る存在として、アメリカの大学界の中で独自の地位を占めているのです。
※第3回:アメリカの女子大には「上昇志向の強い」女性が集まる はこちら
これまで主流だった「語学留学」や「大学院留学」とは違う。グローバル化の潮流を背景に、日本の優秀な高校生が「アイビーリーグ」の8校をはじめとするアメリカの一流大学を志望する、全く新しい動きが起こっているのだ。実際、予備校が海外進学を目指す高校生向けのコースを設置したり、国内の一流大学と併願していた海外の大学を選ぶ学生が少数ながら出てきたりしているという。
実は冷泉氏は、1997年以来、ニュージャージー州にあるプリンストン日本語学校高等部で進路指導にあたってきた。プリンストンやコロンビア、カーネギー・メロンなど多くの名門大学に高校生を送り出してきた経験をもとに、『アイビーリーグの入り方――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)を上梓した冷泉氏。アメリカの高等教育の仕組みから、秘密のベールに包まれた「アイビーリーグ入試」の実態、厳選した名門大学30校のデータまでを1冊にまとめている。
ここでは、本書の「Chapter 1 志望校をどうやって選ぶのか?」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。そもそも「名門大学」とはどの大学を指すのだろうか。
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『アイビーリーグの入り方
――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』
冷泉彰彦 著
CCCメディアハウス
※第1回:これまでと違う「アメリカ留学ブーム」が始まっている はこちら
◇ ◇ ◇
リベラルアーツ・カレッジとは?
こうしたグループ全体を「名門大学グループ」と呼ぶのであれば、実はこれに加えて三つのカテゴリを加えなくてはなりません。
それは、「リベラルアーツ・カレッジ」、女子大学の「セブン・シスターズ」、「公立大学に併設のオナーズ・カレッジ」という三つのカテゴリです。この中にも、大変に優れた大学があり、併願リストの中では十分に考慮の対象となってきます。
まず「リベラルアーツ・カレッジ(Liberal Arts College)」ですが、これはアイビーや名門の大規模私学のように「ユニバーシティ」を名乗らない大学群です。あくまで「カレッジ(単科大学)」を名乗っていることから「手軽な」という印象を受けるかもしれませんが、決してそうではありません。
特に、「リトル・アイビー(Little Ivy)」というニックネームで呼ばれる大学群を中心として、名門総合大学と比肩する教育体制を備えており、優秀な学生を集めているのです。その「リトル・アイビー」ですが、ホンモノのアイビーとは違って連盟組織があるわけではないので、何をもって「リトル・アイビー」とするかはいろいろな説があります。
最も広い定義を採用するならば、
●アマースト・カレッジAmherst College(マサチューセッツ州)
●ベイツ・カレッジBates College(メイン州)
●ボードイン・カレッジBowdoin College(メイン州)
●コルビー・カレッジColby College(メイン州)
●コネチカット・カレッジConnecticut College(コネチカット州)
●ハミルトン・カレッジHamilton College(ニューヨーク州)
●ハヴァフォード・カレッジHaverford College(ペンシルベニア州)
●ミドルベリー・カレッジMiddlebury College(バーモント州)
●スワースモア・カレッジSwarthmore College(ペンシルベニア州)
●トリニティ・カレッジTrinity College(コネチカット州)
●ウィリアムズ・カレッジWilliams College(マサチューセッツ州)
の11校、さらにこれに「カレッジ」を名乗らないウエスレヤン大学(Wesleyan University コネチカット州)とタフツ大学(Tufts University マサチューセッツ州)を加えてもいいでしょう。
ちなみに、アイビー8校の一角を占めるダートマス・カレッジは(実際は大学院も併設されているのですが)、この「リベラルアーツ・カレッジ」のカテゴリに入れることもできます。
小規模で柔軟性が高いリベラルアーツ・カレッジ
この「リベラルアーツ・カレッジ」ですが、いくつかの特徴があります。
第1は小規模ということです。1学年あたりの学生数が1000人前後以下という中で、カウンセラーや教授陣が個々の学生と家族的なコミュニケーションを取る雰囲気があると言われています。この点は、在学生や卒業生に聞くと重要な点だそうです。
第2は(厳密に言うと例外もあるのですが)、大学院を併設していないことです。院を併設していないということは、教授は院生の指導をしていないわけで、一見すると「最先端の学問から遠い」印象を受けるかもしれませんが、決してそうではありません。
むしろ、学部学生への指導のプロに徹しながら自分の研究に専念できる、つまり総合大学の教授陣のように、学部生指導+院生指導+研究という「三つのタスク」を背負っているわけではないので、より行き届いた研究ができるという評価もあります。
第3は、幅広い専攻科目を揃えている中で、主専攻(メジャー)と副専攻(マイナー)の選択の柔軟性が高いということが言えます。
例えば、バイオテクノロジーと美術史などという「意外な組み合わせ」を主専攻+副専攻にして卒業するなどということは、大規模な総合大学では学科によってキャンパスが異なるとか、専攻科目のプログラムが欲張りすぎていて、別分野の副専攻との両立が難しいなどの問題が生じることがあるわけですが、小規模で融通の利く単科大学の場合は比較的楽だと言われています。
第4は、これは意外な点なのですが、単科大学であり大学院の併設されていない「リベラルアーツ・カレッジ」の方が、意外と「ロースクール(法科大学院Law School)」や「メディカルスクール(医科大学院Medical School)」への進学実績が良いということが指摘できます。
柔軟なカリキュラム編成を活かして、「プリ・ロウ(法科大学院予科Pre-Law)」や「プリ・メッド(医科大学院予科Pre-Med)」のコースで高い評価を得ている場合があるのです。
そんなわけで、この「リベラルアーツ・カレッジ」というのは知る人ぞ知る存在として、アメリカの大学界の中で独自の地位を占めているのです。
※第3回:アメリカの女子大には「上昇志向の強い」女性が集まる はこちら