今週5日、新年早々にオバマ大統領はホワイトハウスに「乱射事件の被害者と遺族」を招いて、彼らに語りかける形を取りながら全国へ向けてテレビ会見を行いました。その際に「涙を浮かべながら銃の悲劇を繰り返すな」と訴える大統領の姿は、大きく報道されています。
ですが、この「オバマ銃規制案」の内容は「全くの腰砕け」としか言いようのないものです。
まず今回の提案は3点あるというのですが、具体的には「銃見本市(ガンショー)やネット販売などでの銃購入者の身元確認の徹底を『業者』に義務付ける」、「違法な銃取引に対する取り締まりの徹底」、「保険適用の拡大など精神疾患に対する治療の充実」というのがその内容です。
要するに「銃規制」ということでは、1つ目の「購入時の身元チェックの強化」だけであり、2つ目はこれを徹底するための取り締まりをするということ、そして3つ目は「精神疾患の既往症のある人物には銃を売らない」のではなく、疾患に対する治療を強化するという「間接的な対策」であり、銃規制の施策として画期的でも何でもないものです。
では、オバマ政権は「何から逃げた」のでしょうか?
アメリカが銃社会という病理から本当に脱するためには、「警察官、保安官、狩猟ライセンス保持者」以外の銃所有を禁止し、その上で「既に社会に出回っている銃の回収」を行わなくてはなりません。
要するに国民の武装解除ということになりますが、これは合衆国憲法修正第2条の「市民の武装の権利」の改正が必要となります。その改正については、要するに独立戦争に由来する市民の「自衛権・革命権」を取り上げることになり、事実上不可能と言えます。
ですが、「銃禁止」は無理にしても、アメリカで有効な銃の規制として検討されている案はもっと他にあります。具体的には次の3つです。
1つ目は、多くの乱射事件で使われている「アサルト・ライフル」つまり、軽機関銃並の連射能力を持つ、本来は軍用である重火器の販売の禁止です。
2つ目は、こうした「アサルト・ライフル」に使われる「多弾マガジン」の販売を禁止するという措置です。「アサルト・ライフル」は全米で数多く出回っているわけですが、マガジンの販売を禁止すれば乱射事件を抑制できるからです。
3つ目は、販売時の身元チェックの徹底を『業者』だけでなく、『個人』が販売する際にも全面的に適用するということです。
実は、1と2は全米で規制ができていた時期があります。それは、ビル・クリントン政権の時代に、例えば日本人留学生の射殺事件などを重く見たクリントンが、様々な議会工作の上で実現した「ブレイディ法」というもので、一定以上の連射能力を持つ「アサルト・ライフル」と、専用の「多弾マガジン」を国のレベルで規制したのです。
残念ながら、この「ブレイディ法」は時限立法であり、ブッシュ政権が更新しなかったために失効しました。そして、その失効後に膨大な量の「アサルト・ライフル」が合法的に販売されているのです。そして、ここ数年発生している乱射事件では、この「アサルト・ライフル」が使われることで、多くの犠牲者を出しています。
ですから、この「アサルト・ライフル」と「多弾マガジン」の販売禁止は急務と言えるのですが、この点に関しては銃保有派の抵抗が激しいために、大統領も今回の案に含めることはできませんでした。
どうして世界的にも見ても異常な「軍用連射銃」が野放しになっているのかというと、それは単純な理由です。銃保有派には「連射能力の高い銃が出回っている」のなら「自分も持っていないと自分や家族が守れない」という感覚があるのです。つまり、相手を上回る火力がなくては不安だということです。
それにしても、今回のオバマ大統領の会見は奇妙でした。例えば、有名になった「涙」のシーンというのは、2012年12月にコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で「小学校1年生が20人殺された」ということに言及した際のものでした。
その中で「20人」それも「小学校1年生」と繰り返す中で感情があふれてきたのですが、この事件こそ「アサルト・ライフル」の恐ろしさを社会に決定的に印象づけたわけで、この事件に言及しておきながら、その問題を施策に盛り込めないどころか、言及すらできないというのは、腰が引けているとしか言いようがありません。
さらに、本来であれば議会を動かして法案を成立させて実施すべき規制策を、議会では「絶対に通らない」からということで、大統領令(エグゼクティブ・オーダー)で済ませたというのは、逃げ腰と言われても仕方がないと思います。
ちょうど大統領選の予備選が進行する中で、これに対して共和党の各候補からは一斉に反発の声が上がっています。特に「大統領令」で規制を行ったことに対しては「ヒトラーのような強権だ」とか「自分が大統領になったら初日に破棄する」などという激しい言葉で罵倒されています。
反対に、民主党の側は大統領の立場に理解を示して、銃規制を推進するという立場を取っていますが、選挙戦でどこまで真剣に銃規制を訴えることができるかどうかはわかりません。
いずれにしても、今回の会見と「大統領令」の発令で、おそらくオバマ政権としての「銃」への取り組みは「終わり」になると思われます。だとすれば、その成果は極めてお粗末だったとしか言いようがありません。とてもオバマの「レガシー(遺産)」になるような話ではないのです。
ですが、この「オバマ銃規制案」の内容は「全くの腰砕け」としか言いようのないものです。
まず今回の提案は3点あるというのですが、具体的には「銃見本市(ガンショー)やネット販売などでの銃購入者の身元確認の徹底を『業者』に義務付ける」、「違法な銃取引に対する取り締まりの徹底」、「保険適用の拡大など精神疾患に対する治療の充実」というのがその内容です。
要するに「銃規制」ということでは、1つ目の「購入時の身元チェックの強化」だけであり、2つ目はこれを徹底するための取り締まりをするということ、そして3つ目は「精神疾患の既往症のある人物には銃を売らない」のではなく、疾患に対する治療を強化するという「間接的な対策」であり、銃規制の施策として画期的でも何でもないものです。
では、オバマ政権は「何から逃げた」のでしょうか?
アメリカが銃社会という病理から本当に脱するためには、「警察官、保安官、狩猟ライセンス保持者」以外の銃所有を禁止し、その上で「既に社会に出回っている銃の回収」を行わなくてはなりません。
要するに国民の武装解除ということになりますが、これは合衆国憲法修正第2条の「市民の武装の権利」の改正が必要となります。その改正については、要するに独立戦争に由来する市民の「自衛権・革命権」を取り上げることになり、事実上不可能と言えます。
ですが、「銃禁止」は無理にしても、アメリカで有効な銃の規制として検討されている案はもっと他にあります。具体的には次の3つです。
1つ目は、多くの乱射事件で使われている「アサルト・ライフル」つまり、軽機関銃並の連射能力を持つ、本来は軍用である重火器の販売の禁止です。
2つ目は、こうした「アサルト・ライフル」に使われる「多弾マガジン」の販売を禁止するという措置です。「アサルト・ライフル」は全米で数多く出回っているわけですが、マガジンの販売を禁止すれば乱射事件を抑制できるからです。
3つ目は、販売時の身元チェックの徹底を『業者』だけでなく、『個人』が販売する際にも全面的に適用するということです。
実は、1と2は全米で規制ができていた時期があります。それは、ビル・クリントン政権の時代に、例えば日本人留学生の射殺事件などを重く見たクリントンが、様々な議会工作の上で実現した「ブレイディ法」というもので、一定以上の連射能力を持つ「アサルト・ライフル」と、専用の「多弾マガジン」を国のレベルで規制したのです。
残念ながら、この「ブレイディ法」は時限立法であり、ブッシュ政権が更新しなかったために失効しました。そして、その失効後に膨大な量の「アサルト・ライフル」が合法的に販売されているのです。そして、ここ数年発生している乱射事件では、この「アサルト・ライフル」が使われることで、多くの犠牲者を出しています。
ですから、この「アサルト・ライフル」と「多弾マガジン」の販売禁止は急務と言えるのですが、この点に関しては銃保有派の抵抗が激しいために、大統領も今回の案に含めることはできませんでした。
どうして世界的にも見ても異常な「軍用連射銃」が野放しになっているのかというと、それは単純な理由です。銃保有派には「連射能力の高い銃が出回っている」のなら「自分も持っていないと自分や家族が守れない」という感覚があるのです。つまり、相手を上回る火力がなくては不安だということです。
それにしても、今回のオバマ大統領の会見は奇妙でした。例えば、有名になった「涙」のシーンというのは、2012年12月にコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で「小学校1年生が20人殺された」ということに言及した際のものでした。
その中で「20人」それも「小学校1年生」と繰り返す中で感情があふれてきたのですが、この事件こそ「アサルト・ライフル」の恐ろしさを社会に決定的に印象づけたわけで、この事件に言及しておきながら、その問題を施策に盛り込めないどころか、言及すらできないというのは、腰が引けているとしか言いようがありません。
さらに、本来であれば議会を動かして法案を成立させて実施すべき規制策を、議会では「絶対に通らない」からということで、大統領令(エグゼクティブ・オーダー)で済ませたというのは、逃げ腰と言われても仕方がないと思います。
ちょうど大統領選の予備選が進行する中で、これに対して共和党の各候補からは一斉に反発の声が上がっています。特に「大統領令」で規制を行ったことに対しては「ヒトラーのような強権だ」とか「自分が大統領になったら初日に破棄する」などという激しい言葉で罵倒されています。
反対に、民主党の側は大統領の立場に理解を示して、銃規制を推進するという立場を取っていますが、選挙戦でどこまで真剣に銃規制を訴えることができるかどうかはわかりません。
いずれにしても、今回の会見と「大統領令」の発令で、おそらくオバマ政権としての「銃」への取り組みは「終わり」になると思われます。だとすれば、その成果は極めてお粗末だったとしか言いようがありません。とてもオバマの「レガシー(遺産)」になるような話ではないのです。