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グローバルなTV会議を成功させる6つの方法

ニューズウィーク日本版 2016年1月8日 20時5分

 文化や科学技術が進歩しても、人間の基本は変わらない。自分と似ている人と一緒にいたほうが楽しい。だから、自ずと世界観を共有する気の合う者どうしが群れることになる。また、実際に会ってみなければ相手を信頼できるかどうかを判断できないと、多くの人が考えている。

 これは、国籍の異なるメンバーからなる「グローバルチーム」の運営にとってきわめて大きな障害になる。なぜなら、チームワークの重要な基盤の1つは「信頼」にほかならないからだ。

 多様性はイノベーションを生み出し、集団的知性を高めるのに役立つ。ただし、私たちが多様性を尊重し、その恩恵を享受できるようになるまでには時間がかかる。自分と似ていない人々との協働に慣れるまでに、対面でのコミュニケーションがある程度必要なのだ。ところが、グローバルチームではメンバーが世界中に散らばっているため、それができない。テレビ会議システムの技術がいかに進歩しても、メンバー同士が互いの目を見て信頼できる相手かどうかを確かめることは不可能だ。

 では、どうすればいいのか。以下は、グローバルチームを機能させるためのアドバイスだ。

(1)チームをスリムにしておく

 グローバルチームは、放っておくとどんどん人数が増えていく。たとえば、テレビ会議によるチームミーティングで、遠隔地のメンバーから何かを依頼されたとする。でもその趣旨がどうも飲み込めない。そこで、"こちら側"にいる誰かに相談してみる。そして、次のミーティングには、その相談した相手にも参加してもらう。その場でサポートしてもらえるので安心だからだ。

 ところが次第に、"こちら側"の2人は、"向こう側"とつながっていないときに「英語のアクセントがおかしいよね」などと陰口を叩くようになる。そうなると、"向こう側"にいるメンバーとの心理的な距離は離れていく一方だ。

 世界中のメンバーが、同じようにサポート役を加えていったらどうなるだろう。チームの人数が倍になる。チームミーティングを開くことすら困難になり、責任の所在があいまいになる。チームのメンバーは5人から9人ぐらいにとどめておくべきだろう。

(2)時差を最小限にとどめる

 グローバルチームのミーティングをメンバー全員が都合のよい時間に開くのは至難の技だ。そこで、時差8時間以内の、時差が大きくなりすぎないメンバーのみを集めるのも一手だ。

 どうしてもフランス人とオーストラリア人を同じチームに入れなくてはならないときには、ミーティングの時刻を日によって変えるなど、負担が平等になるようにするべき。どちらかがいつも早朝に起きたり、夜更かししなければならないといった状況は避けよう。

(3)お互いのことをよく知る

 グローバルチームを有効なものにするためには、意識的にお互いを知るための時間をつくるべきだ。毎回のミーティングに、近況報告や誕生日や昇進のお祝いなどの時間を取り入れたらどうだろう。あるいはその時間を使って日常生活の中での残念なできごとについて話し、その気持ちを皆で共有してもよい。

 たいていの人は自らの失敗や自分で招いた災難などを人に話すのをためらうものだ。だが、そうしたマイナスの話題を、敢えてミーティングでの話し合いに含めることに意味がある。チームメンバーは悪い状況のときにも支え合うものだからだ。

(4)文化の違いを理解する

 イギリスは個人主義の国だ。それゆえイギリス人は、他のチームメンバーの意見を参考にせず、自分だけで考えて問題の解決策を提案しがちだ。一方、集団主義的な考え方をするインド人のメンバーは、アイデアをまとめる前に他者の考えも尊重しながら慎重な話し合いをする。

 また、中国人のような階層や序列を重視する国民性には注意が必要だ。安易に権威に従う傾向があるからだ。彼らの考えを引き出したかったら、チームリーダーは話し合いの最初の時点で自分の意見を言ってはならない。彼らはその考えに即座に同意してしまう。その点、アメリカ人に対しては気をつかう必要はない。彼らは大勢の前でも反対意見を述べるのに躊躇しない。

 人間の行動の少なくとも半分は文化の違いに関係しているとされており、無視することはできない。合意のためのメソッドを経験則としてストックしておけば、話し合いが行き詰まったときの解決に役立てることができるだろう。

(5)念には念を入れたコミュニケーションを

 私たちは、話すときの4倍から7倍の速さで思考している。それゆえに自分の思考が邪魔をして、誰かが話していることにしっかりと集中するのが難しいときがある。交渉の達人はそのことを心得ているので、最初に自分がどんな目的で話をしようとしているのかを前置きする。

 これは、グローバルチームの話し合いにも応用できるテクニックだ。「提案させてください」「質問があるのですが」「解決策を提案してもよろしいでしょうか」などのフレーズから話を始めると、聞いている人の注意を集中させやすい。

「今日までに提出するとあなたに約束したリポートのことを覚えていますか? こちらになります」というように、念には念を入れて、はっきりと言葉にして伝えることも大事だ。それがトラブルを避けることにもつながる。

(6)難しい問題を避けない

 チームがおかしくなっていることは気づかれにくいものだ。問題が明らかになったときには、すでに対処しきれない大問題になっていることもある。そんなとき、私たちは往々にして問題を見ないようにし、嵐が過ぎ去るのを待とうとする。それでは済まないことが判明したときに初めて解決のヒントを探り始める。だが、そこで見つかるヒントは些細なもので、役立つことは少ない。

 そうこうしているうちに問題はさらに大きくなる。すると「誰かのせい」にしようという動きが出てくる。チームを見渡して責任を押しつけやすいメンバーを探す。チームの中には、少数派で誰もその人のことを"よく知らない"メンバーがいる。そうしてスケープゴートが決定される。

 心ない陰口が横行するようになり、そのメンバーがチームを去ることで決着する。しかし、スケープゴートが去ったところで、問題が解決することはない。ふくらむ問題の原因のほとんどは個人ではなく、チームのあり方にあるからだ。

 こうした事態を避けるためには、最初から強固なチームのルールを確立しておくことが有効だ。そのルールには、解決の難しい問題を話し合いのテーブルに載せるための方法も含めておく。たとえば、何か言いづらいことがあるときには「赤い旗」を立てる、という方法もいいだろう。

 定期的に迅速で簡単な社内アンケートを実施する方法もある。チーム全体について、また、生産性、モチベーション、役割分担などについてどう感じているかを継続的に聞いていくのだ。そして調査結果を公表してそれについて話し合い、チームの改善に活用する。こうした具体的で本質的な対話がひんぱんに行われるようになれば、メンバー同士が打ち解け、お互いを信頼するようになるのではないだろうか。

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※当記事は「Dialogue Sep/Nov 2015」からの転載記事です





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