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2016年のネット配信はこう変わる──米メディアが予測する動画・音楽サービスの新トレンド

ニューズウィーク日本版 2016年1月18日 14時45分

 2015年の動画・音楽ネット配信の状況を振り返ると、定額制の見放題・聴き放題のサービスが日本でも一気に普及した1年だった。音楽ではアップルが7月、グーグルが9月に定額制配信を開始し、動画では米大手のネットフリックスが日本進出を果たした。アマゾンに至っては、年会費3900円のプライム会員向けに動画見放題、音楽聴き放題のサービスを相次いで開始し、料金面で競合を大きくリードしている。

 では、2016年のネット配信はどのような変化が起きるのだろうか。米メディアからいくつか予測が出ているので、日本にも関係しそうなものをピックアップして紹介したい。

4K配信の普及

 OnlineVideo.netは、HDコンテンツの場合は消費者が追いつくのに数年かかったが、4Kコンテンツはオンラインの動画配信環境や、「iPhoneや「GoPro」などの4K録画対応機器が整ってきたことから、HDよりも速いペースで普及すると予想している。有料配信サービスではアマゾン、ネットフリックス、Sony PlayStation Videoなどが対応(日本ではほかにdTV、ひかりTVも)。無料サービスではYouTube、Vimeoで視聴や投稿ができる。

アマゾンがテレビチャンネルをバンドルした動画サービスを別途立ち上げ

 Advanced Televisionは、アマゾンが現行の有料動画配信に複数のテレビチャンネルを組み合わせた新しいサービスを開始すると予測。これは、配送の特典などが受けられるアマゾンプライム会員向けのプライムビデオを独立させるのではなく、別途新たなサービスとして(「Amazon TV」などの名称で)2016年末までに立ち上げるという。次に紹介するアップルの予想と合わせると、有料の動画コンテンツを手がける大手がテレビチャンネルの配信に参入する動きは今後の重要なトレンドになりそうだ。

アップルのストリーミングTVサービス

 Multichannel Newsの予想では、アップルは複数のテレビネットワークと提携し、今年夏までに独自のストリーミングテレビサービスを開始するという。アップルは昨年セットトップボックス「Apple TV」の新モデルを発売し、「tvOS」というアプリプラットフォームも立ち上げた。同社としてはこれらとストリーミングサービスの相乗効果を狙う戦略だが、一方で米テレビネットワーク大手CBS Corpのレスリー・ムーンブスCEOが「アップルはテレビ配信の計画を保留した」と述べており、開始時期はさらに遅れるのかもしれない。

VRおよび360度コンテンツ配信の台頭

 2016年はバーチャルリアリティ(VR)のコンテンツも充実していきそうだ。Varietyによると、Huluは今春、VRヘッドセット向けコンテンツの配信を開始するという。Universal Music Groupも、VRヘッドセットで楽しむコンサートや音楽ビデオなどのコンテンツを年内にリリースする計画だ( Hypebot.comの記事)。先のOnlineVideo.netの予想では、360度ビデオの実験的な配信も、昨年の先行組に加え、今年数社が実験に乗り出すという(以下はフェイスブック上で公開された『スター・ウォーズ』の360度ビデオ)。
 (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0]; if (d.getElementById(id)) return; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "//connect.facebook.net/ja_JP/sdk.js#xfbml=1&version=v2.3"; fjs.parentNode.insertBefore(js, fjs);}(document, 'script', 'facebook-jssdk'));Speed across the Jakku desert from Star Wars: The Force Awakens with this immersive 360 experience created exclusively for Facebook.Posted by Star Wars on 2015年9月23日

 360度ビデオは、ブラウザ上の閲覧でも十分に面白いが、VRヘッドセットで見るとさらに没入感が増すだろう。今後マーケティングに活用する企業が増えれば、360度ビデオの特性を活かすさまざまな工夫が試みられて、楽しみ方が広がるはずだ。

定額制音楽配信の高音質化

 音楽に話題を移すと、高音質化のトレンドがストリーミング配信にも及びそうだ。96kHz/24bit以上のいわゆる「ハイレゾ」フォーマット(CDの44.1kHz/16bitよりも解像度が高い)の楽曲は、ダウンロード販売では数年前から提供されてきたが、Fast Companyの予測によると、アップルが今年、ハイレゾ音楽のストリーミング配信を開始。そうなると、有料会員向けに320kbpsの「高音質」圧縮フォーマットを配信しているスポティファイなど、競合サービスにプレッシャーがかかり、高音質化の動きが広がるとみている。

音楽ストリーミングサービスの淘汰

 Fast Companyはまた、現在10社もの定額制音楽サービスが競合する米国では、淘汰が始まるのは時間の問題だとしている。アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンの4強がすべて参入を果たしたことで、比較的小規模なサービスは撤退または買収されるとし、候補としてTidalやRhapsodyを挙げている。

 なお、日本での音楽ストリーミングの勢力図に影響を与えそうなのが、現在米国のみで提供されているグーグル傘下の「YouTube Music」だ。これは基本的にはスポティファイと同じ、広告付き無料配信と広告無しの有料配信のフリーミアムモデル。日本からYouTube Musicにアクセスすると、日本語でサービス概要が掲載され、「ダウンロード」のボタンからサービス開始の告知を受けるためのメールアドレスを登録できる。スポティファイかYouTube Musicか、どちらかが今年日本でサービスインして、「無料で聴き放題」の時代が到来するかどうかも気になるところだ。



高森郁哉(翻訳者、ライター)

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