2月14日はバレンタインデー。ここアメリカでは日本とは逆で、男性が女性をデートに誘い、カードや花束をプレゼントしてロマンチックな1日を過ごす。夜はレストランがカップルでひしめくこの日を前に、そわそわしているのは若者だけではない。アメリカでは今、「デートしたい」中高年がオンラインでの恋人探しに精を出している。その数は2年前に比べてなんと倍増しているという。
2月11日にピュー・リサーチセンターが発表した昨年夏の調査データによれば、55~64歳のアメリカ人のうち、いわゆる「出会い系」のインターネットサイトやモバイルアプリを使ったことがある人は12%と、2013年の6%から2倍に増えた。今や55~64歳の中高年層の約10人に1人が、多くの若者たちと同じくネットやアプリをのぞきこみながら恋人探しにいそしんでいるのだ。
それもそのはず。1946~1964年に生まれたベビーブーム世代は、「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の時代に成人した好奇心旺盛な大人たちだ。今年で52~70歳となる彼らが、気軽に出会える便利なツールを若者たちに独占させておくわけがない。
【参考記事】婚活疲れを防ぐ初デート突破の秘訣
恋に積極的なこの世代に、独身の男女が溢れていることも「出会い系」人気の大きな理由だろう。ベビーブーム世代の独身率は過去に比べて上昇しており、国勢調査局によれば2003年、伴侶がいない55~64歳は27%だったが、2014年には31.8%に上がった(17%が離婚、4.9%が死別、9.9%は非婚)。この前後の年代でも、50~54歳の独身率は32.1%、65~74歳の独身率は32.3%と、全体の3分の1を占める。
若者たちに一足遅れる形で、ソーシャルメディアに慣れ親しんできたというのも一因だ。ピューの別の調査によれば、50~64歳のソーシャルメディアの利用率は2010年に33%だったのが、2015年には51%に高騰した(ちなみに日本の50代のソーシャルメディア利用率も45.9%と意外に高い。60代だと17.3%と激減するが)。デートはしたい。だが昔のようにバーで出会う歳でもない――そんな中高年にとって、じっくりこっそり恋人を探せる「出会い系」は、実は恋人そのものと同じくらい魅力的な代物なのかもしれない。
一方で、もちろん若者たちも負けてはいない。今回発表された調査では、18歳以上の男女のうち「出会い系」のサイトやアプリを使ったことのある人は15%と、2013年の11%より増加した。なかでも伸び率が顕著なのは18~24歳の若年層で、2年前の10%から今や27%にまで上昇している。この世代は、実に10人中3~4人が使ったことがある計算だ。
同じ調査で、こうした「出会い系」サイト・アプリ使用経験者の80%が「新しい人に会うのに良い」とポジティブな見方を示している。とはいえネガティブな面もあるようで、使用経験者の約半数の45%が出会い系は「他の出会い方より危険だ」と回答。また、31%が「常にデート相手の選択肢があるため、決まった相手に落ち着きにくくなる」と言い、16%が「出会い系を使っている人は必死だ」という見方に同意した。
デート相手は同時並行で何人いてもいいから
「他の出会い方より危険だ」と感じるのは女性が53%、男性が38%と男女に差があるのは、アメリカでは恋人未満の「デート相手」とでもカラダの関係に発展するケースが多いからだろう。そもそもこの国では「デート相手」と「恋人」というのは全く別のカテゴリーであり、単なるデート相手から正式な「彼氏彼女」に昇格するまでには"ベルリンの壁"が立ちはだかっている。
【参考記事】アメリカ人の想像を絶する日本の「草食男子」
デート相手は同時平行で何人いてもよく、反対に彼氏彼女というのはお互いにエクスクルーシブ(あなただけよ)な関係、つまり他の男女に手を出したらそれは「浮気」になるという、日本でいうところの「恋人」だ。この、恋人にしたいかどうかのお試し期間(=デート)のうちにセックスも試してみるというのはよく聞く話で、同時期に何人のデート相手と熱い夜を過ごそうとも「ルール違反」にならないため、男性よりも女性のほうが「危険」を感じても不思議ではない。
さらに厄介なのは、アメリカには「付き合ってください」と告白する文化がなく、デートしている段階では自分が正式な「恋人」なのかどうかが分かりづらいこと。「僕の彼女になってくれる?」とコクハクする真面目男子も中にはいるらしいが、一般的には、友人などに「この子は僕の彼女」と紹介されて初めて「彼女に認定された」と気付いたり、「お互いにエクスクルーシブな関係になろう」という話し合いを経るなどして「恋人」にレベルアップする。「出会い系」はデート相手探しのハードルを下げてはくれても、そこから恋人や生涯の伴侶になるまでの道のりは自分で切り開くしかないようだ。
「必死な」熟年シングルが求めるのは、生涯の伴侶かデート相手か。いずれにせよ、経験豊富で若者よりも「危険」を回避できるであろう中高年にとって、こうしたツールがホットな出会いの場になりつつあることは間違いない。「デートしたい」気持ちは何歳になっても同じはず。中高年の皆さん、アメリカ人に負けじとがんばりましょう(ただし、「独身者」限定で)。
小暮聡子(ニューヨーク支局)
2月11日にピュー・リサーチセンターが発表した昨年夏の調査データによれば、55~64歳のアメリカ人のうち、いわゆる「出会い系」のインターネットサイトやモバイルアプリを使ったことがある人は12%と、2013年の6%から2倍に増えた。今や55~64歳の中高年層の約10人に1人が、多くの若者たちと同じくネットやアプリをのぞきこみながら恋人探しにいそしんでいるのだ。
それもそのはず。1946~1964年に生まれたベビーブーム世代は、「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の時代に成人した好奇心旺盛な大人たちだ。今年で52~70歳となる彼らが、気軽に出会える便利なツールを若者たちに独占させておくわけがない。
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恋に積極的なこの世代に、独身の男女が溢れていることも「出会い系」人気の大きな理由だろう。ベビーブーム世代の独身率は過去に比べて上昇しており、国勢調査局によれば2003年、伴侶がいない55~64歳は27%だったが、2014年には31.8%に上がった(17%が離婚、4.9%が死別、9.9%は非婚)。この前後の年代でも、50~54歳の独身率は32.1%、65~74歳の独身率は32.3%と、全体の3分の1を占める。
若者たちに一足遅れる形で、ソーシャルメディアに慣れ親しんできたというのも一因だ。ピューの別の調査によれば、50~64歳のソーシャルメディアの利用率は2010年に33%だったのが、2015年には51%に高騰した(ちなみに日本の50代のソーシャルメディア利用率も45.9%と意外に高い。60代だと17.3%と激減するが)。デートはしたい。だが昔のようにバーで出会う歳でもない――そんな中高年にとって、じっくりこっそり恋人を探せる「出会い系」は、実は恋人そのものと同じくらい魅力的な代物なのかもしれない。
一方で、もちろん若者たちも負けてはいない。今回発表された調査では、18歳以上の男女のうち「出会い系」のサイトやアプリを使ったことのある人は15%と、2013年の11%より増加した。なかでも伸び率が顕著なのは18~24歳の若年層で、2年前の10%から今や27%にまで上昇している。この世代は、実に10人中3~4人が使ったことがある計算だ。
同じ調査で、こうした「出会い系」サイト・アプリ使用経験者の80%が「新しい人に会うのに良い」とポジティブな見方を示している。とはいえネガティブな面もあるようで、使用経験者の約半数の45%が出会い系は「他の出会い方より危険だ」と回答。また、31%が「常にデート相手の選択肢があるため、決まった相手に落ち着きにくくなる」と言い、16%が「出会い系を使っている人は必死だ」という見方に同意した。
デート相手は同時並行で何人いてもいいから
「他の出会い方より危険だ」と感じるのは女性が53%、男性が38%と男女に差があるのは、アメリカでは恋人未満の「デート相手」とでもカラダの関係に発展するケースが多いからだろう。そもそもこの国では「デート相手」と「恋人」というのは全く別のカテゴリーであり、単なるデート相手から正式な「彼氏彼女」に昇格するまでには"ベルリンの壁"が立ちはだかっている。
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デート相手は同時平行で何人いてもよく、反対に彼氏彼女というのはお互いにエクスクルーシブ(あなただけよ)な関係、つまり他の男女に手を出したらそれは「浮気」になるという、日本でいうところの「恋人」だ。この、恋人にしたいかどうかのお試し期間(=デート)のうちにセックスも試してみるというのはよく聞く話で、同時期に何人のデート相手と熱い夜を過ごそうとも「ルール違反」にならないため、男性よりも女性のほうが「危険」を感じても不思議ではない。
さらに厄介なのは、アメリカには「付き合ってください」と告白する文化がなく、デートしている段階では自分が正式な「恋人」なのかどうかが分かりづらいこと。「僕の彼女になってくれる?」とコクハクする真面目男子も中にはいるらしいが、一般的には、友人などに「この子は僕の彼女」と紹介されて初めて「彼女に認定された」と気付いたり、「お互いにエクスクルーシブな関係になろう」という話し合いを経るなどして「恋人」にレベルアップする。「出会い系」はデート相手探しのハードルを下げてはくれても、そこから恋人や生涯の伴侶になるまでの道のりは自分で切り開くしかないようだ。
「必死な」熟年シングルが求めるのは、生涯の伴侶かデート相手か。いずれにせよ、経験豊富で若者よりも「危険」を回避できるであろう中高年にとって、こうしたツールがホットな出会いの場になりつつあることは間違いない。「デートしたい」気持ちは何歳になっても同じはず。中高年の皆さん、アメリカ人に負けじとがんばりましょう(ただし、「独身者」限定で)。
小暮聡子(ニューヨーク支局)