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キャメロン最大の抵抗勢力は与党内のEU離脱派

ニューズウィーク日本版 2016年2月19日 14時26分

 現在開催中のEU首脳会議で、イギリスのEU残留に向けた改革案が協議されている。もしキャメロン英首相が英議会の承認を得て持参した改革案から少しでも不利になる譲歩をした場合には、国内の多くの与党議員がEU離脱(ブレグジット)推進派に回ることになりそうだ。

「(改革案は)とても控えめな要望だが、もしそれすらも達成されないとしたら、多くの議員が、離脱が妥当と判断するだろう」と、キャメロン率いる与党・保守党のグラハム・ブレイディ下院議員は話している。ブレイディは、イギリスのEU残留条件に関する改革草案をまとめた下院委員会の委員長も務めている。

【参考記事】イギリス離脱を止められるか、EU「譲歩」案の中身

 ブレイディによると、保守党の330人の下院議員のうち約100人が自他共に認めるEU離脱派で、ブレイディもその一人。さらに下院議員の過半数が「EU懐疑派」と考えられるという。キャメロンはEU残留派と見られているが、公式には離脱の選択肢も除外していない。

損をするのはイギリスで働くEU移民

 EU首脳会議の開催前、キャメロンはすでに英メディアから容赦なく叩かれている改革案がさらに骨抜きにならないよう、欧州各国と折衝しなければならなかった。改革案は最終的に、参加28カ国の首脳の合意を得なければならない。

 ハンガリー、スロバキア、ポーランド、チェコといった東欧諸国は、移民への税額控除や児童手当を4年間制限するなどのイギリスの提案に懸念を示している。自国の出稼ぎ移民がたくさんイギリスで働いているからだ。

 フランスのマニュエル・バルス首相は今週、イギリスをはじめとした各国に対して「EUの個々の国の加盟条件を好き勝手に選ぶことはできない」と釘を指している。

 仮に首脳会議で改革案が合意されても、実施内容は変更される可能性がある。いくつかの提案は、欧州議会で承認されなければならないからだ。欧州議会のマルティン・シュルツ議長は、提案によっては否決されるかもしれないと言う。「これは民主主義なので、どんな政府も欧州議会に対して結果を保証してくれとは要求できない」

 最終的には、数カ月以内にも行われる予定の国民投票で英国民が離脱を支持するか否かでイギリスとEUの運命が決まるのことになるが、今の段階で躓くようなら残留は極めて難しくなるとみられている。

【参考記事】イギリスで難民の子供900人が行方不明に

 キャメロンはEU首脳の説得と同時に、影響力のある国内の政治家たちが離脱派に傾かないよう目を配る必要もある。人気が高く影響力も強いロンドンのボリス・ジョンソン市長もその1人だ。今週、ジョンソンは首相官邸に呼ばれてキャメロンと会談したが、まだEU残留を支持するとは決めていないと報じられている。

「もしジョンソンがEU離脱を宣言したら、離脱派には大いに弾みがつく」と、ブレイディは言う。

 キャメロンの最も頼もしい味方は国外にいる。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は今週ドイツ議会で演説し、イギリスをEUに残留させることは「イギリスの国益だけでなく、ドイツそしてヨーロッパ全体の利益だ」と語っている。

ジョシュ・ロウ

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