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死者47万人、殺された医師705人......シリア内戦5年を数字で振り返る

ニューズウィーク日本版 2016年3月16日 17時0分

 5月15日で、シリアの内戦が始まってちょうど5年になった。中東全域に広がった「アラブの春」のひとつとして始まったバシャル・アサド政権に対する市民の反乱は、巨大なモンスターへと姿を変えた。政府軍と反政府勢力、ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)やヌスラ戦線といったテロ組織が攻撃し合う状況の中に、シリアの民衆は囚われている。

 このシリア危機を物語る数字をいくつか紹介する。

5年

 戦争が始まってからの年数。あるいは60カ月、1825日、4万3800時間と言ってもいい。

55.7年

 2014年のシリア国民の平均余命。戦争が始まって以来、20年以上も短くなった。NGOのシリア政策研究センターによると、2011年以前の平均余命は79.5歳だった。

【参考記事】人間を「駆除」するアサドの収容所、国連が告発

47万人

 シリア内戦の最新の推定死者数(シリア政策研究センターによる)。よく引用される「25万人」という数からは飛躍的な増加となる。25万人は国連による統計だが、国連は2014年初頭から死者数の集計をやめている。

190万人

 同じくシリア政策研究センターによる、シリア内戦による負傷者数。同センターの報告書によれば、シリアの全人口の10%以上が戦争により死傷していることになる。

【参考記事】難民はなぜ、子供を連れて危険な海を渡るのか

94人

 2011年以降に、確認された動機によりシリアで殺害されたジャーナリストの数(米NPOのジャーナリスト保護委員会〔CPJ〕による)。「確認された動機」とは、CPJが「以下についてかなり確かだと判断できるケースのこと。すなわち、ジャーナリストがその仕事に対する直接的な報復で殺害される、戦闘状態において砲火を浴びて殺害される、デモ隊の取材など危険な任務を遂行中に殺害される、といったケース」。これに加え、シリアでは同期間に11人のジャーナリストおよび1人のメディア関係者――取材のガイドを務めていた――が、CPJが動機を確認できないケースで殺されている。


シリアのアレッポ地域からバスでトルコ国境を目指す少女(2016年2月10日) Ammar Abdullah-REUTERS

161件

 開戦から昨年までの化学兵器による攻撃の数。シリア系アメリカ人医師会が、シリアの医師や医療関係者によるリポートや目撃談をまとめた。証拠が不十分な化学兵器使用はさらに133件ある。161件のうち、2012年は2件、2013年は35件、2014年は55件、2015年は69件と、年々増加してきた。使用された化学物質は塩素(64.6%)、サリン(1.9%)、マスタードガス(0.6%)、正体不明の毒ガス(32.9%)。

【参考記事】シリア内戦で高まるサリン使用の現実味

1492人、1万4581人

 上記161件の化学兵器使用による死者数と負傷者数。いずれもシリア系アメリカ人医師会が推定する最少人数。

705人

 2011年の開戦からこれまでに殺された医師と医療従事者の人数。人権のための医師団によると、その大半はシリア・アサド政権の軍隊に殺された。多くの医師が逃げるか、拘束されるか、殺されたが、東部の主要都市アレッポには今も約80人の医師が残っているという。

1万5525人

 シリアを出て保護者とはぐれるなど、一人ぼっちの子供の数(ユニセフ)。

5万+枚

「シーザー」という暗号名の元憲兵隊カメラマンがシリアから持ち出したとみられる写真の枚数。アサド政権による拷問や虐殺の模様を捉えたものとされる。ニューヨークのホロコースト博物館などで展示された。

30万6000人

 難民として生まれたシリア人の子供たちの数(ユニセフ)。

480万人

 2011年以降にシリアを出た難民の数。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、そのうち270万人がトルコに、100万人がレバノンに、63万9704人がヨルダン、24万6051人がイラク、11万8512人がエジプトにいる。

ルーシー・ウェストコット、スタブ・ジブ

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