22日にベルギー・ブリュッセルの空港と地下鉄を襲った連続テロは、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)か、そのシンパによるものであることは、ほぼ間違いないだろう。
ブリュッセルではそのわずか4日前、昨年11月のパリ同時多発テロの実行犯で逃走を続けていたサラ・アブデスラム容疑者が拘束されたばかり。今回のブリュッセルのテロは、リーダー格の仲間が捕まった際のプランBとして計画されていた可能性もある。
【参考記事】パリ同時多発テロを戦争へと誘導する未確認情報の不気味
パリのテロ攻撃は、ISISが「首都」と称するシリア北東部のラッカ、つまりISISの指導部が計画したものだった。今回のブリュッセルの殺戮が、ラッカで計画されたものかどうかはまだわからない。だが、そんなことは関係ない。
重要なのは、ブリュッセル・テロの直後、ベルギーのベテラン外交官が発したコメントだ。「今こそ、こうした犯罪を食い止め、市民の安全と社会のレジリエンス(回復力)を守るために力を合わせるべきだ」と、その外交官は言った。「攻撃にさらされているのは、我々の自由民主主義だ」
【参考記事】イスラムへの憎悪を煽るパリ週刊誌銃撃事件
アメリカ主導の有志連合はシリアで、断続的な空爆と断続的なクルド人部隊による地上戦を組み合わせてISISと戦ってきが、ISISはそれに耐え抜いている。おかげで各地の過激派グループは勢いづき、攻撃の準備をひそかに進めている。
アメリカの大統領が「弱体化させ最終的に破壊する」と宣言したISISの存続は、傷つき、不満を抱き、狂信化したスンニ派世界を大いに勇気づけている。イスラム教徒全体から見ればごく一部だが、それでもテロリスト予備軍は数千人に及ぶ。
CIA(米中央情報局)のジョン・ブレナン長官はこれまでも、ISISはヨーロッパだけでなく北米でもテロ攻撃を行おうとしていると警告してきた。ラッカの「偽のカリフ(預言者の後継者)」ら一派にその準備時間を与えるのは、選択肢としてあり得ない。
シリアの和平協議を待ってはいられない
その提案は、ここ1年ほど検討対象に挙げられてきた。アメリカ主導の有志連合による地上部隊を組織し、シリア東部に進軍してISISメンバーを殺害することだ。
戦争及び戦後の安定化計画に同意するあらゆるシリア反体制派を糾合すれば、ISISの壊滅後、同国東部に行政機構を築くこともできるだろう。シリアでISISを壊滅させれば、難民危機は緩和され、隣国イラクで活動するISISの消滅も早まるだろう。そして、ISISのような負け犬と手を組めば破滅への片道切符を手にするだけだと、信じやすいテロ志願者たちも理解するはずだ。
【参考記事】ISIS「脱走兵増加」で新たなテロが幕を開ける?
時間の猶予はない。シリア和平協議がうまく行ってシリアの独裁者バシャル・アサド大統領さえ退陣すれば、新生シリア政府はISISから同国東部を取り戻すことができる、という楽観派の考え方も理論的には正しいかもしれない。だがロシアとイランはアサド体制を支持し、軍事支援も行ってきており、アサド退陣はほとんどあり得ないシナリオと言わざるをえない。
ISISがアメリカ本土を攻撃してくるのを待ち、アメリカ単独で報復するのもひとつの手だろう。だが、なぜ待つのか。なぜ、アメリカ単独でなければならないのか。
本格的な有志連合を組織するための外交努力を惜しんではならない。これまで何カ月も議論されてきたが、一刻も早く組織し、血に飢えた犯罪者たちを殺害すべきだ。
ブリュッセルから届いたのは、「敵は時なり」というメッセージなのだ。
Frederic C. Hof is a resident senior fellow with the Atlantic Council's Rafik Hariri Center for the Middle East.
This article first appeared on the Atlantic Council site.
フレデリック・ホフ(大西洋協議会中東センター上級研究員)
ブリュッセルではそのわずか4日前、昨年11月のパリ同時多発テロの実行犯で逃走を続けていたサラ・アブデスラム容疑者が拘束されたばかり。今回のブリュッセルのテロは、リーダー格の仲間が捕まった際のプランBとして計画されていた可能性もある。
【参考記事】パリ同時多発テロを戦争へと誘導する未確認情報の不気味
パリのテロ攻撃は、ISISが「首都」と称するシリア北東部のラッカ、つまりISISの指導部が計画したものだった。今回のブリュッセルの殺戮が、ラッカで計画されたものかどうかはまだわからない。だが、そんなことは関係ない。
重要なのは、ブリュッセル・テロの直後、ベルギーのベテラン外交官が発したコメントだ。「今こそ、こうした犯罪を食い止め、市民の安全と社会のレジリエンス(回復力)を守るために力を合わせるべきだ」と、その外交官は言った。「攻撃にさらされているのは、我々の自由民主主義だ」
【参考記事】イスラムへの憎悪を煽るパリ週刊誌銃撃事件
アメリカ主導の有志連合はシリアで、断続的な空爆と断続的なクルド人部隊による地上戦を組み合わせてISISと戦ってきが、ISISはそれに耐え抜いている。おかげで各地の過激派グループは勢いづき、攻撃の準備をひそかに進めている。
アメリカの大統領が「弱体化させ最終的に破壊する」と宣言したISISの存続は、傷つき、不満を抱き、狂信化したスンニ派世界を大いに勇気づけている。イスラム教徒全体から見ればごく一部だが、それでもテロリスト予備軍は数千人に及ぶ。
CIA(米中央情報局)のジョン・ブレナン長官はこれまでも、ISISはヨーロッパだけでなく北米でもテロ攻撃を行おうとしていると警告してきた。ラッカの「偽のカリフ(預言者の後継者)」ら一派にその準備時間を与えるのは、選択肢としてあり得ない。
シリアの和平協議を待ってはいられない
その提案は、ここ1年ほど検討対象に挙げられてきた。アメリカ主導の有志連合による地上部隊を組織し、シリア東部に進軍してISISメンバーを殺害することだ。
戦争及び戦後の安定化計画に同意するあらゆるシリア反体制派を糾合すれば、ISISの壊滅後、同国東部に行政機構を築くこともできるだろう。シリアでISISを壊滅させれば、難民危機は緩和され、隣国イラクで活動するISISの消滅も早まるだろう。そして、ISISのような負け犬と手を組めば破滅への片道切符を手にするだけだと、信じやすいテロ志願者たちも理解するはずだ。
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時間の猶予はない。シリア和平協議がうまく行ってシリアの独裁者バシャル・アサド大統領さえ退陣すれば、新生シリア政府はISISから同国東部を取り戻すことができる、という楽観派の考え方も理論的には正しいかもしれない。だがロシアとイランはアサド体制を支持し、軍事支援も行ってきており、アサド退陣はほとんどあり得ないシナリオと言わざるをえない。
ISISがアメリカ本土を攻撃してくるのを待ち、アメリカ単独で報復するのもひとつの手だろう。だが、なぜ待つのか。なぜ、アメリカ単独でなければならないのか。
本格的な有志連合を組織するための外交努力を惜しんではならない。これまで何カ月も議論されてきたが、一刻も早く組織し、血に飢えた犯罪者たちを殺害すべきだ。
ブリュッセルから届いたのは、「敵は時なり」というメッセージなのだ。
Frederic C. Hof is a resident senior fellow with the Atlantic Council's Rafik Hariri Center for the Middle East.
This article first appeared on the Atlantic Council site.
フレデリック・ホフ(大西洋協議会中東センター上級研究員)