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テロは欧州からアメリカに飛び火する

ニューズウィーク日本版 2016年3月24日 19時30分

 ブリュッセルで起きた同時自爆テロを見てテロ対策のプロが真っ先に思うのは「次はどこだ?」、そして「どうして止める?」だろう。

 3月22日の朝、眠りから覚めたアメリカを待ち受けていたのは、ヨーロッパがまたテロ攻撃に襲われたというニュースだった。空港と地下鉄の2カ所で相次いだ自爆テロで、30人以上の死者が出た。襲撃のほんの数日前には、パリ同時多発テロの首謀格のアラ・アブデスラムが、ブリュッセルで逮捕されたばかりだ。

 ここで最も懸念されるのは、ヨーロッパで指揮された連続テロの標的は、いつアメリカに向くかわからないということだ。前例もある。2001年にニューヨークとワシントンを襲った9.11同時多発テロの実行犯たちの拠点はドイツのハンブルグだった。

【参考記事】米軍がソチ五輪のテロ対策に軍艦派遣

 攻撃の機会を狙っているグループがもしヨーロッパにいるのなら、彼らにとって最大の障害はアメリカ国内に潜入することだろう。9.11以降、アメリカのテロ対策は水際で過激派の入国を阻止することに注力されてきた。それは、「9.11委員会報告書」が最重要とみなした調査項目の1つでもあった。

ヨーロッパの過ちとは

 9.11以降、アメリカのテロ対策はアメリカに渡航しようとする人々のなかから過激派を見つけ出すことに重点を置いた。合理的な戦略だ。彼らは少人数で移動し、アメリカに入国するためのあらゆる抜け道を調べ尽くしている。1つの交通機関を止めたとしても大した効果はない。彼らは別の道を行くだけだ。すべての旅行者に迷惑をかけるより、ピンポイントで発見し阻止するのが最良の策だろう。

 より大きな課題は、国境を越えたイスラム過激派のネットワークを域内にはびこらせてしまったヨーロッパの過ちを繰り返さないことだ。失敗すれば、その触手はアメリカ中を覆うことになる。

【参考記事】テロリストに完敗したベルギー治安当局

 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)に触発されたイスラム過激派の脅威は世界共通だが、見た目まで同じというわけではない。ISISの刺激を受けて中東から遠く離れた国で勝手に過激思想を持つようになる「ホームグロウン(国内育ち)」テロリストやヨーロッパと中東を行ったり来たりする外国人戦闘員の増加により、西欧にもパリやブリュッセルで見たようなテロを起こせる組織が根付いてしまっている。

 外国人戦闘員の供給を断ち、潜在的脅威が社会に紛れ込む前に見つけ出すことも必要だ。責任ある移民政策や国境管理もだろう。

 何より、国土安全保障省がいい仕事をすることだ。ブリュッセルのテロから、我々は多くの教訓を学べる。きちんと関心を払っていれば、だが。

This article first appeared on The Daily Signal.
James Jay Carafano, a leading expert in national security and foreign policy challenges, is the Heritage Foundation's vice president for foreign and defense policy studies.

ジェームズ・カラファノ(ヘリテージ財団外交研究所・所長)

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