ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。
※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】マイケル・ジョーダンは私を抱きしめて言った
[インタビューの初出:1997年10月1日号]
NBA(全米プロバスケットボール協会)のシカゴ・ブルズで3連覇を成し遂げた後、突如引退して大リーグに挑戦。1年半後に古巣に戻ると、さらに優勝2回――マイケル・ジョーダンは、まさに「神」だった。
97年、アパレルなどを扱う「ジョーダン」ブランドをナイキと共同で設立すると発表したジョーダンに、本誌アリソン・サミュエルズが話を聞いた(記者の回顧録はこちら)。葉巻をくゆらせながら独占インタビューに応じたジョーダンは、このシーズンもチームを優勝に導き、シーズン終了後に2度目の引退を発表した。
◇ ◇ ◇
■ジョーダン・ブランドについて
「エアジョーダン」が成功していたから、これを始めるのは自然の成り行きだった。引退後もバスケットやファンとかかわり続けられるようなことに取り組みたかった。
でも監督や解説者など、ありきたりな仕事は嫌だった。コートのそばにいなくても自分の足跡を残せることをしたかった。
■製品とのかかわりについて
ナイキのデザインチームは、よく私の家に来る。しばらく議論してから、私の車を見たり、クロゼットをのぞいて、私という人間をよく知ろうとする。その結果を製品に反映させる。やりがいはあるが、てんてこ舞いの忙しさだ。
■「エアジョーダン」の価格(150ドル)が高いという声について
気になった。子供たちには「どうしてそんなに高いの?」と聞かれるし、親たちからもたくさん電話をもらった。今では、いろんな価格帯からシューズを選んでもらえるはずだ。
■引退について
その話はシーズンが始まったら考える。まだ引退するつもりはない。でも、去るべきときだと思ったら、きれいに去る。大丈夫だ。
■引退後の生活について
(野球に転向して)NBAを1年半離れたとき、自分の時間とはどういうものかわかった。バスケット以外の時間の使い方を知った。
■今シーズンのブルズについて
手ごわい相手は思い浮かばない。まだ何度か優勝する力はあるし、そうしてみせる。
■ニュージャージー・ネッツの選手ジェイソン・ウィリアムズが、ジョーダンの「ナイスガイ」イメージはまやかしであり、本当は「敵意むきだし」でプレーすると語ったことについて
(ばかばかしいと言いたげに笑って)確かに負けず嫌いだが、「敵意むきだし」ということは絶対にない。本当に怒るようなことがあれば「敵意」ももつだろうが、今までそうなったためしがない。
きっと南部でのんびり育ったからだと思う。祖父母によく言われたものだ。「行動する前に考えろ。自制心を忘れるな」と。いつも肝に銘じている。
■思春期の不安について
昔、料理の授業を取ったことがあった。女の子にもてなかったこともあって、一生独身かもしれないと思ったから。子供って、ばかなことで悩むだろ? 私はひょろっとしてて、のっぽで、えらく目立った。子供時代は、それも悩みのタネになる。もう今は料理はしないけど(笑)。
■マスコミとの関係、約1カ月前(97年8月31日)のダイアナ元英皇太子妃の死について
マスコミにはしつこく追いかけられているが、ひどいというほどじゃない。一つには、私がそれほど人を遠ざけなくなったからだろう。街をぶらついたりもするし、なるべく人と一緒にいるようにしている。ダイアナ妃もそうしたんだろうが、彼女は王室の人間で、私はそうじゃない。
■公の顔と素顔の違いについて
大して違わない。でも、自分の胸に納めておかなくてはならないから、君ら(メディア)には話さないこともある。今ほど注目を浴びなくなれば、もう少し素顔を出せるようになるだろう。
■音楽の趣味について
ラップを悪いとは思わないが、自分では聴かない。リラックスして考えごとができるような、穏やかで落ち着いた音楽、たとえばエリカ・バドゥやジャズシンガーのラシェル・フェレルが好きだ。
■NBAの若手選手の態度に、ベテランから不満の声が上がっていることについて
昨シーズンにさんざん言われたので、いくらかよくなると思う。願わくば今シーズンは、みんな今日のバスケットの繁栄をもたらした先輩に注意を払ってほしい。
■96年のデビューからすぐに活躍しはじめたが、暴行などの問題も起こしてきた新人のアレン・アイバーソンについて
アレンとは育った環境が違うので、判断はむずかしい。判断するつもりもない。
■2200万ドルの年俸を要求したケビン・ガーネットのように、若手選手の待遇要求がエスカレートしていることについて
金の話なら、私は常に選手側に立つ。チームは彼の将来性に金を出すのだろう? 給料に見合う働きをすればそれでいいし、そうでなくても私は彼を支持する。
■ゴルファーのタイガー・ウッズとの関係について
タイガーが電話で相談をもちかけてくるので、アドバイスしている。(97年4月に史上最年少でマスターズ・トーナメント優勝を果たした)タイガーにとって、今は嵐のような日々だ。面倒なことも多いだろう。私にはよくわかる。
彼には「嘘だと思うだろうが、そのうち慣れるよ」と言っている。第二のマイケル・ジョーダンになるな、タイガー・ウッズになれ、ともね。本当にすごい奴だ。尊敬してるよ。
※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】マイケル・ジョーダンは私を抱きしめて言った
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[2006.2. 1号掲載]