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【再録】理数系女子の先駆者マリッサ・メイヤー

ニューズウィーク日本版 2016年3月31日 11時29分


ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。


[インタビューの初出:2010年12月29日/2011年1月5日号]

――テクノロジー業界に女性が少ないのはなぜか。

 これは私が変えたいと強く思っていることの1つ。私はテクノロジーが好きだし、そこに男女の違いはないと思っている。この領域ではまだまだ多くのことができると思う。例えば中学校や高校で、女子は理数系科目へのやる気をそがれているという調査結果を見たことがある。

 私自身はとても運が良かった。いつも数学と科学が得意だったけれど、それが特別なことだとか、ましてや好ましくないと思われる可能性があるなんて考えもしなかった。だからこういうネガティブな先入観を取り払いたいと強く思っている。女の子は女の子らしいルックスで、女の子が好きそうなものを好きであってもいいけれど、同時に理数系科目が得意だっていいのだということを示したい。

――シリコンバレーにおける女性技術者の割合はどのくらいか。

 技術部門では15~17%あたりで推移している。グーグルはもう少し多くて約20%。

――グーグルは業界全般よりも技術職を含め、女性の雇用に力を入れているのか。

 私はグーグルに初めて雇われた女性技術者なの。採用面接のとき、(共同創設者の)ラリー(・ページ)とセルゲイ(・ブリン)はこう言った。「今うちには7人の技術者がいるが全員男だ。僕らはこの会社をつくるときどんな会社にしたいかよく考えて、たくさん本も読んだ。男女のバランスが取れていたほうが、組織はうまく機能する。だから社内に優秀な女性、特に技術系の女性のグループがいることが重要なんだ」

【参考記事】ヤフー再建を任された天才女子の実力
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 これには時間をかけて取り組む必要があった。まだ会社ができたばかりの頃、技術職に男性が16人立て続けに採用されたことがあったの。するとラリーは、「20人に達したら、同じ数だけ女性技術者を雇うまで僕は採用通知に一切サインしないぞ」と言った。

 グーグルが女性技術者の採用に本腰を入れ始めたのはそれから。そのためのプログラムを作って、本気で努力を始めた。グーグルで女性従業員の割合が同業他社よりも高いのは創業者の2人が最初からとても力を入れてきたからだ。

 グーグルでは女性技術者の雇用に加えて、女性が働きやすい職場環境づくりにも力を入れている。例えば採用面接のとき、面接官に女性技術者を含めるようにしている。これは技術者同士の関係という意味で大きな意味があると思う。男性技術者には男としかコミュニケーションを取れない人が大勢いるから。

【参考記事】マリッサ・メイヤーは子育てなんかしない

――あなたが生まれ育ったのはウィスコンシン州だが、昔からコンピューター関係の仕事に就きたいと思っていたのか。

 最初は医者になりたかった。でもスタンフォード大学の1年生のとき、化学や生物学が得意だけれど、あまり達成感が感じられないことに気付いた。

 ところが必修科目の1つだったコンピューターサイエンスの授業では、毎日が新しい問題の連続。それをどう解決するか、新しいことをどう理論付けするか、今まで取り組んだことのない問題を解決するにはどんなアルゴリズムを作るか、毎日考えることができた。知的好奇心を大いに満たしてくれる分野だと思った。



――では高校生のときは頭でっかちなコンピューターおたくではなかったのか。

 スタンフォードに入学したその週に、初めて自分のコンピューターを買った。電源の入れ方からマウスの使い方まで教えてもらわなくてはいけなかった。多くの人は最初からマウスをうまく使えるのにね。1年生の後期に初めてコンピューターサイエンスの授業を取り、シンボリックシステムズというとても風変わりな専門課程に出合った。哲学と認知心理学、言語学、それにコンピューターサイエンスを混ぜ合わせたような科目よ。

――女子学生はあなた1人だけだったのか。

 コンピューターサイエンスの上級クラスではそうだったと思う。私は学内紙スタンフォード・デイリーを愛読していたのだけれど、ある日私のお気に入りのコラムニストが「キャンパス名物」の人々について書いていた。いつも広場にいて誰かが近くを通ると奇声を発する人など、誰もが知っているけれど名前は知らない人たちのリスト。

 くすくす笑いながらそのリストを読んでいたら、「コンピューターサイエンスの上級クラスにいるブロンドの女性」とある。最初は誰だろうと思ったけど、「やだ、私のことじゃない!」と気が付いた。自分がちょっと変わっていると気が付いたのはそのときだと思う。

――この業界で、男性なら多分直面しないような問題にぶつかったと感じたことはあるか。

 全然ない。とても大きなサポートを得ていると思う。スタンフォードで私の指導教員だったエリック・ロバーツ教授(コンピューターサイエンス)は本当によく気に掛けてくれて、こう言ってくれた。「君は本当にこの分野で優れている。きっと大成功するだろう」って。


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[2010.12.29号掲載]
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

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