米ミシシッピ州のフィル・ブライアント知事は4月5日、州内の事業者がLGBT(性的少数者)へのサービス提供を拒否できるようにする法案に署名し、法律として成立させたことをツイートした。
ブライアントによれば下院法案1523号は、「民間団体や組織、個人の真摯な宗教的信念、道徳的信条を、州政府機関による差別から守るため」のもの。
だがLGBTの権利擁護団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンによれば、この新法により個人・団体は、宗教を理由にLGBTなどへの差別を正当化できるようになる。さらには、里親がLGBTの子供を「転向セラピー」に送り込むことも可能だ。転向セラピーとは、ゲイやレズビアンを異性愛者に転向させようとするための心理療法で、州によっては違法とされている。
【参考記事】性的指向を矯正する転向療法の終焉?
下院法案1523号は、「結婚は男性と女性の結合(ユニオン)であり」、性交渉は「そのような結婚のために適切になされるもの」と信じる人々を守るための法案なので、ひとり親への差別すらも合法にしてしまうと、米自由人権協会(ACLU)は批判している。
またACLUによれば、自らの宗教的信条に従わない従業員を企業が解雇すること、トランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)の生徒が自分の性的アイデンティティーに合う服装をするのを学校が認めないこと、宗教的信条を理由に住宅の賃貸・売買を拒否することも合法になる。
In signing #HB1523 , @PhilBryantMS has chosen Mississippi's dark past over a bright future. #ShameOnPhil pic.twitter.com/q6MKtZIQHv— Montel Williams (@Montel_Williams) 2016年4月5日
人気のテレビ司会者モンテル・ウィリアムズは「ミシシッピの明るい未来より暗い過去を選んだ」と批判
ツイートした声明で、ブライアントはこうも主張する。法案は「憲法や州法で保障された州民のいかなる権利も制限するものではない」。その目的は「州民の生活に州政府が干渉するのを防ぐ」ことだと。
ACLUのミシシッピ支部は同じく5日、声明を発表した。
「ビジネスや結婚、住居などで不可欠なサービスやケアを"人格"を理由に拒否されるおそれがある。多くのミシシッピ州民にとって、またミシシッピ州にとって、悲しい日となった」
「法案の主張する『政府の差別』から人々を守るどころか、州民への攻撃にほかならず、わが州の恥さらしだ」
Gov. Bryant had several good reasons to veto #HB1523 and nothing to lose. Instead, he legalized discrimination in Mississippi.— Sam R. Hall (@samrhall) 2016年4月5日
ミシシッピ州クラリオン・レッジャー紙のサム・R・ホールは「ブライアント知事は拒否権を発動しても何も失うものはなかったのに、差別を合法化した」とツイート
同性愛者の名誉を守る同盟(GLAAD)の会長兼CEO、サラ・ケイト・エリスは声明を発表し、「時代に逆行する反LGBT法」に署名したブライアントは「ミシシッピ州の市民や経済を危険にさらし、州の評判を傷つけている」と批判した。
前例のノースカロライナ州では早くも経済的損失
実際、ミシシッピ州の法案成立の2週間前にはノースカロライナ州で同様の法案(下院法案2号)が成立しているが、これに抗議して、ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事、首都ワシントンのミュリエル・バウザー市長、そしてジョージア州アトランタのカシム・リード市長が、自治体予算でのノースカロライナ出張を禁止した。
【参考記事】同性愛への寛容度でわかる日本の世代間分裂
ACLUは先週、ノースカロライナ州の下院法案2号に対して訴訟を起こした。4月5日には決済サービス企業のペイパルが、同州最大都市のシャーロットで計画していた事業所の設立を中止すると発表した。400人の雇用を生むはずだった計画である。
ミシシッピ州議会で下院法案1523号が審議中だった先週には、IBMやリーバイ・ストラウス、AT&T、トヨタなど多くの企業が反対を表明していた。LGBT当事者の声も、企業の声も、ブライアント知事には届かなかったのだろうか。
ルーシー・ウェストコット
ブライアントによれば下院法案1523号は、「民間団体や組織、個人の真摯な宗教的信念、道徳的信条を、州政府機関による差別から守るため」のもの。
だがLGBTの権利擁護団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンによれば、この新法により個人・団体は、宗教を理由にLGBTなどへの差別を正当化できるようになる。さらには、里親がLGBTの子供を「転向セラピー」に送り込むことも可能だ。転向セラピーとは、ゲイやレズビアンを異性愛者に転向させようとするための心理療法で、州によっては違法とされている。
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下院法案1523号は、「結婚は男性と女性の結合(ユニオン)であり」、性交渉は「そのような結婚のために適切になされるもの」と信じる人々を守るための法案なので、ひとり親への差別すらも合法にしてしまうと、米自由人権協会(ACLU)は批判している。
またACLUによれば、自らの宗教的信条に従わない従業員を企業が解雇すること、トランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)の生徒が自分の性的アイデンティティーに合う服装をするのを学校が認めないこと、宗教的信条を理由に住宅の賃貸・売買を拒否することも合法になる。
In signing #HB1523 , @PhilBryantMS has chosen Mississippi's dark past over a bright future. #ShameOnPhil pic.twitter.com/q6MKtZIQHv— Montel Williams (@Montel_Williams) 2016年4月5日
人気のテレビ司会者モンテル・ウィリアムズは「ミシシッピの明るい未来より暗い過去を選んだ」と批判
ツイートした声明で、ブライアントはこうも主張する。法案は「憲法や州法で保障された州民のいかなる権利も制限するものではない」。その目的は「州民の生活に州政府が干渉するのを防ぐ」ことだと。
ACLUのミシシッピ支部は同じく5日、声明を発表した。
「ビジネスや結婚、住居などで不可欠なサービスやケアを"人格"を理由に拒否されるおそれがある。多くのミシシッピ州民にとって、またミシシッピ州にとって、悲しい日となった」
「法案の主張する『政府の差別』から人々を守るどころか、州民への攻撃にほかならず、わが州の恥さらしだ」
Gov. Bryant had several good reasons to veto #HB1523 and nothing to lose. Instead, he legalized discrimination in Mississippi.— Sam R. Hall (@samrhall) 2016年4月5日
ミシシッピ州クラリオン・レッジャー紙のサム・R・ホールは「ブライアント知事は拒否権を発動しても何も失うものはなかったのに、差別を合法化した」とツイート
同性愛者の名誉を守る同盟(GLAAD)の会長兼CEO、サラ・ケイト・エリスは声明を発表し、「時代に逆行する反LGBT法」に署名したブライアントは「ミシシッピ州の市民や経済を危険にさらし、州の評判を傷つけている」と批判した。
前例のノースカロライナ州では早くも経済的損失
実際、ミシシッピ州の法案成立の2週間前にはノースカロライナ州で同様の法案(下院法案2号)が成立しているが、これに抗議して、ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事、首都ワシントンのミュリエル・バウザー市長、そしてジョージア州アトランタのカシム・リード市長が、自治体予算でのノースカロライナ出張を禁止した。
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ACLUは先週、ノースカロライナ州の下院法案2号に対して訴訟を起こした。4月5日には決済サービス企業のペイパルが、同州最大都市のシャーロットで計画していた事業所の設立を中止すると発表した。400人の雇用を生むはずだった計画である。
ミシシッピ州議会で下院法案1523号が審議中だった先週には、IBMやリーバイ・ストラウス、AT&T、トヨタなど多くの企業が反対を表明していた。LGBT当事者の声も、企業の声も、ブライアント知事には届かなかったのだろうか。
ルーシー・ウェストコット