ひと昔前だと、ティーンエージャーの起業家が話題になるのは、アメリカなど外国が主だった。ところが最近は、まだまだ起業家マインドが足りないとされる日本でも、10代の起業家が増えている。もちろん絶対数として多いわけではないが、「女子高生起業家」として取り上げられるような女性もおり、目立つ存在だ。
彼ら若き起業家たちの経験は、多くの面で参考になるところがあるだろう。だが、もしも彼らが、次に続こうという少年少女ではなく、30代や40代、あるいはそれ以上の年齢の社会人に向けて「経営論」を振りかざしたらどうだろう。どれだけの人が素直に聞く耳を持つだろうか。
何も"振りかざしている"わけではないだろうが、この人物の言葉は傾聴に値すると言えそうだ。正田圭、現在29歳。15歳の中学校在学時に株式投資を始め、まもなくインターネット事業で起業。10代で1億円の資産を手に入れるが、カジノにはまったり、詐欺師に騙されたりして一度は一文無しに。その後、未公開企業同士のM&Aサービスなどを展開し、20代で10億円の資産をつくったという人物である。
【参考記事】試作すらせずに、新商品の売れ行きを事前リサーチするには?
【参考記事】世界一「チャレンジしない」日本の20代
ただ10代で起業したというだけではない。「経験豊富」というひと言では片付けられないほど強烈な体験を積み重ねてきており、「失敗から学べることはない」「起業は将来における自分の選択肢を狭める」「人脈はあまり重視しない」など、そこから導き出された痛いほどリアルな経営論はユニークで説得力がある。
このたび、正田氏がその経験と経営論をまとめた新刊『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス)が刊行されたのを機に、同書から経営論を記したコラムの一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。
以下、まずは、正田氏が名古屋の高校在学中に友人とインターネット関連の会社を立ち上げ、卒業後に東京進出を果たした時期の話から。当時、社会人としてのルールを教えてくれる人もいないまま、はったりを利かせて営業をすることもあったという正田氏らは、失敗を積み重ねていた――。
『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』
正田 圭 著
CCCメディアハウス
◇ ◇ ◇
失敗を繰り返さないためにすべき3つのこと
この時期、僕は数々の失敗を繰り返していました。もちろん、この時期だけではなく、これからだって失敗は続くでしょう。僕は自分が今後どれほど成功するかはわかりませんが、まだまだ数々の失敗を繰り返すだろうということだけはわかっています。ここでは、「失敗」について考察してみます。
経営の世界は、試行錯誤によって正解を得られるようなところだと思っている人が多いと思いますが、本当のところは違います。トライ&エラーの精神は、起業の世界では実はあまり評価されません。
例えば、9年という歳月をかけて、3年ごとに3回起業し、3回とも失敗してしまった人がいたとします。本人はトライ&エラーのつもりだったのかもしれませんが、9年もの時間をかけて3度も失敗するような挑戦の仕方は絶対に改めなくてはいけません。時間は有限ですし、起業の回数を重ねるごとに、その起業家に資金を提供する人は減っていきます。
【参考記事】「独立から起業へ」飛躍するために必要なこと
さらに、これは持論ではありますが、失敗から学べることはありません。唯一あるとすれば、3回失敗した後にやっと成功した時点でどうにか4回分の起業の経験値を得られるのであって、失敗を繰り返すばかりでは学びという点で得るものはないのです。
とはいえ、失敗をゼロにすることは不可能です。では、失敗を繰り返さないためにはどういうことを心がけていけばいいのでしょうか。次に3つのことを提案してみたいと思います。
(1)分野を決めて知識増強を行う
知識が不足していると思う分野を選び、重点的に知識を増やすようにしてください。会計の知識、法務的な知識、M&Aの事例の検証、IT企業のビジネスモデルの研究といったテーマを設定し、ある程度の時間とお金を投資して、じっくりと知識を深めていきましょう。間違っても自分の得意分野の知識習得に励まないことです。可能であれば、その分野の専門家に指導を頼んだり、すべての著作を読んだりして、集中的に知識を吸収するといいと思います。
自分が得意なことを学ぶのは快適で、心理学的にはコンフォートゾーンと言うようですが、そこではなく苦手なラーニングゾーンに意識を置くべきです。苦手なものがパッと思い浮かばない場合は、自分の業界の近隣業界の研究をするといいでしょう。特に、取引先の業界のコスト構造に習熟すれば、値下げ交渉も容易になりますし、M&Aなどの垂直統合のチャンスに気づくかもしれません。
(2)客観的な立場で自分を見直す
ビジネス上のカウンターパートの立場で、自分のスタイルを客観的に見直してみることも有益です。取引先の人間になったつもりで、自分のビジネススタイルを振り返ってみてください。つまり、将棋で言うところの「感想戦」をしてみるのです。
よりレベルの高い会社経営をするのであれば、こういうことを繰り返し行わなくてはいけません。
僕は昔、営業上手な経営者の先輩に頼み込んで、打ち合わせを録音させてもらい、それを書き起こして、「わかりやすい説明の仕方」や「相手への切り返しの仕方」などを研究していたことがあります。営業成績を伸ばしたいのであれば、自分の営業現場を書き起こしてそれを他人にチェックしてもらうことで、自分では気づいていない失敗の原因が浮かび上がってくるかもしれません。
(3)長く続ける
マラソンランナーは走り続けることで強靭な心臓を維持しているそうです。また、音楽家の大脳皮質が一般の人よりも大きいのは、毎日のように音楽に触れているからだと言います。これと同じで、経営者も常にビジネスのことを考えているからこそ、「ビジネス脳」を発達させていくことができるのです。そのためには、経営者としてのトレーニングをいつまでも続けていくことが大切です。そして、それを長く続ける。これが失敗を繰り返さないための最強の対応策だと思います。
※シリーズ第2回:20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る
『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』
正田 圭 著
CCCメディアハウス
彼ら若き起業家たちの経験は、多くの面で参考になるところがあるだろう。だが、もしも彼らが、次に続こうという少年少女ではなく、30代や40代、あるいはそれ以上の年齢の社会人に向けて「経営論」を振りかざしたらどうだろう。どれだけの人が素直に聞く耳を持つだろうか。
何も"振りかざしている"わけではないだろうが、この人物の言葉は傾聴に値すると言えそうだ。正田圭、現在29歳。15歳の中学校在学時に株式投資を始め、まもなくインターネット事業で起業。10代で1億円の資産を手に入れるが、カジノにはまったり、詐欺師に騙されたりして一度は一文無しに。その後、未公開企業同士のM&Aサービスなどを展開し、20代で10億円の資産をつくったという人物である。
【参考記事】試作すらせずに、新商品の売れ行きを事前リサーチするには?
【参考記事】世界一「チャレンジしない」日本の20代
ただ10代で起業したというだけではない。「経験豊富」というひと言では片付けられないほど強烈な体験を積み重ねてきており、「失敗から学べることはない」「起業は将来における自分の選択肢を狭める」「人脈はあまり重視しない」など、そこから導き出された痛いほどリアルな経営論はユニークで説得力がある。
このたび、正田氏がその経験と経営論をまとめた新刊『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス)が刊行されたのを機に、同書から経営論を記したコラムの一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。
以下、まずは、正田氏が名古屋の高校在学中に友人とインターネット関連の会社を立ち上げ、卒業後に東京進出を果たした時期の話から。当時、社会人としてのルールを教えてくれる人もいないまま、はったりを利かせて営業をすることもあったという正田氏らは、失敗を積み重ねていた――。
『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』
正田 圭 著
CCCメディアハウス
◇ ◇ ◇
失敗を繰り返さないためにすべき3つのこと
この時期、僕は数々の失敗を繰り返していました。もちろん、この時期だけではなく、これからだって失敗は続くでしょう。僕は自分が今後どれほど成功するかはわかりませんが、まだまだ数々の失敗を繰り返すだろうということだけはわかっています。ここでは、「失敗」について考察してみます。
経営の世界は、試行錯誤によって正解を得られるようなところだと思っている人が多いと思いますが、本当のところは違います。トライ&エラーの精神は、起業の世界では実はあまり評価されません。
例えば、9年という歳月をかけて、3年ごとに3回起業し、3回とも失敗してしまった人がいたとします。本人はトライ&エラーのつもりだったのかもしれませんが、9年もの時間をかけて3度も失敗するような挑戦の仕方は絶対に改めなくてはいけません。時間は有限ですし、起業の回数を重ねるごとに、その起業家に資金を提供する人は減っていきます。
【参考記事】「独立から起業へ」飛躍するために必要なこと
さらに、これは持論ではありますが、失敗から学べることはありません。唯一あるとすれば、3回失敗した後にやっと成功した時点でどうにか4回分の起業の経験値を得られるのであって、失敗を繰り返すばかりでは学びという点で得るものはないのです。
とはいえ、失敗をゼロにすることは不可能です。では、失敗を繰り返さないためにはどういうことを心がけていけばいいのでしょうか。次に3つのことを提案してみたいと思います。
(1)分野を決めて知識増強を行う
知識が不足していると思う分野を選び、重点的に知識を増やすようにしてください。会計の知識、法務的な知識、M&Aの事例の検証、IT企業のビジネスモデルの研究といったテーマを設定し、ある程度の時間とお金を投資して、じっくりと知識を深めていきましょう。間違っても自分の得意分野の知識習得に励まないことです。可能であれば、その分野の専門家に指導を頼んだり、すべての著作を読んだりして、集中的に知識を吸収するといいと思います。
自分が得意なことを学ぶのは快適で、心理学的にはコンフォートゾーンと言うようですが、そこではなく苦手なラーニングゾーンに意識を置くべきです。苦手なものがパッと思い浮かばない場合は、自分の業界の近隣業界の研究をするといいでしょう。特に、取引先の業界のコスト構造に習熟すれば、値下げ交渉も容易になりますし、M&Aなどの垂直統合のチャンスに気づくかもしれません。
(2)客観的な立場で自分を見直す
ビジネス上のカウンターパートの立場で、自分のスタイルを客観的に見直してみることも有益です。取引先の人間になったつもりで、自分のビジネススタイルを振り返ってみてください。つまり、将棋で言うところの「感想戦」をしてみるのです。
よりレベルの高い会社経営をするのであれば、こういうことを繰り返し行わなくてはいけません。
僕は昔、営業上手な経営者の先輩に頼み込んで、打ち合わせを録音させてもらい、それを書き起こして、「わかりやすい説明の仕方」や「相手への切り返しの仕方」などを研究していたことがあります。営業成績を伸ばしたいのであれば、自分の営業現場を書き起こしてそれを他人にチェックしてもらうことで、自分では気づいていない失敗の原因が浮かび上がってくるかもしれません。
(3)長く続ける
マラソンランナーは走り続けることで強靭な心臓を維持しているそうです。また、音楽家の大脳皮質が一般の人よりも大きいのは、毎日のように音楽に触れているからだと言います。これと同じで、経営者も常にビジネスのことを考えているからこそ、「ビジネス脳」を発達させていくことができるのです。そのためには、経営者としてのトレーニングをいつまでも続けていくことが大切です。そして、それを長く続ける。これが失敗を繰り返さないための最強の対応策だと思います。
※シリーズ第2回:20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る
『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』
正田 圭 著
CCCメディアハウス