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同性愛の客室乗務員がなぜ、同性愛は死刑のイランに飛ばなければならないのか

ニューズウィーク日本版 2016年4月18日 18時30分

 エールフランスは先週末、週3回のパリ-テヘラン便の運航を再開した。イランの核開発に対する制裁として停止した2008年以来。1月の制裁解除で実現した。

 だが、誰もがイランに行きたいわけではない。エールフランスのゲイの客室搭乗員(CA)はテヘラン便での勤務を拒否している。イランでは、同性愛は死刑にも値する罪。イランに飛ぶことを拒否する権利をゲイに認めよ、という呼びかけには2万6000件以上の署名が集まっている。

「行けば弾圧されるとわかっている国に行かされるなんて考えられない」と、署名を呼び掛けた自称ミスター・ロウレントは言う。

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 エールフランスでは今月初め、イランに付いたら頭髪をスカーフで覆わなければならない、などの規定に反発した女性CAがテヘラン行きを拒否。会社側はつい先週、乗務を外れてもいいと発表したばかり。

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 スカーフが搭乗拒否の理由になるなら、死刑になりかねない同性愛者は当然、飛ばなくてもよさそうだが、乗務員組合が出した結論はそうではない。

 イランに行きたくないLGBT(性的少数者)の問題は理解するが、性的傾向や肌の色、宗教によってフライトスケジュールを変えることは受け入れられないと、組合幹部は本誌に語った。

ゲイは女性より恵まれている?

「スカーフ問題で経営側と議論したときは、すべてのクルーに等しくイラン行きを拒否する権利を与えるよう要求した」と、組合専務理事のジャン・マルク・カロッシは言う。「性的志向の問題はこれとはまったく別の話だ」

 ゲイはカミングアウトするかしないか考える余地がある分、女性より恵まれているとカロッシは言う。

「女性はテヘランに着けばスカーフを強要される。ゲイの人は、黙っていればわからない」



 イランと欧米の関係が改善し、経済制裁は緩和されても、イランの人権状況が改善したわけではない。先週末には5人の死刑囚が絞首刑になったし、昨年は麻薬絡みで66人が絞首刑になっている。うち4人は未成年だった。

 エールフランスとKLMオランダ航空の親会社であるエールフランス/KLMのLGBT労働組合も、ミスター・ロウレントの嘆願には異議があるという。セバスチャン・ギドン幹事長によれば、エールフランス/KLMとその子会社は、LGBTの権利などなく「下手をすると死刑にされかねない」多くの国へも行かなければならない。「イランの人権状況は酷いもので衝撃的だが、それでも組合としては性的志向に基づく乗務員リストは作りたくない」

 ミスター・ロウレントはさらに多くの署名を集め続けるしかないようだ。

ルーシー・ウェストコット

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