我が家はキューバ系だが、クルーズ船でキューバに行くことなど考えたこともない。
キューバの打楽器コンガのリズムに熱狂する中年アメリカ人に押しつぶされそうになるぐらいなら死んだほうがまし、というのが妻の持論だし、私自身も、自由な国になるまで2度と戻らないと誓って出てきて以来、44年間キューバへ足を踏み入れていない。
だが事情は変わった。マイアミに本社を置くクルーズ会社カーニバルクルーズが最近、キューバで生まれたキューバ系アメリカ人の乗船を拒否するという差別的な方針を発表したのだ。船腹に"Sue Me(訴えてください)"と大書したようなものだ。どこまで本気か、乗船を試みたいものだ。
カーニバル社の新方針は、キューバのラウル・カストロ政権に対するバラク・オバマ米大統領の宥和策が間違いだったことの象徴だ。今回、世間にもそれをさらけ出すことになった。
【参考記事】渡航自由化、キューバの本音
あらゆる独裁政権と同様、カストロ政権はまるでバクテリアだ。接触すれば、感染する。
カーニバルもカストロ病に感染したのだろう。キューバとビジネスをしようとすれば誰でも同じことになる。なぜなら、ラウル・カストロ国家評議会議長の義理の息子でキューバ経済を牛耳るルイス・アルベルト・ロドリゲス・ロペス・カジェハ将軍を必ず通さなければならないからだ。
【参考記事】孤独な共産主義国、キューバ
ジョン・ケリー米国務長官もカーニバルの馬鹿げた方針に釘を刺してこう言った。「カーニバルは、アメリカ人差別につながるキューバの政策を容認すべきではない」と語ったのだ。
ビジネス専門通信社のブルームバーグは「キューバでビジネスをしたいなら、将軍をビジネスパートナーに迎える覚悟を決めよ」というタイトルの記事で、キューバが抱える問題を列挙している。
それでもやるなら、自分が将軍に渡した金は、より多くの銃弾や拷問器具を買うために使われることを知ってほしい。それでもやるなら、後で不眠になっても十分に強い薬はないかもしれないことを考えてほしい。
事の本質を確認しておこう。カストロ政権はキューバ系アメリカ人をアメリカ人と認めていない。昨年キューバで再開したアメリカ大使館のホームページを引用する。
キューバ政府は、キューバ生まれのアメリカ人もしくはキューバ人の親を持つアメリカ人が、アメリカ国籍を有することを認めていない。この条件に該当する個人はキューバ国民とみなされ、兵役を含めたキューバ国民の義務や制約の対象となる可能性がある。
キューバ政府は、本人やその親の出生地がキューバであれば、たとえアメリカ国籍を持っていたとしてもその個人はキューバ国民だといっているのだ。キューバ政府はアメリカに帰化する個人の選択を認めないばかりか、アメリカで生まれた子どもにはアメリカ国籍が与えられるという権利も認めていない。カストロやその取り巻きの考えに従えば、キューバ人やその子孫はキューバに属し、キューバ国籍を放棄し自由の身になることは不可能ということになる。
カーニバル社には社会的制裁を
キューバ政府はまた、キューバ生まれの海外居住者は船でキューバに入国することができないと定めている。だからカーニバルは、キューバ生まれのアメリカ人の乗船を拒否しているわけだ。
カーニバルを訴えた場合、勝訴の可能性は?
カーニバルの対応が、1964年に成立した公民権法に違反するかは不透明だ。同法では、アメリカの「公共の宿泊施設」における「人種、肌の色、宗教、もしくは出身国」による差別を禁じている。
マイアミではすでに、連邦裁判所へ訴訟が起こされている。今後の争点は、公民権法が海外でも適用されるかどうかだが、乗客はアメリカで乗船することから、同法が適用されるという見方が大勢だ。
カーニバルの方針が公民権法の精神に反していることは明白なので、問題はむしろアメリカ世論の動向だろう。カーニバルは社会的制裁を受けるべきだ。キューバ人の両親を持ち、自身はアメリカで生まれたボブ・メネンデス上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は、以下のように述べている。
キューバビジネスの儲けに目がくらんだアメリカ企業が、アメリカ国民の市民権を踏みにじるカストロ政権と取引するなど、これまで思いもよらなかったことだ。カーニバルは過ちを犯してはいけない。キューバ系アメリカ人を差別することで、カストロ政権の抑圧的な手法をアメリカ本土に広げることがあってはならない。
カーニバルとカストロ政権の「愛のボート」は法廷行きだ。
Mike Gonzalez is senior fellow at The Heritage Foundation
This article was originally published on The Daily Signal.
マイク・ゴンザレス(米ヘリテージ財団上級研究員)
キューバの打楽器コンガのリズムに熱狂する中年アメリカ人に押しつぶされそうになるぐらいなら死んだほうがまし、というのが妻の持論だし、私自身も、自由な国になるまで2度と戻らないと誓って出てきて以来、44年間キューバへ足を踏み入れていない。
だが事情は変わった。マイアミに本社を置くクルーズ会社カーニバルクルーズが最近、キューバで生まれたキューバ系アメリカ人の乗船を拒否するという差別的な方針を発表したのだ。船腹に"Sue Me(訴えてください)"と大書したようなものだ。どこまで本気か、乗船を試みたいものだ。
カーニバル社の新方針は、キューバのラウル・カストロ政権に対するバラク・オバマ米大統領の宥和策が間違いだったことの象徴だ。今回、世間にもそれをさらけ出すことになった。
【参考記事】渡航自由化、キューバの本音
あらゆる独裁政権と同様、カストロ政権はまるでバクテリアだ。接触すれば、感染する。
カーニバルもカストロ病に感染したのだろう。キューバとビジネスをしようとすれば誰でも同じことになる。なぜなら、ラウル・カストロ国家評議会議長の義理の息子でキューバ経済を牛耳るルイス・アルベルト・ロドリゲス・ロペス・カジェハ将軍を必ず通さなければならないからだ。
【参考記事】孤独な共産主義国、キューバ
ジョン・ケリー米国務長官もカーニバルの馬鹿げた方針に釘を刺してこう言った。「カーニバルは、アメリカ人差別につながるキューバの政策を容認すべきではない」と語ったのだ。
ビジネス専門通信社のブルームバーグは「キューバでビジネスをしたいなら、将軍をビジネスパートナーに迎える覚悟を決めよ」というタイトルの記事で、キューバが抱える問題を列挙している。
それでもやるなら、自分が将軍に渡した金は、より多くの銃弾や拷問器具を買うために使われることを知ってほしい。それでもやるなら、後で不眠になっても十分に強い薬はないかもしれないことを考えてほしい。
事の本質を確認しておこう。カストロ政権はキューバ系アメリカ人をアメリカ人と認めていない。昨年キューバで再開したアメリカ大使館のホームページを引用する。
キューバ政府は、キューバ生まれのアメリカ人もしくはキューバ人の親を持つアメリカ人が、アメリカ国籍を有することを認めていない。この条件に該当する個人はキューバ国民とみなされ、兵役を含めたキューバ国民の義務や制約の対象となる可能性がある。
キューバ政府は、本人やその親の出生地がキューバであれば、たとえアメリカ国籍を持っていたとしてもその個人はキューバ国民だといっているのだ。キューバ政府はアメリカに帰化する個人の選択を認めないばかりか、アメリカで生まれた子どもにはアメリカ国籍が与えられるという権利も認めていない。カストロやその取り巻きの考えに従えば、キューバ人やその子孫はキューバに属し、キューバ国籍を放棄し自由の身になることは不可能ということになる。
カーニバル社には社会的制裁を
キューバ政府はまた、キューバ生まれの海外居住者は船でキューバに入国することができないと定めている。だからカーニバルは、キューバ生まれのアメリカ人の乗船を拒否しているわけだ。
カーニバルを訴えた場合、勝訴の可能性は?
カーニバルの対応が、1964年に成立した公民権法に違反するかは不透明だ。同法では、アメリカの「公共の宿泊施設」における「人種、肌の色、宗教、もしくは出身国」による差別を禁じている。
マイアミではすでに、連邦裁判所へ訴訟が起こされている。今後の争点は、公民権法が海外でも適用されるかどうかだが、乗客はアメリカで乗船することから、同法が適用されるという見方が大勢だ。
カーニバルの方針が公民権法の精神に反していることは明白なので、問題はむしろアメリカ世論の動向だろう。カーニバルは社会的制裁を受けるべきだ。キューバ人の両親を持ち、自身はアメリカで生まれたボブ・メネンデス上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は、以下のように述べている。
キューバビジネスの儲けに目がくらんだアメリカ企業が、アメリカ国民の市民権を踏みにじるカストロ政権と取引するなど、これまで思いもよらなかったことだ。カーニバルは過ちを犯してはいけない。キューバ系アメリカ人を差別することで、カストロ政権の抑圧的な手法をアメリカ本土に広げることがあってはならない。
カーニバルとカストロ政権の「愛のボート」は法廷行きだ。
Mike Gonzalez is senior fellow at The Heritage Foundation
This article was originally published on The Daily Signal.
マイク・ゴンザレス(米ヘリテージ財団上級研究員)