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【写真特集】「崩壊した街」に残る住民のリアル

ニューズウィーク日本版 2016年5月2日 10時0分

 デトロイトはかつて、アメリカ自動車産業の中心地として輝かしい発展を遂げた都市だ。しかし産業の衰退とともに街の活力は失われ、2013年に財政破綻に陥った。

 現在では高い失業率や貧困、犯罪件数の多さが街の「名物」になっている。ニュースでの扱いも、街のネガティブな面ばかりが強調されることが多い。切り取られるイメージは大抵、崩れかかった工場や空き地だらけの街並み、火事で燃え尽きた家々、廃墟と化した商業施設......そんなところだ。

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 写真家のデーブ・ジョルダーノは、そんなデトロイトで生まれた。彼はこうした一面的な報道では見えない故郷の本当の姿を伝えるため、街に残った住民のリアルな生活を被写体に定めた。人口が減って公共サービスが不足するこの街で暮らす住民たちのたくましさは、デトロイトについて回る「死んだ街」「崩壊した街」という文脈では語られることのないものだ。

 アメリカで最も美しく、繁栄した都市と呼ばれた栄光は失われた。だが、ジョルダーノの写真から見えてくるのは都市の崩壊ではなく、困難に立ち向かう住民の強さと勇気だ。


祝日に家のポーチに並ぶ家族。星条旗はイラク戦争で命を落とした娘婿を追悼するために掲げている


おととし寒さを逃れるためロサンゼルスで冬を越したというこの男性の家は、留守中に空き巣に荒らされ破壊されてしまった

出産を間近に控えたこの女性は、子供が生まれた後には自分の人生も大きく変化するのだろうと信じている


安物の装飾品をびっしり縫い付けたお手製のスーツを30年にわたり着続ける男性は、ミスター・ロックンロールと呼ばれる街の有名人


職がないため工場跡地から換金できる金属を掘り起こす男性。何か自分が前向きになれることに金を使いたいと語る


車を買っても必ず盗まれてしまうため、自転車にくら替えしたという男性。盗難の心配がない新たな生活を祝うため、派手に飾り立てた

街の外れの暗い一角にあるボクシングジムは無料で誰でも練習できるだけでなく勉強まで教えてくれる、住民の希望の光のような存在だ


元トラック運転手の男性はブルースシンガーであると同時に、アライグマなどを捕まえて毛皮や肉を売るハンターでもある


イラクに住んでいた少年時代からハトを飼い続けてきたこの男性は現在、近くで働く売春婦に家を貸して2年ほど一緒に暮らしている


子供の頃からずっと友達だというこの2人はこれから自転車に乗って近くの公園までヘビを捕まえに行くという

ベッドで眠るホームレスの子供。家主の女性は貧しい人々に食事や寝る場所を提供し、多いときには8人ほどがこの家で暮らすという


バングラデシュ系の移民が多く暮らす地区では、母国の国民的なスポーツであるクリケットを楽しむ住民たちの姿が見られる


撮影:デーブ・ジョルダーノ
デトロイトの大学で写真を学び、1977年にシカゴで写真スタジオを開設。ネスレ、任天堂など大企業の広告写真を撮影する。また、ファインアートの写真家としてアメリカ、ロシア、ベルギーなどのギャラリー、美術館で作品を発表している。本作は新刊写真集『デトロイト・アンブロークン・ダウン』(米パワーハウス・ブックス社刊)からの抜粋

Photographs from "Detroit Unbroken Down" (powerHouse Books) by Dave Jordano

<本誌2015年12月15日号掲載>

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Photographs by Dave Jordano

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