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打倒トランプへヒラリーが抱える弱点

ニューズウィーク日本版 2016年5月13日 16時15分

 今月10日のウェストバージニア州予備選では民主党のバーニー・サンダースがヒラリー・クリントンに勝利したが、これは些細なことだ。ヒラリーがこれまでの予備選で獲得した一般代議員数、さらに特別代議員数を足した総計では大きくサンダースを上回っている。2008年にオバマとヒラリーが対決した予備選の時のオバマと比べても、今回のヒラリーは先行している。

 民主党の大統領候補がヒラリーになるのはほぼ確実だ。

 しかしウェストバージニアを見ればわかる通り、ヒラリーには弱点がある。若年層や白人男性などの支持は依然、低迷したまま。大統領候補を選ぶ7月の民主党大会までに、自らの支持層を大きく拡大できそうな気配はない。

 一方、共和党候補になる可能性の高いトランプは、東部沿岸各州やインディアナ州で次々に勝利し、郊外在住の富裕層やキリスト教保守派(福音派)の票も奪い取って上り調子だ。

 ヒラリーはトランプに勝てるのか。問題点をあげてみる。

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白人層

 ヒラリーはマイノリティーに強いが白人に弱い。ウェストバージニアのようにアフリカ系が3.5%、ラテン系が1.5%しかいないような白人住民が多い州では最初から勝ち目はなかった。

 だからサンダースもメインやワイオミングなど白人住民が大半を占める州では圧勝できた。一方アフリカ系、ラテン系の有権者が多いミシシッピやネバダではヒラリーが善戦している。サンダースが接戦の末に勝利したミシガンのような例外はあるが、概して少数派の有権者が多ければヒラリーの勝機は高い。

男性層

 ウェストバージニアで、ヒラリーは男性有権者の59%しか票を取れなかった。これは大打撃だ。白人男性に限れば事態はさらに深刻で、ヒラリーは過半数も取れそうにない。しかも忘れてならないのは、今回は民主党支持者の間の予備選なのにそれでもこれだけ男性にウケが悪いということだ。

若年層

 ウェストバージニアの44歳以下の若年層では、クリントンは73対23の大差でサンダースに負けた。45歳以上の有権者では両者の得票率はほぼ拮抗していた。同州の出口調査は規模がより若い層に限ったデータは抽出できないが、ヒラリーは若年層からはせいぜい3割程度しか得票できないだろう。トランプの「脅威」が高まる中、若年層の何割かはサンダースからヒラリーに鞍替えするかもしれない。しかしサンダースの躍進を後押ししてきた若年層の熱狂的な支持は、ヒラリーにはない。



人柄

 ウェストバージニアの有権者の76%が、サンダースを「正直」だと考えているが、クリントンを「正直」だと考える人は22%しかいない。理由は何であれ、サンダースの支持者はヒラリーの人柄を軽蔑している。それは、ヒラリーに対抗したサンダースを応援する支持者の単純な「ひいき目」かもしれない。たとえそうでも、ヒラリーは有権者の信頼を勝ち取るために巻き返しを図るか、あるいは「トランプ阻止」の重要性を有権者を説得する必要がある。

変化への期待

 92年にビル・クリントンが勝利した選挙戦のキャッチフレーズの1つは、「問題は経済だよ、おバカさん!」だった。「変化か、現状維持か」というのもあった。ヒラリーは「オバマの政策を継承するべき」と考える有権者からの支持は高いが、問題なのはウェストバージニアでは有権者の3分の1しかそう考えていないことだ。

【参考記事】米大統領選挙、「クリントンなら安心」の落とし穴

今後の展開

 当初は勝負にならないと見られていたサンダースの想定外の健闘は感動的だが、もう勝てる見込みはない。ヒラリーは、指名獲得後秋の本選までに多くの問題を解決しなければならない。「トランプ大統領」実現への不安が追い風にはなるだろうが、現状それで十分とはとても言えない。

マシュー・クーパー

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