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アフリカで、アフリカ製造業の活躍が始まった

ニューズウィーク日本版 2016年5月16日 16時35分

 アフリカ経済は今、2つの脅威に直面している。一つは1次産品の価格急落。サハラ以南の貧しいアフリカの交易条件は16%下落し、それだけ輸入品が入手しにくくなった。中国経済の減速で、中国からアフリカへの直接投資が減ったのも逆風だ。その結果、アフリカ諸国は歳入不足や通貨の下落、経済成長の減速に苦しんでいる。

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 特に大きな打撃を受けたのが、1次産品の輸出に依存する国々だ。その典型であるナイジェリアでは、原油安による外貨不足で自国通貨ナイラが急落。このままでは財政も経済も改善の見込みがないと悟った消費者は、アフリカ製品を積極的に購入しようという呼びかけを始めている。

 アフリカ・ブランドの製品が現地で売れるようになれば、経済を資源や一次産品以外にも多角化するというアフリカ諸国の願いがかなう。世界経済の好不況によって1次産品の価格が乱高下するリスクから、アフリカ大陸の経済を守ることにつながる。

 人口増加と都市化が急ピッチで進むアフリカでは、消費市場の成長に期待がかかる。今後10年間で、投資などに回せる余裕資金を手にするアフリカ人は1億2800万人に上るという試算もある。新たな中間所得層の需要を取り込むことができれば、1次産品の輸出と外国産品の輸入に依存する経済構造から脱却できる。

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 アフリカの製造業は最先端ではないものの、拡大するアフリカの消費需要を取り込むには有利な立場にある。第一に、ライバルの外資系企業よりもアフリカ市場や消費者の好みをよく理解している。

アフリカ製造業の勃興

 例えば、アフリカでは炭酸飲料は贅沢品なので、多くの人が何回かに分けて少しずつ飲む。そこに目を付けたタンザニアのバクレザ・グループは、キャップで開閉できるプラスチックボトルを採用した「アザムコーラ」を発売した。1回飲みきりのガラスボトルでコカ・コーラを売っていた米コカ・コーラに対抗する戦略だ。コカ・コーラ社もすぐに追随し、プラスチックボトルに切り替えた。

 アフリカ企業はアフリカの消費者に訴えかけるマーケティングにも長けている。ケニアに本社を置く消費財メーカーのビドコ(Bidco)は、ケニア国内だけでも7つの異なる言語に対応したマーケティングを展開し、効果を上げている。2002年に日用品大手ユニリーバの食用油と石鹸ブランドを買収したことでも知られる同社は、現在アフリカ16カ国へ進出している。

 アフリカの消費者は多くが地元ブランドを好む傾向にあるのも企業にとって追い風だ。経営コンサルティングのデロイトが実施した調査によると、多国籍企業よりも地元の食品ブランドを好むと回答した人の割合は、ケニアで90%、南アフリカで78%、ナイジェリアで78%だ。



 地元財界と連携し、現地の人材や資源を事業に活かせることも強みだ。多国籍企業が欧州にある本社で意思決定を行うことが多いのとは対照的だ。人材や資源を現地で調達していれば、たとえ国が外貨不足に陥っても企業経営に大きな影響はない。

地縁を活かす

 上手くいけば、遠い自国のやり方やサービスをそのまま持ち込んでいるだけのグローバル企業よりは、格段に競争力のある価格を提示することができる。そのモデルケースが、ザンビアで急成長を遂げる食品会社ザンビーフ(Zambeef)だ。同社は地元で食品別のサプライチェーンを形成し、農家を支援するとともに、為替変動リスクにも効果を上げた。ザンビーフはすでにガーナとナイジェリアに事業を展開しており、コンゴやジンバブエにも進出する計画だ。

 アフリカ各国の政府も国内の消費市場拡大に注目し始めた。ウガンダ政府は2014年、輸入品よりウガンダで生産された製品の購入を推進する政策を打ち出し、政府調達も20%は国産品にするよう定めた。

 アフリカ企業の成功に乗じようと、外資系企業も動いている。コカ・コーラ社は2016年1月、2.4億ドルでナイジェリア飲料大手CHI社の株式40%を取得した。

 この大陸でのビジネスには多くの困難が待ち受けるのも事実。賄賂や官僚主義が蔓延し、通行料や恣意的な関税、政府規制といった非関税障壁もある。インフラや電力不足は大きな課題だ。

 また、同じアフリカでも国籍が違えば敵味方に分かれることも少なくない。ナイジェリア政府は昨年、南アフリカに拠点を置く携帯通信事業者MTNに法令違反があったとして巨額の罰金支払いを命じられた。その上MTNは、ナイジェリア国内のサービスエリアの10%以上で、通信サービスを中止させられている。

 アフリカに立ちはだかる壁は高い。だが、今後はアフリカ企業が地域の景気を拡大させ、経済の多角化を進め、世界的な景気低迷からアフリカを守るのに重要な役割を果たしていくのは間違いない。

ジュリアン・ワイス(米大西洋協議会アフリカセンターのプログラムアシスタント)、エリナ・イワミ(同アフリカセンターのインターン生)

This article first appeared on the Atlantic Council website.

Julian Wyss is a Program Assistant with the Atlantic Council's Africa Center and Erina Iwami is an Africa Center intern.

ジュリアン・ワイス(米大西洋協議会アフリカセンター)、エリナ・イワミ

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