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クロスフィット創業者「私がこのモンスターたちを作った」

ニューズウィーク日本版 2016年5月23日 16時0分

 太い首、盛り上がった腹筋、鍛え抜かれた太ももや僧帽筋──あまりに筋肉が発達し過ぎて、腕をだらんと下ろしても脇につかないような男女の間を抜けて行くと、ビール腹の中年男が野球帽を後ろ前にかぶって控えめに座っていた。

 自分よりはるかに体格のいい男女がバーベルを空中に持ち上げるを見つめているのだ。米オレゴン州ポートランドの大きな室内競技場で、フィットネスクラブ「クロスフィット」の「アスリート(ジムの会員)」たちが技を競い合うクロスフィット大会が今年も行われていた。

 このビール腹の男こそ、クロスフィットの創設者グレッグ・グラスマンだ。ジムのトレーナーだったグラスマンは既存のプログラムに新しい動き(椅子から立ち上がる、床から物を拾う,といった日常的な動き)と強度を加えた独自のプログラムを開発、2000年にクロスフィットを立ち上げた。

身体を見ているのが好き

 世界のアスリートやアスリート候補たちがたちまち虜になった。クロスフィットは今では120カ国以上の1万3000のジムで400万人の会員と呼ばれる)を擁するようになった。ここに集まった男女の肉体は、グラスマン自身が彫上げた彫刻のようなものだ。

「身体を見ているのが本当に好きなんだ。とくに女性のね」と、グラスマンは先週末、本誌に語った。「我々が見ている女性たちは可能性の塊だ。私が通りかかるとハグしてくれる。ララ・クロフト(ゲーム『トゥームレイダー』のヒロイン)やニキータ(映画『ニキータ』の暗殺者)を見るとき、その女性美と破壊的な潜在力の相互作用に興奮を抑えきれない。この会場を歩き回っているときも、私がこのモンスターたちを作り出したと思うと、実に誇らしい」



 自慢したくなるのも無理はない。流行りすたりの激しいフィットネス業界で、クロスフィットは凄まじいスピードで成長した。一部から、クロスフィットのプログラムは怪我をしやすいというネガティブなパブリシティーがあったにも関わらずだ。クロスフィットな高齢者にもアスリートにも同じ動きを求め(強度は変える)、競争の要素も強い、などの理由からだ。



 クロスフィットは2年前、米NSCA(ストレングス&コンディショニング協会)を訴えた。同協会の機関紙に、クロスフィットは高い確率で怪我を引き起こすという「エセ科学」を載せたからだという。

「誰も怪我などしていない」と、グラスマンは言う。実際、クロスフィットの保険会社を通じて会員に販売する保険は、料率が下がる傾向にあるという。

 グラスマンはまだ、クロスフィットの成功に戸惑っているようだ。おそらく慣れることはないのかもしれない。「この成功を誇りに思う。ただちょっと距離を置いているだけだ」


ウィンストン・ロス

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