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ヒラリー・クリントン、トランプに利用されかねない6つのスキャンダル

ニューズウィーク日本版 2016年5月27日 19時30分

<アメリカ初の女性大統領の座が見えてきたヒラリー・クリントン。だが手段を選ばないトランプが、ヒラリーの過去の傷を攻撃してくる可能性もある>

 アメリカの次期大統領はヒラリー・クリントンになりそう、と言ってしまっていいだろう。選挙資金の集金額は候補中トップだし、本選では民主党の支持も大方得られそうだ。一方ドナルド・トランプは、共和党指導部や有権者に、「自分はヒトラーのような独裁者ではない」ことを証明しなくてはらない。

【参考記事】ヒラリー対トランプの「ゴシップ合戦」に突入した大統領選

 しかし未来には何が起こるかわからない。ヒラリーが負ける可能性もある。もしヒラリーが負けるとしたら、トランプよりもヒラリー自身の過去のせいだろう。ヒラリーは過去に多くの傷を抱えている。そこに新たなスポットライトが当たるようなことがあれば、支持者の声援は一瞬にしてブーイングに変わるかもしれない。ヒラリーが抱える爆弾スキャンダルをまとめた。

【参考記事】打倒トランプへヒラリーが抱える弱点

<ベンガジ事件>

 保守派がいまだにこだわるベンガジ事件。中東で反米抗議デモが頻発した2012年9月、リビアのアメリカ領事館が襲撃されて駐リビア大使ら職員4人が殺害された。その後の調べで国務省が襲撃を予期しておらず、領事館の建物を強化していなかったことが明らかになった。

 保守派はオバマ政権、特に当時国務長官だったヒラリーの責任をことさらに追及し、領事館近くに待機していた米兵をヒラリーが「撤退」させたという、実際にはなかった事実まで追及した。さらにこのでたらめな話は、今年マイケル・ベイ監督によって映画化(『13時間』〔日本未公開〕)までされている。

 米議会の調査委員会はこれまでに、何も新事実を見つけられていないが、もしそうなったら本選の展開が変わるかもしれない。

<ルインスキー不倫騒動>

 夫のビル・クリントンが大統領だった98年に発覚した、当時22歳のホワイトハウス研修生、モニカ・ルインスキーとの不倫騒動。議会下院の大統領弾劾訴追にまで発展した。ヒラリーは過去の事件として忘れたいだろうが、女性受けの悪いトランプは選挙戦略としてこの騒動を持ち出すかもしれない。もちろんそんな「いじめ」に走ればトランプのイメージも悪くなるが、トランプはイメージダウンなど恐れてはいない。

【参考記事】アメリカ政治を裏で操るコーク兄弟の「ダークマネー」


<夫ビルの女性問題>

 ルインスキーとの不倫騒動以外にも、ビルは過去3人の女性から「性的」な被害を訴えられている。99年には介護施設の元経営者の女性が過去にレイプされたと告発し、98年にはホワイトハウスの元ボランティアが強引にキスをされたと言い、アーカンソー州知事時代の州職員はセクハラを受けたと主張している。



 いずれのケースも刑事訴追はされなかったが、被害者女性へのヒラリーの対応が叩かれる可能性はある。最近の選挙運動でヒラリーは、「すべての性暴力の被害者は、真摯に事情を聴いて信用してもらう権利がある」と発言している。立派な言葉だ。だがもし自分の夫の「被害者」の女性たちを信じるかと問われたら、ヒラリーは深刻なジレンマに陥ることになる。

<ビンス・フォスターの自殺>

 クリントン政権初期の大統領次席法律顧問だったビンス・フォスターは、93年7月に公園で銃を手に死亡しているのが発見された。その後自殺と断定されたが、クリントンが殺したという根拠のない陰謀論は根強く囁かれ続けている。クリントン周辺は、陰謀論の出所は共和党関係者だと主張している。

 今回の大統領選では誰も真剣に取り上げていなかったが、最近トランプはフォスターの死を「かなり怪しい」と発言し、陰謀論を真剣に取り上げるべきだと言い出している。

<電子メール疑惑>

 ヒラリーの最も新しいスキャンダルは、国務長官時代に職務関連のメールを私用アカウントで使用したという「電子メール疑惑」だ。政府職員が職務に私用アカウントを使ってはならないという規則に違反したという指摘だが、実はその規則はヒラリーが国務省を去ってから発効したものだった。

 ヒラリーが「機密」に指定された65通のメールをセキュリティの低い個人アカウントで送っていたという指摘もあったが、結局どのメールも間違って機密扱いとなったか、ヒラリーがメールを送って以降に機密扱いになったことがわかり、実質的にヒラリーは何も悪いことはしていないことがわかった。

 現在も米連邦捜査局(FBI)が捜査を続けているので、その進捗によってはヒラリーにとって大きな痛手になることはあり得る。

<ウォール街との関係>

 ヒラリーは、投資銀行ゴールドマン・サックスから2回のスピーチを頼まれて50万ドル(約5500万円)を受け取っていた。これは民主党の対立候補バーニー・サンダースが大好きなネタだ。

 公にはウォール街の金儲け主義を批判して新たな規制を導入すると公約しているヒラリーが、個人的にはウォール街を喜ばせるようなことを言って多額の金を貰っているという批判だ。

 ヒラリーはスピーチ原稿の公開を拒否しているため、何かやましいことがあるのではないかと外野は想像をたくましくしている。クリントン夫妻は、ビルの大統領の任期終了後には多額の個人債務を抱えていたので、スピーチ代はその返済にあてられたのかもしれない。しかし隠そうとすることで逆に疑惑を深めてしまっている。

テイラー・ウォフォード

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