<アメリカ政界の黒幕として知られるコーク兄弟にトランプが接近。これまで資金援助を受けないことを売りにしてきたトランプが、本選でのヒラリーとの対決に向けていよいよ資金調達に動き出した。だがコーク兄弟はトランプを嫌っている> (写真はコーク兄弟の弟デイビッド)
米大統領選で共和党の候補指名が確実となったドナルド・トランプが、保守派の大富豪コーク兄弟にすり寄り始めた。巨大企業の経営者であるチャールズとデイビッドのコーク兄弟は、前回2012年の大統領選に1億2200万ドルを投じ、今年の大統領選では10億ドルを使う予定だという。トランプが候補指名を獲得しようというまさにこのタイミングでの会談となる。
来週、コーク兄弟の代理人と面会か
今週「USAトゥデイ」のインタビューに答えたチャールズ・コークは、トランプ陣営からコーク側の代理人と会談したいという申し出があったことを明らかにした。コーク側もこれに合意した。会談の日程はまだ設定されていないが、トランプ陣営の広報担当者は、声明の中で「来週頃」になると語っている。
コーク兄弟はアメリカの保守派の中で最大の影響力を持つ人物で、予備選の期間中にはトランプを共和党の候補にしたくないと思っていたことで知られる。コーク兄弟は予備選でどの候補も支持しなかったが、トランプの優勢が明らかになると、トランプのことは「大統領職を熱望するカルト(狂信者)」と呼んで無視していた。
【参考記事】アメリカ政治を裏で操るコーク兄弟の「ダークマネー」
コーク兄弟は自由主義経済を信奉しているが、これはトランプの「反自由貿易」政策とは合致しない。さらにチャールズは、最近トランプが連邦地裁のゴンザロ・クリエル判事を「メキシコ人」と呼んで攻撃していることを不快に感じている。前述のインタビューでチャールズは、トランプの攻撃を「人種差別主義か、固定観念に縛られたステレオタイプ」と非難している。一方トランプも、コーク兄弟の支援を受けて当選した共和党政治家を「操り人形」とコケにしている。
【参考記事】トランプのメキシコ系判事差別で共和党ドン引き
チャールズは、コーク側は「誰とでも喜んで対話する」と語り、トランプ陣営も「共通理解」を深めたいとしている。しかし同時にチャールズは、トランプに説得されることはないだろうとも語った。トランプが大統領にふさわしいと思うか尋ねられたチャールズは、「その答えはわからない」と明言を避けた。
トランプが大統領にふさわしくないと思っているのは何もコーク兄弟だけではない。保守派一般どころか共和党内の大勢の人々がそう考えている。トランプ支持を表明したばかりのポール・ライアン下院議長も今週、トランプを「ふざけた態度がイラつかせる」と非難していたが、同時にトランプに「共和党が誇れる選挙戦を見せてくれることを望む」とフォローしていた。
【参考記事】トランプに「屈服」したライアン米下院議長の不安な将来
一方、これまで公式にトランプを支持していた共和党のマーク・カーク上院議員は、今週支持を撤回した。理由についてカークは、自身の軍隊経験から見てトランプには軍司令官としての資質がないと批判し、クリエル判事への攻撃を見ればトランプをもう支持することはできないと語っている。他の共和党指導部も、発言を自重して攻撃を控えるようトランプに求めている。
会談はヒラリーにとって格好の攻撃材料
トランプとコーク兄弟の会談のニュースは、予備選最終盤のこの絶妙なタイミングで報じられた。民主党のヒラリー・クリントンは候補指名を確実にし、本選モードへと選挙戦をシフトしつつある。対するトランプは、これまでのように自費で選挙費用を捻出し続けるのは次第に困難になりつつある。
トランプ人気を支える根幹の1つは、他の政治家と違って大富豪のトランプは「誰からも買われない」ことだった。
だがコーク兄弟との会談で、トランプのこの「神話」は崩れるかもしれない。トランプは、本選でクリントンに勝つためには10億ドルの選挙資金が必要だが、政治資金管理団体のスーパーPAC(政治活動委員会)を持たず、共和党の大口献金者からの支援も受けていないトランプには、これだけの資金を調達するのは至難の業だ、と言っている。
そしてこの会談は、間違いなく対抗馬ヒラリーに攻撃材料を与える。コーク兄弟は財力にモノを言わせて政治をゆがめるリベラル派の敵と言われており、トランプが彼らに近づけば民主党支持者にとって格好の攻撃対象になるからだ。
テイラー・ウォフォード
米大統領選で共和党の候補指名が確実となったドナルド・トランプが、保守派の大富豪コーク兄弟にすり寄り始めた。巨大企業の経営者であるチャールズとデイビッドのコーク兄弟は、前回2012年の大統領選に1億2200万ドルを投じ、今年の大統領選では10億ドルを使う予定だという。トランプが候補指名を獲得しようというまさにこのタイミングでの会談となる。
来週、コーク兄弟の代理人と面会か
今週「USAトゥデイ」のインタビューに答えたチャールズ・コークは、トランプ陣営からコーク側の代理人と会談したいという申し出があったことを明らかにした。コーク側もこれに合意した。会談の日程はまだ設定されていないが、トランプ陣営の広報担当者は、声明の中で「来週頃」になると語っている。
コーク兄弟はアメリカの保守派の中で最大の影響力を持つ人物で、予備選の期間中にはトランプを共和党の候補にしたくないと思っていたことで知られる。コーク兄弟は予備選でどの候補も支持しなかったが、トランプの優勢が明らかになると、トランプのことは「大統領職を熱望するカルト(狂信者)」と呼んで無視していた。
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コーク兄弟は自由主義経済を信奉しているが、これはトランプの「反自由貿易」政策とは合致しない。さらにチャールズは、最近トランプが連邦地裁のゴンザロ・クリエル判事を「メキシコ人」と呼んで攻撃していることを不快に感じている。前述のインタビューでチャールズは、トランプの攻撃を「人種差別主義か、固定観念に縛られたステレオタイプ」と非難している。一方トランプも、コーク兄弟の支援を受けて当選した共和党政治家を「操り人形」とコケにしている。
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チャールズは、コーク側は「誰とでも喜んで対話する」と語り、トランプ陣営も「共通理解」を深めたいとしている。しかし同時にチャールズは、トランプに説得されることはないだろうとも語った。トランプが大統領にふさわしいと思うか尋ねられたチャールズは、「その答えはわからない」と明言を避けた。
トランプが大統領にふさわしくないと思っているのは何もコーク兄弟だけではない。保守派一般どころか共和党内の大勢の人々がそう考えている。トランプ支持を表明したばかりのポール・ライアン下院議長も今週、トランプを「ふざけた態度がイラつかせる」と非難していたが、同時にトランプに「共和党が誇れる選挙戦を見せてくれることを望む」とフォローしていた。
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一方、これまで公式にトランプを支持していた共和党のマーク・カーク上院議員は、今週支持を撤回した。理由についてカークは、自身の軍隊経験から見てトランプには軍司令官としての資質がないと批判し、クリエル判事への攻撃を見ればトランプをもう支持することはできないと語っている。他の共和党指導部も、発言を自重して攻撃を控えるようトランプに求めている。
会談はヒラリーにとって格好の攻撃材料
トランプとコーク兄弟の会談のニュースは、予備選最終盤のこの絶妙なタイミングで報じられた。民主党のヒラリー・クリントンは候補指名を確実にし、本選モードへと選挙戦をシフトしつつある。対するトランプは、これまでのように自費で選挙費用を捻出し続けるのは次第に困難になりつつある。
トランプ人気を支える根幹の1つは、他の政治家と違って大富豪のトランプは「誰からも買われない」ことだった。
だがコーク兄弟との会談で、トランプのこの「神話」は崩れるかもしれない。トランプは、本選でクリントンに勝つためには10億ドルの選挙資金が必要だが、政治資金管理団体のスーパーPAC(政治活動委員会)を持たず、共和党の大口献金者からの支援も受けていないトランプには、これだけの資金を調達するのは至難の業だ、と言っている。
そしてこの会談は、間違いなく対抗馬ヒラリーに攻撃材料を与える。コーク兄弟は財力にモノを言わせて政治をゆがめるリベラル派の敵と言われており、トランプが彼らに近づけば民主党支持者にとって格好の攻撃対象になるからだ。
テイラー・ウォフォード