<都知事選で今後の都政の選択肢が示されることはなさそうだが、現実には都政は大きな岐路に立っている。本格的な人口減少社会の到来を前に、このまま拡大路線を続けるのか? それとも都政規模を縮小するのか?>
東京都知事選が実施されます。このままでは「知名度」という基礎データをもとに、「身体検査にパスするか」という問題と「本人が出るかどうか」という難題をクリアすれば、もうそれで都知事として決まりそうな雲行きです。
もちろん注目度の高い選挙ですから、都政とはあまり関係ないテーマを持ち込んで出馬する候補が出てくることはあるでしょう。ですが、都政の実務がわかっている本命の候補は、もしかしたら「相乗り」になるかもしれません。そうなると、都政としてはまったく選択肢がないという可能性も出てきます。
そもそも一連の都知事の辞任劇、そして現在進行している候補の人選というドラマ、そのいずれにおいても、都政に関する方向性の選択という話は絡んできていません。では、本当に都政には選択肢がないのでしょうか?
そんなことはないと思います。
【参考記事】「予備選」が導入できない日本政治の残念な現状
1つの選択肢は、東京の拡大をスローダウンさせるかどうかという判断です。つまり、これ以上、東京を拡大するのか、それとも拡大を止める政策を取るのかという話です。これは、東京だけが成長して地方が衰退するという問題の是非という観点もありますが、東京サイドの観点としては「これ以上の開発をするのか」という選択肢になるわけで、重要な選択です。
そこにはスローダウンさせる、あるいは拡大をマイナス、つまり東京の人口を減らしていくというチョイスもあると思います。例えば「オリンピック不要論」などに引き寄せられる世論があるのなら、さらにその延長で「東京の縮小」という考え方は、検討に値すると思います。
ですが、仮にスローダウンが早過ぎるようですと、税収が期待できる経済状態のうちに税収がダウンしてしまいます。また、高齢住民が増えて財政が悪化してから、住民を地方にUターンさせようとしても、より財政の脆弱な地方には引き受けてもらえないという懸念もあります。ですから、実現できる条件は限られると思いますが、いずれにしても、「大きくなりすぎた東京を縮小する」というのは、真剣に考えるべき選択肢だと思います。
反対に、仮に東京が「一極集中が進んでもいい」から、日本経済を牽引する、つまり現在より経済成長を加速させる選択肢もあります。この点に関しては、従来型の製造業などは、空洞化が加速しているわけですし、残った「本社事務機能」でも、特に多国籍化した企業に関しては国外脱出をする準備をしています。
ですから、そのトレンドをひっくり返すには、相当なことをやらなくてはダメです。要するに東京の仕事の進め方を改革して、生産性を高めるのです。例えばシンガポールと香港の金融センター機能を「奪い取る」ためにできることは何でもやるといった成長路線を訴える立場があってもいいと思います。
以前にこのコラムのテーマにしたように、大阪圏の経済の衰退が著しい中で、こうした金融センター機能、具体的に言えば国際的な会計と法務の事務機能を大阪が担うべきだと考えてきました。それこそシンガポールや香港の地位を奪うという考え方です。
ですが、大阪で叫ばれていた改革の方向性は、いつの間にか「リニアを引いて中央官庁を誘致する」という、「親方日の丸」経済へ依存する考え方に後退しています。仮に大阪がやらないのなら、あらためて東京がやるべきだという考え方もあるでしょう。
その場合、いわゆる「植民地租界」的な、つまり「ここでは英語が通じます。外国人も困りません」という「屈辱的な特区」ではダメです。やるのであれば本気で日本の組織と人材と資金に国際競争力をつける方向性が必要でしょう。
【参考記事】大阪は「副首都」ではなく「アジアの商都」を目指せ
2つ目の選択肢は、東京の高齢化がある段階を越え、高齢者を支えていくために過去の蓄積を吐き出さざるを得なくなった場合に、財政破綻を回避するその方策に注目するという考え方です。
これは1つ目の選択肢にも絡んできますが、このまま無策で進めば、東京への一極集中は止まらず、その一方で生産性の低迷と空洞化のために東京の経済成長は思うように好転しない、その間に徐々に人口は高齢化し、ズルズルと財政が悪化していくことになります。
そうならないために、仮に東京の拡大が止められない一方で、しかし東京の生産性は劇的には改善しないのであれば、何らかの歳出の抑制をしなければなりません。社会保障上の給付を減らすのか、自治体組織を縮小するのか、ハコモノの建設やイベントの実施をカットするのか......。或いはそうした歳出抑制をしないで、格付けが下がって金利が上がっても地方債を出し続けるのか......。10~20年単位での東京の財政施策も争点にしなくてはいけないと思います。
決して明るい未来が待っているとは言えないこの大都市には、政策と無関係のところで知事の去就や、知事候補の人事を面白がっているヒマはないのです。
東京都知事選が実施されます。このままでは「知名度」という基礎データをもとに、「身体検査にパスするか」という問題と「本人が出るかどうか」という難題をクリアすれば、もうそれで都知事として決まりそうな雲行きです。
もちろん注目度の高い選挙ですから、都政とはあまり関係ないテーマを持ち込んで出馬する候補が出てくることはあるでしょう。ですが、都政の実務がわかっている本命の候補は、もしかしたら「相乗り」になるかもしれません。そうなると、都政としてはまったく選択肢がないという可能性も出てきます。
そもそも一連の都知事の辞任劇、そして現在進行している候補の人選というドラマ、そのいずれにおいても、都政に関する方向性の選択という話は絡んできていません。では、本当に都政には選択肢がないのでしょうか?
そんなことはないと思います。
【参考記事】「予備選」が導入できない日本政治の残念な現状
1つの選択肢は、東京の拡大をスローダウンさせるかどうかという判断です。つまり、これ以上、東京を拡大するのか、それとも拡大を止める政策を取るのかという話です。これは、東京だけが成長して地方が衰退するという問題の是非という観点もありますが、東京サイドの観点としては「これ以上の開発をするのか」という選択肢になるわけで、重要な選択です。
そこにはスローダウンさせる、あるいは拡大をマイナス、つまり東京の人口を減らしていくというチョイスもあると思います。例えば「オリンピック不要論」などに引き寄せられる世論があるのなら、さらにその延長で「東京の縮小」という考え方は、検討に値すると思います。
ですが、仮にスローダウンが早過ぎるようですと、税収が期待できる経済状態のうちに税収がダウンしてしまいます。また、高齢住民が増えて財政が悪化してから、住民を地方にUターンさせようとしても、より財政の脆弱な地方には引き受けてもらえないという懸念もあります。ですから、実現できる条件は限られると思いますが、いずれにしても、「大きくなりすぎた東京を縮小する」というのは、真剣に考えるべき選択肢だと思います。
反対に、仮に東京が「一極集中が進んでもいい」から、日本経済を牽引する、つまり現在より経済成長を加速させる選択肢もあります。この点に関しては、従来型の製造業などは、空洞化が加速しているわけですし、残った「本社事務機能」でも、特に多国籍化した企業に関しては国外脱出をする準備をしています。
ですから、そのトレンドをひっくり返すには、相当なことをやらなくてはダメです。要するに東京の仕事の進め方を改革して、生産性を高めるのです。例えばシンガポールと香港の金融センター機能を「奪い取る」ためにできることは何でもやるといった成長路線を訴える立場があってもいいと思います。
以前にこのコラムのテーマにしたように、大阪圏の経済の衰退が著しい中で、こうした金融センター機能、具体的に言えば国際的な会計と法務の事務機能を大阪が担うべきだと考えてきました。それこそシンガポールや香港の地位を奪うという考え方です。
ですが、大阪で叫ばれていた改革の方向性は、いつの間にか「リニアを引いて中央官庁を誘致する」という、「親方日の丸」経済へ依存する考え方に後退しています。仮に大阪がやらないのなら、あらためて東京がやるべきだという考え方もあるでしょう。
その場合、いわゆる「植民地租界」的な、つまり「ここでは英語が通じます。外国人も困りません」という「屈辱的な特区」ではダメです。やるのであれば本気で日本の組織と人材と資金に国際競争力をつける方向性が必要でしょう。
【参考記事】大阪は「副首都」ではなく「アジアの商都」を目指せ
2つ目の選択肢は、東京の高齢化がある段階を越え、高齢者を支えていくために過去の蓄積を吐き出さざるを得なくなった場合に、財政破綻を回避するその方策に注目するという考え方です。
これは1つ目の選択肢にも絡んできますが、このまま無策で進めば、東京への一極集中は止まらず、その一方で生産性の低迷と空洞化のために東京の経済成長は思うように好転しない、その間に徐々に人口は高齢化し、ズルズルと財政が悪化していくことになります。
そうならないために、仮に東京の拡大が止められない一方で、しかし東京の生産性は劇的には改善しないのであれば、何らかの歳出の抑制をしなければなりません。社会保障上の給付を減らすのか、自治体組織を縮小するのか、ハコモノの建設やイベントの実施をカットするのか......。或いはそうした歳出抑制をしないで、格付けが下がって金利が上がっても地方債を出し続けるのか......。10~20年単位での東京の財政施策も争点にしなくてはいけないと思います。
決して明るい未来が待っているとは言えないこの大都市には、政策と無関係のところで知事の去就や、知事候補の人事を面白がっているヒマはないのです。