<米軍主導の有志連合から援護を受け、イラク治安部隊がついに西部の都市ファルージャをISISから奪い返した。残るはシリアのマンビジ、ラッカ、そしてISIS指導者が潜むとされるイラクのモスル。勢いの衰えるISISを追い詰めることができるか> (ファルージャ市内で奪還を喜ぶイラク兵、6月27日)
イラク西部の都市ファルージャに再び、イラク国旗がはためいた。同国治安部隊は26日、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の手からファルージャを完全に奪還することに成功した。これでISISはまたひとつ「領土」を失った。
【参考記事】イラク政府のファルージャ奪還「成功」で新たな火種
わずか1年ほどの間に、イラク政府はISISに支配されていた3つの主要都市を奪い返したことになる。サラハディン州の州都ティクリート、アンバル州の州都ラマディ、そして同じくアンバル州のファルージャだ。
奪還作戦の成功は、米軍主導の有志連合からの援護なしには実現しなかった。有志連合はイラクとシリアで対ISIS包囲網を敷いており、この戦いにおけるカギとなってきた。では、次はどこが焦点となるだろうか。
ファルージャの安定化
何はともあれ、ファルージャの安定が先決。ISISに再び支配されないよう、有志連合はアンバル州に全ての当事者や住民を呼び戻し、安定化を確保する手助けをしなければならない。この先はイラク人自身の手で行うべきだが、戦火を逃れてファルージャを脱出していた何万人もの市民を、市外の砂漠に設けられた避難キャンプから市内に呼び戻すため、イラク政府は大掛かりな復興事業に着手する必要がある。
そのため、有志連合は今後も戦略的支援を行う必要があるかもしれない。ISISが反撃してくるなら、空爆も必要になってくるだろう。2014年6月に「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」を奉じるイスラム国家の樹立を宣言したISISは、このところ実効支配地域の縮小を余儀なくされているが、今も仕掛け爆弾や待ち伏せ攻撃、自動車を使った自爆テロなどの手段を有し、地上軍にとって大きな脅威となっているからだ。
【参考記事】イラク:モースル陥落の深刻さ
「マンビジ・ポケット」
有志連合は、シリア東部の都市マンビジでISISと戦うシリア民主軍――アラブ人とクルド人の合同部隊――を援護している。激戦地となっているこの一帯は「マンビジ・ポケット」と呼ばれている。シリア民主軍はマンビジを包囲後、市内に進攻。有志連合による空爆と米特殊部隊の顧問200人がついており、ここが次に有志連合が制圧する都市となりそうだ。
マンビジの奪還に成功すれば、有志連合と地上部隊は次に、シリア最大のISIS拠点へと向かうことになるかもしれない。
「首都」ラッカ
ファルージャやマンビジよりずっと困難な標的がシリアのラッカ。ISISの中心的拠点だ。初期にISISが制圧した都市のひとつであり、ISISは「首都」と称している。市街地で軍事パレードを行い、残忍な捕虜殺害場面を含むプロパガンダ映像も多くがここから発信。ISISの象徴ともなっているシリア東部の都市だ。
有志連合は2014年9月から攻撃を加えており、多数の戦闘員が逃げ出してはいるが、今もISISの支配下にある。ISISによる制圧以来、市内に入れた地上部隊はまだないが、シリア政府軍はラッカ県にすでに進攻している。
イラン・ロシア両政府が支援するシリアのバシャル・アサド大統領がラッカ市内に進軍する決断を下すのは、時間の問題かもしれない。その場合、有志連合とシリア民主軍に出番はなさそうだ。ただ、シリアとイラクでISISが「領土」を次々に失っていくなか、ラッカ奪還作戦は、有志連合にとってもシリア・イラン・ロシアの同盟にとっても魅力的なオプションになってくる。
【参考記事】独裁者アサドのシリア奪還を助けるロシアとイラン
イラク第2の都市モスル
奪還すれば最大の成果となるのが、イラク北部の都市モスルだ。ISISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディは、モスル近郊に潜んでいると考えられている。バグダディはモスルで自称「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」として最初の説教をしたとされる。
人口100万人を超えるイラク第2の都市であり、ISISが実効支配する中で最大の都市だ。イラクの治安部隊が2014年6月に放棄して脱走して以来、スンニ派が多数を占めるモスルを、スンニ派主体のISISは比較的たやすく支配してきた。
イラクのハイデル・アル・アバディ首相は26日、ファルージャを訪れ、モスルにもイラク国旗を掲げることを誓った。アバディは以前にも2016年末までのモスル奪還を宣言していたが、ラマディとファルージャでの成功を受け、モスル進攻はより時宜にかなったものになるだろうと米当局者は言う。
イラク治安部隊は現在、モスルの75キロ南方の町マクムールに駐留している。クルド軍と米軍による空爆援護を受け、治安部隊は3月に、モスル周辺の村の奪還を開始した。有志連合によれば、モスル解放作戦の第1段階だ。次の段階はモスルの制圧だが、今年末までではなく、2017年のほうが現実的だと米軍は推測している。
有志連合の当局者に取材を申し込んだが、コメントは得られなかった。
ジャック・ムーア
イラク西部の都市ファルージャに再び、イラク国旗がはためいた。同国治安部隊は26日、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の手からファルージャを完全に奪還することに成功した。これでISISはまたひとつ「領土」を失った。
【参考記事】イラク政府のファルージャ奪還「成功」で新たな火種
わずか1年ほどの間に、イラク政府はISISに支配されていた3つの主要都市を奪い返したことになる。サラハディン州の州都ティクリート、アンバル州の州都ラマディ、そして同じくアンバル州のファルージャだ。
奪還作戦の成功は、米軍主導の有志連合からの援護なしには実現しなかった。有志連合はイラクとシリアで対ISIS包囲網を敷いており、この戦いにおけるカギとなってきた。では、次はどこが焦点となるだろうか。
ファルージャの安定化
何はともあれ、ファルージャの安定が先決。ISISに再び支配されないよう、有志連合はアンバル州に全ての当事者や住民を呼び戻し、安定化を確保する手助けをしなければならない。この先はイラク人自身の手で行うべきだが、戦火を逃れてファルージャを脱出していた何万人もの市民を、市外の砂漠に設けられた避難キャンプから市内に呼び戻すため、イラク政府は大掛かりな復興事業に着手する必要がある。
そのため、有志連合は今後も戦略的支援を行う必要があるかもしれない。ISISが反撃してくるなら、空爆も必要になってくるだろう。2014年6月に「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」を奉じるイスラム国家の樹立を宣言したISISは、このところ実効支配地域の縮小を余儀なくされているが、今も仕掛け爆弾や待ち伏せ攻撃、自動車を使った自爆テロなどの手段を有し、地上軍にとって大きな脅威となっているからだ。
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「マンビジ・ポケット」
有志連合は、シリア東部の都市マンビジでISISと戦うシリア民主軍――アラブ人とクルド人の合同部隊――を援護している。激戦地となっているこの一帯は「マンビジ・ポケット」と呼ばれている。シリア民主軍はマンビジを包囲後、市内に進攻。有志連合による空爆と米特殊部隊の顧問200人がついており、ここが次に有志連合が制圧する都市となりそうだ。
マンビジの奪還に成功すれば、有志連合と地上部隊は次に、シリア最大のISIS拠点へと向かうことになるかもしれない。
「首都」ラッカ
ファルージャやマンビジよりずっと困難な標的がシリアのラッカ。ISISの中心的拠点だ。初期にISISが制圧した都市のひとつであり、ISISは「首都」と称している。市街地で軍事パレードを行い、残忍な捕虜殺害場面を含むプロパガンダ映像も多くがここから発信。ISISの象徴ともなっているシリア東部の都市だ。
有志連合は2014年9月から攻撃を加えており、多数の戦闘員が逃げ出してはいるが、今もISISの支配下にある。ISISによる制圧以来、市内に入れた地上部隊はまだないが、シリア政府軍はラッカ県にすでに進攻している。
イラン・ロシア両政府が支援するシリアのバシャル・アサド大統領がラッカ市内に進軍する決断を下すのは、時間の問題かもしれない。その場合、有志連合とシリア民主軍に出番はなさそうだ。ただ、シリアとイラクでISISが「領土」を次々に失っていくなか、ラッカ奪還作戦は、有志連合にとってもシリア・イラン・ロシアの同盟にとっても魅力的なオプションになってくる。
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イラク第2の都市モスル
奪還すれば最大の成果となるのが、イラク北部の都市モスルだ。ISISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディは、モスル近郊に潜んでいると考えられている。バグダディはモスルで自称「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」として最初の説教をしたとされる。
人口100万人を超えるイラク第2の都市であり、ISISが実効支配する中で最大の都市だ。イラクの治安部隊が2014年6月に放棄して脱走して以来、スンニ派が多数を占めるモスルを、スンニ派主体のISISは比較的たやすく支配してきた。
イラクのハイデル・アル・アバディ首相は26日、ファルージャを訪れ、モスルにもイラク国旗を掲げることを誓った。アバディは以前にも2016年末までのモスル奪還を宣言していたが、ラマディとファルージャでの成功を受け、モスル進攻はより時宜にかなったものになるだろうと米当局者は言う。
イラク治安部隊は現在、モスルの75キロ南方の町マクムールに駐留している。クルド軍と米軍による空爆援護を受け、治安部隊は3月に、モスル周辺の村の奪還を開始した。有志連合によれば、モスル解放作戦の第1段階だ。次の段階はモスルの制圧だが、今年末までではなく、2017年のほうが現実的だと米軍は推測している。
有志連合の当局者に取材を申し込んだが、コメントは得られなかった。
ジャック・ムーア