「生活の一部としての仕事」。人間本来のあり方を模索するスタートアップ[Envato] (写真:写真中央はスタンディングスペース。普段はここで開発責任者が常駐、フロア中央から開発全体を統括している。)
[課題] ベンチャー企業としての持続的な成長
[施策] 仕事と生活を分けないフレキシブルなワークスタイルをつくる
[成果] 豪州の「最も働きたい会社」として評価される
オーストラリアを拠点にクリエイターの制作物を仲介するデジタルマーケットプレイスを展開するエンバト。彼らはまたオーストラリアの「働きたい会社」ランキング上位の常連組である。
人気の理由は、「仕事は生活の一部」との哲学に裏打ちされたワークスタイルだ。彼らのオフィスに足を踏み入れた者は直感できるだろう。「木」をモチーフとしたセミクローズドスペースや、地元アーティストの手による壁面の絵画は、会社の「外」と「内」の境界を無理なく崩している。同社HRディレクターのジェームズ・ロウ氏は言う。
「かつては仕事と生活が分かれていて、だからこそワーク・ライフ・バランスが注目されました。でも時代は変わった。いまや生活の一部として仕事があり、また家族や人生の楽しみがあると考えるべきでしょう。オフィスを設計するにあたっても、仕事と生活を分けない、フレキシブルなワークスタイルを目指しました」(ロウ氏)
【参考記事】クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く
フレックス制や在宅勤務はもちろん自作デスクの使用もOK
スタンディングで仕事をするもよし、自分の背丈に合ったデスクを自作するもよし。「足りないものがあれば作ればいい」というカルチャーが浸透しており、TV会議システムも、ラップトップとデジタルカメラで自作してしまうほど。
コアタイムは10時から16時と余裕があり、社員は朝夕を思い思いに過ごしている。週に1度は在宅勤務ができるルールだが、さらに頻度を増やしていく予定だ。仕事の成果さえ上げていれば、時間の使い方は自由。子供の送り迎えや家事、通院や趣味、その合間に仕事をすればいいのである。
社内キッチンであえてフルーツと水だけに絞り食事を提供しないのも、「残業しないといけないと感じさせてしまうから」とのこと。社員の生活時間を削る要素は、状況が許す限りゼロに近づける方針だ。
(左上)100年前にはワインの保管庫として使用されていた建物。(左下)全員が利用するカフェテリアに飾られた社員たちの顔写真。(右)社員が自分の背丈に合わせて自作したスタンディングデスク。「足りないものは自分でつくる」のが同社のカルチャー。
キッチンスペース。新鮮な果物や飲料は置いてあるが、食事は提供しない。「残業しないといけないと感じてしまう」ためだという。
地階にある中庭は緑豊か。オフィスのデザインコンセプトが木であるように、「外」にある自然を「中」に取り込む発想。
至る所にイメージボードが設置されている。
一人で作業に集中したい時にはこうしたスペースも利用する。
開発メンバーはチーフとミーティングルームのガラス壁を使って進捗確認をする。
執務エリアの全景。
全員の人生やワークスタイルを尊重できる会社へ
現場で開発チームを率いるプログラム・マネジャーのアドリアン・フィットラーニ氏も次のように語る。
「オフィスに長くいなくてもいいんです。海外にも90名ほどの社員がいますが、皆の都合の良い時間に仕事をしてもらっています。これからは旅好きにも働きやすい環境をつくるつもりです。例えば1年のうち3カ月は世界中のどこからでも仕事をしていい」
「とにかく全員のワークスタイルを尊重するのが目標」とロウ氏の言葉には躊躇がない。仕事ありきの生活ではなく「生活ありきの仕事」。オーストラリアを超えてアジア、アメリカ、ヨーロッパから優秀な人材が集まってくるのも、この哲学故だろう。ここには、彼らが思う人間の自然な姿があるのだ。
創業:2006年
売上高:非公表
純利益:非公表
従業員数:180人
http://www.envato.com
コンサルティング(ワークスタイル):Büro
インテリア設計:Büro
建築設計:Büro
WORKSIGHT 08(2015.10)より
text: Yusuke Higashi
photo: Masahiro Sanbe
壁面には地元アーティストの手による絵画が。「典型的オフィスの雰囲気」を崩している。
ラップトップとウェブカメラを接続し、それをキャスターに載せて移動させている。これで遠隔地とミーティングができる。
(左)HRディレクターのジェームズ・ロウ James Law(右上)プログラム・マネジャーのアドリアン・フィットラーニ Adrian Fittolani(右下)イベントや会議に使われるスペース。
※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
WORKSIGHT
[課題] ベンチャー企業としての持続的な成長
[施策] 仕事と生活を分けないフレキシブルなワークスタイルをつくる
[成果] 豪州の「最も働きたい会社」として評価される
オーストラリアを拠点にクリエイターの制作物を仲介するデジタルマーケットプレイスを展開するエンバト。彼らはまたオーストラリアの「働きたい会社」ランキング上位の常連組である。
人気の理由は、「仕事は生活の一部」との哲学に裏打ちされたワークスタイルだ。彼らのオフィスに足を踏み入れた者は直感できるだろう。「木」をモチーフとしたセミクローズドスペースや、地元アーティストの手による壁面の絵画は、会社の「外」と「内」の境界を無理なく崩している。同社HRディレクターのジェームズ・ロウ氏は言う。
「かつては仕事と生活が分かれていて、だからこそワーク・ライフ・バランスが注目されました。でも時代は変わった。いまや生活の一部として仕事があり、また家族や人生の楽しみがあると考えるべきでしょう。オフィスを設計するにあたっても、仕事と生活を分けない、フレキシブルなワークスタイルを目指しました」(ロウ氏)
【参考記事】クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く
フレックス制や在宅勤務はもちろん自作デスクの使用もOK
スタンディングで仕事をするもよし、自分の背丈に合ったデスクを自作するもよし。「足りないものがあれば作ればいい」というカルチャーが浸透しており、TV会議システムも、ラップトップとデジタルカメラで自作してしまうほど。
コアタイムは10時から16時と余裕があり、社員は朝夕を思い思いに過ごしている。週に1度は在宅勤務ができるルールだが、さらに頻度を増やしていく予定だ。仕事の成果さえ上げていれば、時間の使い方は自由。子供の送り迎えや家事、通院や趣味、その合間に仕事をすればいいのである。
社内キッチンであえてフルーツと水だけに絞り食事を提供しないのも、「残業しないといけないと感じさせてしまうから」とのこと。社員の生活時間を削る要素は、状況が許す限りゼロに近づける方針だ。
(左上)100年前にはワインの保管庫として使用されていた建物。(左下)全員が利用するカフェテリアに飾られた社員たちの顔写真。(右)社員が自分の背丈に合わせて自作したスタンディングデスク。「足りないものは自分でつくる」のが同社のカルチャー。
キッチンスペース。新鮮な果物や飲料は置いてあるが、食事は提供しない。「残業しないといけないと感じてしまう」ためだという。
地階にある中庭は緑豊か。オフィスのデザインコンセプトが木であるように、「外」にある自然を「中」に取り込む発想。
至る所にイメージボードが設置されている。
一人で作業に集中したい時にはこうしたスペースも利用する。
開発メンバーはチーフとミーティングルームのガラス壁を使って進捗確認をする。
執務エリアの全景。
全員の人生やワークスタイルを尊重できる会社へ
現場で開発チームを率いるプログラム・マネジャーのアドリアン・フィットラーニ氏も次のように語る。
「オフィスに長くいなくてもいいんです。海外にも90名ほどの社員がいますが、皆の都合の良い時間に仕事をしてもらっています。これからは旅好きにも働きやすい環境をつくるつもりです。例えば1年のうち3カ月は世界中のどこからでも仕事をしていい」
「とにかく全員のワークスタイルを尊重するのが目標」とロウ氏の言葉には躊躇がない。仕事ありきの生活ではなく「生活ありきの仕事」。オーストラリアを超えてアジア、アメリカ、ヨーロッパから優秀な人材が集まってくるのも、この哲学故だろう。ここには、彼らが思う人間の自然な姿があるのだ。
創業:2006年
売上高:非公表
純利益:非公表
従業員数:180人
http://www.envato.com
コンサルティング(ワークスタイル):Büro
インテリア設計:Büro
建築設計:Büro
WORKSIGHT 08(2015.10)より
text: Yusuke Higashi
photo: Masahiro Sanbe
壁面には地元アーティストの手による絵画が。「典型的オフィスの雰囲気」を崩している。
ラップトップとウェブカメラを接続し、それをキャスターに載せて移動させている。これで遠隔地とミーティングができる。
(左)HRディレクターのジェームズ・ロウ James Law(右上)プログラム・マネジャーのアドリアン・フィットラーニ Adrian Fittolani(右下)イベントや会議に使われるスペース。
※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
WORKSIGHT