<アメリカなどで一足早くリリースされ、社会現象となっているスマホゲームの「ポケモンGO」。ポケモンの本場日本へのインバウンド観光客を呼び込むためにも、様々な問題点に注意しつつ日本リリースを成功させるべき>
今月6日にアメリカで「ポケモンGO」がリリースされてから、すでに2週間が経ちました。特に11日の週に入ってからのSNSでの拡散は猛烈で、この週の時点で配信数が3000万という報道もあります。その後の週末になると、テロや大統領選のニュースを押しのけて、ちまたの話題はポケモンGO一色という感じになりました。
ニューヨークなど大都市での熱狂ぶりも相当だったようですが、私の住んでいるニュージャージーの田舎でも、大学町プリンストンの商店街にはスマホを「かざして」歩く「一目でそれと分かるグループ」がウヨウヨしていましたし、普段なら誰も見向きもしない田舎町の「史跡博物館」や「サッカー練習場」など「ポケストップ」に指定された場所には、常に若者グループや親子連れの姿がありました。こうなると、スマホゲームというカテゴリを超えた社会現象になっていると言えるでしょう。
【参考記事】ポケモンGOは大丈夫? 歩きスマホをやめたくなる5つの裁判例
しかし「ポケモン発祥の地」である日本でのリリースは遅れています。これは日本が「巨大市場」ではあるが「最大市場ではない」ことや、社会習慣や法制などの障壁があるために「最初にリリースできない」ことなどが理由としてあるようです。そうなると「2番目以降」ということになりますが、リリースへの環境づくりに時間がかかっているうちに、世界各国で予想以上の大ブームになってサーバ負荷の問題も出てきているのだと思います。
このように、日本のリリースの「遅れ」は構造的に仕方がないことです。iPhone の日本発売が1年遅れたことに比べれば、今回の遅れは数週間単位の短いものでしょう。
ちなみに、先行して利用が始まっているマーケットでは、いくつかの決まったパターンのトラブル事例が報告されています。日本でもリリースを前にして、例えば多くの教育委員会では夏休みを迎える子どもたちに注意を喚起しているようです。また、政府の内閣セキュリティセンター(NISC)は20日、ゲーム時の注意事項をまとめて発表しています。
一つ、問題提起しておきたいのは、このポケモンGOは、バーチャルとリアルの「融合」をコンセプトにしていることです。この発想で作られたゲームは過去にもありますが、ここまで本格的に普及したのは初めてで、今回の成功によっては、以降同じようにバーチャルな世界とリアルな世界を融合したゲームや表現がブームになる可能性があります。
概念で言えば、「VR(仮想現実)」から、「AR(拡張現実)」に進むことになります。<参考>「ポケモンGOはARの発展にとって野球で言えば2回表(「フォーブス」記事)」
そのインパクトは非常に大きく、ビジネスとしての可能性も大きいと思います。ですが、このARというカルチャーについて言えば、日本ではまだ根付いていません。これを育てていくには、政府の注意喚起のように利用者に配慮を求めることに加えて、「使わない人」つまり利用者以外の人々への理解を広めることも必要だと思います。
その際の問題として、3点指摘したいと思います。
1つは「歩きスマホ」問題です。このゲームではグーグルの地図情報とGPSを使い、現実の地図と同じような地形を画面上に表示して、そこにポケモンがいたり、「ポケストップ」や「ジム」といった拠点があったりします。ですからゲームのプレイ中は、スマホの画面を見ながら歩きまわることになります。
この行動は、プレイヤーにとっては「地図」に従って実際の地形を意識して動いているのだし、周囲への注意は払っているという自覚があると思います。また、実際にポケモンのいる場所に来ると、地図ではなくスマホ背面のメインカメラがリアルタイムで撮影した「目の前の風景」の映像の中にポケモンが出てきますから、プレイヤーとしては画面を通じて「ちゃんと前を見ている」という自覚が強まります。
ですが、こうした一連の動作は、周囲から見れば「違法な歩きスマホ」だという理解をされる可能性があります。「歩きスマホに見えてしまう」ことについては利用者側での対策には限界があります。ですから、この点について「使わない人」の理解を促すことと、トラブルの件数を抑制する工夫が必要と思います。
【参考記事】韓国で唯一ポケモンGOがプレイできる町に観光ブーム
2点目は、とにかくポケモンのいる「現場」などでは背面カメラを使って、リアルな世界との融合が図られるわけですが、これも周囲からすれば他に人がいるのに写真や動画を勝手に撮影しているという誤解を受ける可能性があります。この点も、理解を広めてトラブルの発生を減らす努力は必要でしょう。
3点目は、記念碑や博物館など「公共の場所」が「ポケストップ」に指定されることが多いことです。公共の場所であれば、一般の人が接近することに抵抗はないだろうという共通理解でそのように設定されているのでしょうが、この点で日本のカルチャーは少々違っています。本来の目的以外の人が施設等に来ることへの抵抗が出てくる可能性があります。
これらの3つの問題というのは、こうした「拡張現実(AR)」という新しいエンターテイメントを社会的に受容していくプロセスにほかなりません。現時点では、スマホ画面での運用が中心ですが、すぐ先にはウェアラブル端末を利用した展開が待っています。そこに前進していくためにも、とりあえず「スマホによるポケモンGO」リリースは成功させなくてはならないでしょう。
ここへ来てイギリス「EU離脱」絡みの円安も一段落し、日本への来日観光客の数は依然として記録的なペースで増加しています。このような流れの中でポケモンGOのリリース後は、多くの海外からの旅行者が「ポケモンの本家である日本には色々なポケモンがいるに違いない」という期待感を持ってやってくることが予想されます。
株式会社ポケモンや任天堂など日本側の「ポケモンGO」スタッフは、そうしたインバウンドのプレイヤーに対して「期待を上回るサプライズ」を演出するアイディアを持っているのではないでしょうか。
海外からの利用者が「日本に来て良かった」と思えるようにするためにも、日本でのリリースは成功させなければならないでしょう。その鍵は、「使わない人」にも理解を促し、「拡張現実(AR)」という概念の理解をひろめることでもあると思います。
今月6日にアメリカで「ポケモンGO」がリリースされてから、すでに2週間が経ちました。特に11日の週に入ってからのSNSでの拡散は猛烈で、この週の時点で配信数が3000万という報道もあります。その後の週末になると、テロや大統領選のニュースを押しのけて、ちまたの話題はポケモンGO一色という感じになりました。
ニューヨークなど大都市での熱狂ぶりも相当だったようですが、私の住んでいるニュージャージーの田舎でも、大学町プリンストンの商店街にはスマホを「かざして」歩く「一目でそれと分かるグループ」がウヨウヨしていましたし、普段なら誰も見向きもしない田舎町の「史跡博物館」や「サッカー練習場」など「ポケストップ」に指定された場所には、常に若者グループや親子連れの姿がありました。こうなると、スマホゲームというカテゴリを超えた社会現象になっていると言えるでしょう。
【参考記事】ポケモンGOは大丈夫? 歩きスマホをやめたくなる5つの裁判例
しかし「ポケモン発祥の地」である日本でのリリースは遅れています。これは日本が「巨大市場」ではあるが「最大市場ではない」ことや、社会習慣や法制などの障壁があるために「最初にリリースできない」ことなどが理由としてあるようです。そうなると「2番目以降」ということになりますが、リリースへの環境づくりに時間がかかっているうちに、世界各国で予想以上の大ブームになってサーバ負荷の問題も出てきているのだと思います。
このように、日本のリリースの「遅れ」は構造的に仕方がないことです。iPhone の日本発売が1年遅れたことに比べれば、今回の遅れは数週間単位の短いものでしょう。
ちなみに、先行して利用が始まっているマーケットでは、いくつかの決まったパターンのトラブル事例が報告されています。日本でもリリースを前にして、例えば多くの教育委員会では夏休みを迎える子どもたちに注意を喚起しているようです。また、政府の内閣セキュリティセンター(NISC)は20日、ゲーム時の注意事項をまとめて発表しています。
一つ、問題提起しておきたいのは、このポケモンGOは、バーチャルとリアルの「融合」をコンセプトにしていることです。この発想で作られたゲームは過去にもありますが、ここまで本格的に普及したのは初めてで、今回の成功によっては、以降同じようにバーチャルな世界とリアルな世界を融合したゲームや表現がブームになる可能性があります。
概念で言えば、「VR(仮想現実)」から、「AR(拡張現実)」に進むことになります。<参考>「ポケモンGOはARの発展にとって野球で言えば2回表(「フォーブス」記事)」
そのインパクトは非常に大きく、ビジネスとしての可能性も大きいと思います。ですが、このARというカルチャーについて言えば、日本ではまだ根付いていません。これを育てていくには、政府の注意喚起のように利用者に配慮を求めることに加えて、「使わない人」つまり利用者以外の人々への理解を広めることも必要だと思います。
その際の問題として、3点指摘したいと思います。
1つは「歩きスマホ」問題です。このゲームではグーグルの地図情報とGPSを使い、現実の地図と同じような地形を画面上に表示して、そこにポケモンがいたり、「ポケストップ」や「ジム」といった拠点があったりします。ですからゲームのプレイ中は、スマホの画面を見ながら歩きまわることになります。
この行動は、プレイヤーにとっては「地図」に従って実際の地形を意識して動いているのだし、周囲への注意は払っているという自覚があると思います。また、実際にポケモンのいる場所に来ると、地図ではなくスマホ背面のメインカメラがリアルタイムで撮影した「目の前の風景」の映像の中にポケモンが出てきますから、プレイヤーとしては画面を通じて「ちゃんと前を見ている」という自覚が強まります。
ですが、こうした一連の動作は、周囲から見れば「違法な歩きスマホ」だという理解をされる可能性があります。「歩きスマホに見えてしまう」ことについては利用者側での対策には限界があります。ですから、この点について「使わない人」の理解を促すことと、トラブルの件数を抑制する工夫が必要と思います。
【参考記事】韓国で唯一ポケモンGOがプレイできる町に観光ブーム
2点目は、とにかくポケモンのいる「現場」などでは背面カメラを使って、リアルな世界との融合が図られるわけですが、これも周囲からすれば他に人がいるのに写真や動画を勝手に撮影しているという誤解を受ける可能性があります。この点も、理解を広めてトラブルの発生を減らす努力は必要でしょう。
3点目は、記念碑や博物館など「公共の場所」が「ポケストップ」に指定されることが多いことです。公共の場所であれば、一般の人が接近することに抵抗はないだろうという共通理解でそのように設定されているのでしょうが、この点で日本のカルチャーは少々違っています。本来の目的以外の人が施設等に来ることへの抵抗が出てくる可能性があります。
これらの3つの問題というのは、こうした「拡張現実(AR)」という新しいエンターテイメントを社会的に受容していくプロセスにほかなりません。現時点では、スマホ画面での運用が中心ですが、すぐ先にはウェアラブル端末を利用した展開が待っています。そこに前進していくためにも、とりあえず「スマホによるポケモンGO」リリースは成功させなくてはならないでしょう。
ここへ来てイギリス「EU離脱」絡みの円安も一段落し、日本への来日観光客の数は依然として記録的なペースで増加しています。このような流れの中でポケモンGOのリリース後は、多くの海外からの旅行者が「ポケモンの本家である日本には色々なポケモンがいるに違いない」という期待感を持ってやってくることが予想されます。
株式会社ポケモンや任天堂など日本側の「ポケモンGO」スタッフは、そうしたインバウンドのプレイヤーに対して「期待を上回るサプライズ」を演出するアイディアを持っているのではないでしょうか。
海外からの利用者が「日本に来て良かった」と思えるようにするためにも、日本でのリリースは成功させなければならないでしょう。その鍵は、「使わない人」にも理解を促し、「拡張現実(AR)」という概念の理解をひろめることでもあると思います。