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【写真特集】人間と自然が再びつながるビル緑化

ニューズウィーク日本版 2016年8月19日 17時0分

<都市部の建築の屋根や壁に自然の要素を組み入れることが最近のトレンドになってきている。アメリカなどでも屋上緑化は新しい景観として存在感を見せ始めている>

 技術の進歩は自然に対抗するものと、長らく考えられてきた。照明でも冷蔵庫でもエレベーターでも、開発の原動力は自然の限界を乗り越え、自然に打ち勝つこと。コンクリートや鉄、ガラスを使った建築は、人間と自然の分離に美しさを見いだした。

 しかしこれと反対に、近年では建築物の屋根や壁に自然の要素を組み入れることが1つの潮流になってきた。アメリカなどでも屋上の緑化は新たな景観として存在感を見せ始めている。

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 写真家ブラッド・テムキンは、各地に広がるそんな緑化の光景をカメラに収めた。見えてくるのは環境に対する人々の関心と、再び自然とつながりたいという欲求だ。

 そこからは秩序と普遍性、自然への支配欲に駆られた人間の介入といった、より大きな意味も伝わってくる。同時に、ディストピア的なムードも感じられるだろう。アスファルトの裂け目から出てきた雑草、人間が地球を立ち去った後の将来の廃墟の叫びといったイメージだ。

 テムキンは、建築表現の大きな変化を見事に捉えたと言える。それは自然と人間が同じくらい寄与できる芸術。建築物は人間と自然との対立から生まれるという過去の伝統とは一線を画している。


シカゴ市庁舎(シカゴ、10年5月)


111サウスワッカー・ビル(シカゴ、10年10月)

ドレクセル大学ミレニアムホール(フィラデルフィア、11年9月)


ドイツ電力大手EnBW社のビル(ドイツ・シュツットガルト、15年3月)


キリスト友会(クエーカー)のフレンズセンター(フィラデルフィア、11年9月)


フォード社のルージュ工場(ミシガン州ディアボーン、11年8月)

撮影:ブラッド・テムキン
1956年アメリカ生まれ。人為的な影響を受けた風景をテーマに撮影を続け、作品は主にアメリカの美術館に所蔵されている。シカゴのコロンビア・カレッジなどで写真を教えている。本作は写真集『ルーフトップ』(米ラディウス・ブック刊)からの抜粋

Photographs by Brad Temkin

<本誌2016年7月12日号掲載>

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Photographs by BRAD TEMKIN

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