<今から34年後、日本は高齢者、非就業者に人口が偏る「逆ピラミッド型」の超高齢化社会を迎える。そこで求められるのは、これまでの規範にとらわれずに、高齢者や女性の就労を推進する社会変革だ>
先日、2015年に実施された「国勢調査」の速報集計結果が公表された。それによると現在の日本の人口は1億2711万人で、年少人口(15歳未満)の比率は12.7%、高齢人口(65歳以上)の比率は26.7%となっている。今の日本では、子どもよりも高齢者のほうが多い。
日本で最初の「国勢調査」が実施された1920(大正9)年には、年少人口は36.5%、高齢人口は5.3%だった。およそ100年前の人口は、下が厚く上が細い「ピラミッド型」だったが、現在は中高年層の部分が膨らんだ「つぼ型」になっている。
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これは少子高齢化が進んだためだが、今後この傾向はますます進行し、2050年の人口ピラミッドは政府統計によって<図1>のようになると予測されている。
つぼ型を通り越して、下が薄く上が厚い「逆ピラミッド型」になっている。年少人口は1割強にまで減り、高齢人口が4割近くを占める。まさに少子高齢化が極限まで進んだ社会で、グラフにしてみると大変にインパクトがある。
社会は構成する人々が働くことによって成り立つが、今の就業率が変わらないとすると、「就業者2:非就業者3」の比率になる。現在ではちょうど半々くらいだが、近未来では働かない人(非就業者)のほうが多くなる。
これはあくまでも現在の状況を未来に当てはめた場合の予測で、未来社会では高齢者の就業率は高まるだろうし、外国人労働者(移民)や、おそらくはAIロボットの参入も見込める。事態はまた違ったものになるかもしれない。
2050年の日本の人口ピラミッドは<図1>のようになると予測されるが、世界全体の中での位置はどうなるか。横軸に年少人口率、縦軸に高齢人口率の予測値をとった座標上に、200の国を配置すると<図2>のようになる。
左上にあるほど年少人口が少なく高齢人口が多い、すなわち少子高齢化が進んだ社会ということになる。
グラフ中央を右上がりに走る斜線は均等線で、このラインより上に位置している場合、子どもより高齢者が多いことを意味する。2050年では、このような社会が多くなる。日本やドイツは今もそうだが、将来、主要国は軒並みこのラインを超えると予測される。
日本はその中でもトップに位置し、次いで韓国、ドイツと続く。グラフに国名は記していないが、日本と韓国の周辺にはイタリア、スペイン、ギリシャなど南欧の国々が位置している。
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高齢者がマジョリティーの社会が多くなるが、その一方でこの頃には、「支えられる」存在から「支える」存在へと高齢者の社会的役割の変革も進んでいるだろう。老化防止薬の開発など、医療技術の進歩によって、高齢者の就労は今より容易になると想像される。
少子高齢化が進む未来に関しては悲観的な予測が多いが、それでは生産的ではない。技術革新に期待するのは楽観に過ぎるが、考えなければならないことは年齢や性別による社会的役割の規範を撤廃し、人々が多様なスタイルで社会に貢献できるシステムを構築することだ。問題が深刻な日本では、なおのことその必要性は高い。
今後の人口動態は、教育システムにも変化を迫るだろう。やせ細る子ども世代にばかり資源を投入するのではなく、成人層にもそれを振り向けないといけない。教育期と仕事期(引退期)の間を往来できる「リカレント教育」の普及が望まれる。それは、「生涯学習社会」という時代のニーズにも合致している。
<資料:国立社会保障・人口問題研究所『将来推計人口』(2012年1月)
United Nations「The 2015 Revision of World Population Prospects」>
≪筆者の記事一覧はこちら≫
舞田敏彦(教育社会学者)
先日、2015年に実施された「国勢調査」の速報集計結果が公表された。それによると現在の日本の人口は1億2711万人で、年少人口(15歳未満)の比率は12.7%、高齢人口(65歳以上)の比率は26.7%となっている。今の日本では、子どもよりも高齢者のほうが多い。
日本で最初の「国勢調査」が実施された1920(大正9)年には、年少人口は36.5%、高齢人口は5.3%だった。およそ100年前の人口は、下が厚く上が細い「ピラミッド型」だったが、現在は中高年層の部分が膨らんだ「つぼ型」になっている。
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これは少子高齢化が進んだためだが、今後この傾向はますます進行し、2050年の人口ピラミッドは政府統計によって<図1>のようになると予測されている。
つぼ型を通り越して、下が薄く上が厚い「逆ピラミッド型」になっている。年少人口は1割強にまで減り、高齢人口が4割近くを占める。まさに少子高齢化が極限まで進んだ社会で、グラフにしてみると大変にインパクトがある。
社会は構成する人々が働くことによって成り立つが、今の就業率が変わらないとすると、「就業者2:非就業者3」の比率になる。現在ではちょうど半々くらいだが、近未来では働かない人(非就業者)のほうが多くなる。
これはあくまでも現在の状況を未来に当てはめた場合の予測で、未来社会では高齢者の就業率は高まるだろうし、外国人労働者(移民)や、おそらくはAIロボットの参入も見込める。事態はまた違ったものになるかもしれない。
2050年の日本の人口ピラミッドは<図1>のようになると予測されるが、世界全体の中での位置はどうなるか。横軸に年少人口率、縦軸に高齢人口率の予測値をとった座標上に、200の国を配置すると<図2>のようになる。
左上にあるほど年少人口が少なく高齢人口が多い、すなわち少子高齢化が進んだ社会ということになる。
グラフ中央を右上がりに走る斜線は均等線で、このラインより上に位置している場合、子どもより高齢者が多いことを意味する。2050年では、このような社会が多くなる。日本やドイツは今もそうだが、将来、主要国は軒並みこのラインを超えると予測される。
日本はその中でもトップに位置し、次いで韓国、ドイツと続く。グラフに国名は記していないが、日本と韓国の周辺にはイタリア、スペイン、ギリシャなど南欧の国々が位置している。
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高齢者がマジョリティーの社会が多くなるが、その一方でこの頃には、「支えられる」存在から「支える」存在へと高齢者の社会的役割の変革も進んでいるだろう。老化防止薬の開発など、医療技術の進歩によって、高齢者の就労は今より容易になると想像される。
少子高齢化が進む未来に関しては悲観的な予測が多いが、それでは生産的ではない。技術革新に期待するのは楽観に過ぎるが、考えなければならないことは年齢や性別による社会的役割の規範を撤廃し、人々が多様なスタイルで社会に貢献できるシステムを構築することだ。問題が深刻な日本では、なおのことその必要性は高い。
今後の人口動態は、教育システムにも変化を迫るだろう。やせ細る子ども世代にばかり資源を投入するのではなく、成人層にもそれを振り向けないといけない。教育期と仕事期(引退期)の間を往来できる「リカレント教育」の普及が望まれる。それは、「生涯学習社会」という時代のニーズにも合致している。
<資料:国立社会保障・人口問題研究所『将来推計人口』(2012年1月)
United Nations「The 2015 Revision of World Population Prospects」>
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舞田敏彦(教育社会学者)