<アメリカのテレビ局のリオ五輪中継は、露骨な「アメリカ中心」編成。放映権の関係等でこれは日本も同様だが、4年後の東京五輪では、外国から来た観戦客が自国選手の活躍を映像で視聴できるように配慮できないのか>(閉会式に登場したマリオに扮した安倍首相)
リオ五輪は無事に終わりました。閉会式は米NBCのプライムタイム放映で見ていましたが、「東京2020」のPVと、安倍首相のマリオは大変に好評でした。特にマリオは大受けでしたが、予告編でここまでやってしまうと実際の2020年の開会式でネタが尽きないか、個人的にはちょっと心配になりました。
ところで、アメリカで五輪の中継を見ると、色々と困難が伴います。と言うのは、NBC系列が完全に独占権を持ち、「圧倒的にアメリカ選手中心の編集」になっているからです。
この点では、北京五輪の頃までは「ドラマ性のショーアップ」という演出の方針があったようで、アメリカの選手が有望な種目に関しては、ライバルになる外国の選手も熱心に取材して、「生い立ちや苦労話」などの感動エピソードを入れていたように思います。結果的にアメリカが勝ったにしても、ライバルに関する情報量も提供しているので、より勝負の妙味が出てくるという演出でした。
【参考記事】五輪開催コストは当初予算の「5割増し」が平均額
ところが、リーマン・ショック以降は「放映権料だけでアップアップ」なのか、そうした「ライバルの感動エピソード」はなくなり、特に今回は「露骨なまでにアメリカ中心」になっていました。リアルタイム中継はネットだけにして、「ネタバレ」を極端に抑え、プライムタイムの総集編で視聴率を稼ぐという宿命が課せられている中で、どうしても自国中心の構成になったようです。
ですから、NBCの地上波だけを見ていると、ほとんど日本選手は映らないことになってしまいます。
アメリカでも日本発の「TVジャパン」という衛星局が見られるのですが、こちらはどうかというと、アナウンスや解説をつけた日本選手の活躍の映像どころか、ニュース枠の中での五輪競技の扱いも基本的にダメということになっています。
つまり、日本で高視聴率を取っている中継映像は一切ダメで、NHKの河野憲治さんがやっている「ニュースウォッチ9」なども、五輪期間中は「リアルタイム放映」ができなくなり「一時間遅れ」となって、しかも五輪に関するニュースは全部カットという編集で放送されるのです。お好み焼きで言えば、具材の肉や海鮮を取り除いたものを食べさせられるような趣向で、まったくの興ざめです。
もちろん、NHKを恨んでもどうしようもなく、とにかく五輪の放映権というのは「日本国内限定」でしか買っていないので、他国では流せません。これは予選段階からそうで、少しでも五輪に関連したニュースになると、まるで検閲でも受けたように静止画になるのです。
そんなわけで、私は五輪の放映権というのは、ネットも含めて「世界に広がったその国のサポーター」には、「その国の言語でその国の解説をつけた中継を見る権利」を広範に認めるべきだと思っています。ですが、それはまた別の機会に議論するとして、大変に気になるのは2020年の東京五輪の応援に来る外国人観戦客が「自分がチケットを買っていない試合をテレビやストリーミングで見られるのか?」という問題です。
もちろん、ホテルにしても「民泊」にしても一応テレビはあるでしょう。ですが、そのテレビがやっている五輪の中継映像は「日本語で、日本選手ばかりを応援した」編成になっているはずです。
例えば、ブラジルからの観客が「ポルトガル語で、ブラジル選手にフォーカスした中継映像を見たい」と思っても、そんなものはないし、ネットのストリーミングに関しても、自国のポルトガル語解説のついたサイトへのアクセスは「地域」で遮断されて無理なのではないかと思います。
【参考記事】「ドーピング」に首まで浸かった中国という国家
例えば英語圏から来た観光客が、五輪期間中に多くの競技の中継映像を見たいと思っても、自国のストリーミングにはアクセスできず、日本のローカルの中継では日本人選手だけがクローズアップされているという「不便」を感じることになるでしょう。
これには五輪放映権という巨額なカネが絡む難しさがあり、またすでに契約の概要は締結されていると思うので、出来ることは限られていると思います。ですが、何らかの「おもてなし」ができないものでしょうか。
例えば、少なくとも英語で簡単な解説のついた「来日観戦客用」のライブ+アーカイブのストリーミング映像提供サイトを、日本国内でアクセス可能にしておくとか、そこに世界各国のアナウンス音声が引っ張ってこられる仕組みを作るとか、何か工夫はできないでしょうか。
このままでは、せっかく高いチケットを買って東京に観戦に来ても、自分が会場で観戦した競技以外は、日本の中継映像をホテルのテレビで見るぐらいしかできないわけで、その他は情報としてネットで順位やタイムの記録を見る、ニュースのエピソードとして新聞的な感覚で読んで知る「だけ」になりかねません。
難しさがあるのは分かりますが、この現状は改善するべきだと思います。
リオ五輪は無事に終わりました。閉会式は米NBCのプライムタイム放映で見ていましたが、「東京2020」のPVと、安倍首相のマリオは大変に好評でした。特にマリオは大受けでしたが、予告編でここまでやってしまうと実際の2020年の開会式でネタが尽きないか、個人的にはちょっと心配になりました。
ところで、アメリカで五輪の中継を見ると、色々と困難が伴います。と言うのは、NBC系列が完全に独占権を持ち、「圧倒的にアメリカ選手中心の編集」になっているからです。
この点では、北京五輪の頃までは「ドラマ性のショーアップ」という演出の方針があったようで、アメリカの選手が有望な種目に関しては、ライバルになる外国の選手も熱心に取材して、「生い立ちや苦労話」などの感動エピソードを入れていたように思います。結果的にアメリカが勝ったにしても、ライバルに関する情報量も提供しているので、より勝負の妙味が出てくるという演出でした。
【参考記事】五輪開催コストは当初予算の「5割増し」が平均額
ところが、リーマン・ショック以降は「放映権料だけでアップアップ」なのか、そうした「ライバルの感動エピソード」はなくなり、特に今回は「露骨なまでにアメリカ中心」になっていました。リアルタイム中継はネットだけにして、「ネタバレ」を極端に抑え、プライムタイムの総集編で視聴率を稼ぐという宿命が課せられている中で、どうしても自国中心の構成になったようです。
ですから、NBCの地上波だけを見ていると、ほとんど日本選手は映らないことになってしまいます。
アメリカでも日本発の「TVジャパン」という衛星局が見られるのですが、こちらはどうかというと、アナウンスや解説をつけた日本選手の活躍の映像どころか、ニュース枠の中での五輪競技の扱いも基本的にダメということになっています。
つまり、日本で高視聴率を取っている中継映像は一切ダメで、NHKの河野憲治さんがやっている「ニュースウォッチ9」なども、五輪期間中は「リアルタイム放映」ができなくなり「一時間遅れ」となって、しかも五輪に関するニュースは全部カットという編集で放送されるのです。お好み焼きで言えば、具材の肉や海鮮を取り除いたものを食べさせられるような趣向で、まったくの興ざめです。
もちろん、NHKを恨んでもどうしようもなく、とにかく五輪の放映権というのは「日本国内限定」でしか買っていないので、他国では流せません。これは予選段階からそうで、少しでも五輪に関連したニュースになると、まるで検閲でも受けたように静止画になるのです。
そんなわけで、私は五輪の放映権というのは、ネットも含めて「世界に広がったその国のサポーター」には、「その国の言語でその国の解説をつけた中継を見る権利」を広範に認めるべきだと思っています。ですが、それはまた別の機会に議論するとして、大変に気になるのは2020年の東京五輪の応援に来る外国人観戦客が「自分がチケットを買っていない試合をテレビやストリーミングで見られるのか?」という問題です。
もちろん、ホテルにしても「民泊」にしても一応テレビはあるでしょう。ですが、そのテレビがやっている五輪の中継映像は「日本語で、日本選手ばかりを応援した」編成になっているはずです。
例えば、ブラジルからの観客が「ポルトガル語で、ブラジル選手にフォーカスした中継映像を見たい」と思っても、そんなものはないし、ネットのストリーミングに関しても、自国のポルトガル語解説のついたサイトへのアクセスは「地域」で遮断されて無理なのではないかと思います。
【参考記事】「ドーピング」に首まで浸かった中国という国家
例えば英語圏から来た観光客が、五輪期間中に多くの競技の中継映像を見たいと思っても、自国のストリーミングにはアクセスできず、日本のローカルの中継では日本人選手だけがクローズアップされているという「不便」を感じることになるでしょう。
これには五輪放映権という巨額なカネが絡む難しさがあり、またすでに契約の概要は締結されていると思うので、出来ることは限られていると思います。ですが、何らかの「おもてなし」ができないものでしょうか。
例えば、少なくとも英語で簡単な解説のついた「来日観戦客用」のライブ+アーカイブのストリーミング映像提供サイトを、日本国内でアクセス可能にしておくとか、そこに世界各国のアナウンス音声が引っ張ってこられる仕組みを作るとか、何か工夫はできないでしょうか。
このままでは、せっかく高いチケットを買って東京に観戦に来ても、自分が会場で観戦した競技以外は、日本の中継映像をホテルのテレビで見るぐらいしかできないわけで、その他は情報としてネットで順位やタイムの記録を見る、ニュースのエピソードとして新聞的な感覚で読んで知る「だけ」になりかねません。
難しさがあるのは分かりますが、この現状は改善するべきだと思います。