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【写真特集】アフリカ野生動物の密猟と食肉売買の現実

ニューズウィーク日本版 2016年9月6日 10時45分

<野生動物の食用肉「ブッシュミート」や象牙の取引のために、今もアフリカでは保護対象の動物たちを標的にした密猟が続いている>

 無残に散らばった動物の骨。カメルーンの国立公園内で、密猟者に殺された3頭のゾウのものだ。先進国でこうした光景を目にすることはまずないが、アフリカ中部のチャドやカメルーンでは、希少な野生動物が密猟や違法な商取引の犠牲になることは現在進行形の危機だ。

 そもそも野生動物を狩ることは、多くのアフリカ諸国において文化的な習慣であり、伝統の一部として受け継がれてきたもの。残酷に感じる人もいるかもしれないが、野生動物の死体から得た食用の肉「ブッシュミート」も、現地の人々にとっては伝統的な食材と言える。

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 現在ではこうした国々でも、保護対象の動物の商取引は、法律で禁止されている。問題は、法律違反であっても黙認されている場合が少なくないことだ。

 実際には、カメルーンの都市部の市場でも、ブッシュミートを見つけることはできる。当局の監視の目を逃れるようにひっそりとだが、確かにサルや鳥など狩の獲物となった野生動物が売られている。



 地方に残る小規模な文化的習慣だった野生動物の肉の取引は、今や都市への人口流入とともに産業的な意味合いを持つようになった。さらに移民の増加に伴い、欧州各国でもブッシュミートの需要は高まっている。

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 欧州では、こうした取引が厳しく制限されてきた。だが現在では、フランスにはアフリカから毎年300トンもの野生動物の肉が持ち込まれている。しかも値段は、アフリカの市場に並ぶときの何倍にも跳ね上がる。

 もう1つの問題は、象牙の違法取引(1キロ当たり約700ユーロになる)が、両国に隣接するナイジェリアのテロ組織「ボコ・ハラム」の資金源になっている現実だ。金に目がくらむ者、象牙や野生動物を欲しがる人のエゴが、動物だけでなく人間の虐殺行為を後押ししている。

 現地の文化と先進国の消費者、さらにはテロ組織の思惑が入り乱れて複雑化する密猟の問題。根本的な解決は簡単ではないが、問題を放置することで危険にさらされるのは、野生動物だけではない。


チャドの国立公園内で、環境保護と密猟の監視を目的とする民兵組織に拘束されたスーダン人の密猟者


国立公園内でパトロールするカメルーン軍の特殊部隊

密猟や違法な象牙取引にボコ・ハラム対策まで担うカメルーン軍の特殊部隊


民家の庭で食用に調理されるサル


チャドの首都ヌジャメナのホテルでブッシュミートを食す客


密猟者から押収したワニの皮を見せるカメルーン政府の管理当局者

ヌジャメナの市場で売られているニシキヘビ革の靴と皮


パリのシャルル・ドゴール空港でこの日1日に押収されたブッシュミートは39キロに上った


カメルーンの港で欧州向けに密輸されそうになっていたところを押収され、動物園に寄贈されたオウム


パリのフランス国立自然史博物館に保管されている野生動物の剝製の中には、フランスの税関で押収されたものもある


撮影:ステファノ・デ・ルイージ
1964年、ドイツ・ケルン生まれのイタリア人ドキュメンタリー写真家。写真集に世界のポルノ産業を捉えた『ポルノランド』(テームズ&ハドソン社刊)、盲目の人々を追った『ブランコ』(トロリー・ブックス社刊)などがある。欧米の主要な雑誌やギャラリーで作品を発表している

Photographs by Stefano de Luigi-VII

<本誌2016年6月14日号掲載>

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Photographs by Stefano De Luigi

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