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北朝鮮核実験で見えてきた核弾頭量産化の悪夢

ニューズウィーク日本版 2016年9月15日 11時20分

<今回の核実験は政治的な示威行為以上の意味を持っている。金正恩の核開発は日韓を脅かすレベルにまで至っている>(写真は核実験を伝える報道を見つめるソウル市民)

 懲りない北朝鮮がまた暴挙に出た。1月に続いて今年2度目、通算で5度目の核実験を行ったのだ。

 爆発の規模については専門家の見方が分かれているが、少なくとも見解が一致しているのは、北朝鮮史上最大だということだ。実験は成功だったと言わざるを得ないが、その半面、水爆と見なすには規模が小さ過ぎる。

 では、今回の実験は何を意味するのか。北朝鮮当局の声明によれば、「戦略弾道ロケットに装着できるように標準化された核弾頭」の実験を実施したという。要するに、ミサイルに搭載できる核兵器の実験に成功したと言っているようだ。

 これまで国際社会は、北朝鮮の核実験やミサイル実験をかんしゃくの発作ないし政治的示威行為と見なしてきた。そうした性格がなくなったわけではない。核実験に先立って、中国でG20首脳会議が開催されている最中に中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられる発射実験を行ったのは偶然ではないだろう。

 しかし、今回の核実験は政治的なメッセージを発することだけが狙いではない。それは技術面の目的があって行われた。その目的とは、「標準化」された核弾頭の性能を確認することだ。

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「標準化」に成功したというのは、核弾頭の小型化と軽量化だけでなく、量産が可能になったという意味らしい。北朝鮮の声明でも、「核弾頭を自在に、必要なだけ生産できる」ようになったと述べている。

米本土が脅かされる日

 さまざまな推計によると、北朝鮮は40キロほどのプルトニウムを蓄えているとされる。この量のプルトニウムで、どれだけの核爆弾を製造できるのか。

 IAEA(国際原子力機関)によれば、核爆弾を1つ製造するのにプルトニウムが8キロ必要だとされる。だとすれば、北朝鮮は核爆弾を5つ持っている計算になる。しかし実際には、4キロあれば十分だ。つまり、北朝鮮は10個の核爆弾を製造できる可能性がある。



 さらに、北朝鮮は高濃縮ウランも蓄えている(保有量はほとんど明らかになっていない)。この意味するところは、北朝鮮がプルトニウム爆弾と高濃縮ウラン爆弾をいくつか持っているというだけの話ではない。

 プルトニウムと高濃縮ウランは、1つの核爆弾に混ぜて使うこともできる。この方法なら、プルトニウムの量が少なくて済む。さらに、水素同位体を用いることにより、爆弾の爆発力を高めることが可能だ。

 この場合、プルトニウムの量は2キロで足りる。プルトニウムを40キロ持っていれば、約20個の核爆弾を造れる。しかも、北朝鮮はプルトニウムの生産を続けており、プルトニウムの保有量はさらに増えていく。その上、高濃縮ウランだけを用いた核爆弾も製造できる。

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 北朝鮮は核実験を重ねている。通算5回の核実験というのはかなりの回数だし、北東部の核実験場で新たなトンネルを掘っていることを考えると、今後も実験を繰り返すつもりだろう。

 北朝鮮が擁している核兵器の規模がどれくらいかは分からないが、小規模とは決して言えない。少なくとも、核爆弾数発という程度ではない。

 北朝鮮の核戦力は、韓国と日本、それに東アジアに駐留する米軍に脅威を及ぼすレベルになっている。このまま放置すれば、金正恩(キム・ジョンウン)の核兵器はアメリカ本土をも脅かすようになり、やがては強力な水爆も保有するようになるだろう。

 それが現実になる日は、あなたが思っているより近い。

From Foreign Policy Magazine

[2016.9.20号掲載]
ジェフリー・ルイス(ミドルベリー国際大学院東アジア不拡散プログラム・ディレクター)

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