Infoseek 楽天

Snapchatのカメラ搭載サングラスは、グーグルグラスの二の舞になる?

ニューズウィーク日本版 2016年10月12日 17時30分

 写真共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」の開発元が9月24日、2つの重要な発表を行った。1つは、Snapchatアプリと連携する動画撮影用カメラを搭載したサングラス型デバイス「Spectacles(スペクタクルズ)」の近日発売。もう1つは、アプリ名と同じだった社名を「Snap Inc.」に変更したとの報告だ。

Spectaclesとはどんな製品か

 同社サイトのニュースページと製品の特設サイトの情報によると、Spectaclesはサングラスのフレーム右上にカメラを搭載。フレーム左上にはライトと撮影ボタンがあり、ボタンを押すと10秒から最長30秒の動画を撮影できる。撮影中はライトが点灯し、周囲に撮影していることを知らせる仕組みだ。




 Spectaclesは動画保存用のメモリも内蔵しているため、撮影時にスマートフォンを携帯している必要はない。スマートフォンのアプリとはBluetoothやWi-Fiで無線接続し、接続が確保されると保存済みの動画がアプリに転送される。

 面白いのは、動画が従来の四角いフチではなく、丸いフチの独自フォーマットで記録される点。この視野角115度の丸い動画により、スマートフォンをどんな向きに持っていても、フチが切れることなく全画面表示される仕掛けだ。

Snapchat just solved the portrait vs landscape video argument forever pic.twitter.com/iOsKeaeXkb— Owen Williams⚡️ (@ow) 2016年9月24日



 色は黒、コーラル(サンゴ色)、ティール(緑)の3色から選べる。価格は129.99ドルで、この秋に米国で売り出される見込みだ。

「グーグルグラス」の二の舞になる?

 このSpectaclesは、すでに多くのメディアやネットユーザーが指摘しているように、グーグルが2013年に開発者向けに発売した眼鏡型デバイス「グーグル・グラス」を連想させる。グーグルグラスは、1500ドルもの高価格や、プライバシー侵害の懸念などにより不評で、2015年1月に発売中止が決まった。



 米NEWSWEEKは、起業家のブライアン・ロメール氏によるSpectaclesとグーグルグラスの比較考察を掲載している。

googleのラリー・ペイジ(左)とSnapchatのエヴァン・スピーゲル(右)


・Spectaclesは......
問題を1つだけ解決:「たった今」の動画や写真を迅速に共有する。
個性的なサングラスを介して、自分が12〜24歳程度のSnapchatユーザー仲間だとアピールする。

・グーグルグラスは......
問題を1つも解決しない:初期ユーザーにとって、グラスに表示される通知はごく限られていたので、それ以外の通知を見るために、接続されたAndroidデバイスにアクセスする必要があった。時間の節約にならなかった。
グラスを装着すると、自分が過剰に「裕福」であり、ありがたくない呼び名「グラスホール」(Glassとassholeを合わせた造語で、"メガネ馬鹿"といった意味)の仲間だと示すことになった。


社名変更と「カメラ会社」

 長い目で見ると、2つめの社名変更の発表のほうが重要かもしれない。同社はニュースページの投稿で、「これまではSnapchatアプリが唯一の製品だったので、Snapchat Inc.という社名は合理的だった。今後はSpectaclesのような他の製品も開発していくので、それを示す社名が必要になった」と説明している。

 さらに興味深いことに、同社サイトのトップページで、「Snap Inc.はカメラ会社です。当社は、カメラを改革していくことにより、私たちの生活やコミュニケーションの方法を、更に素晴らしいものにできると確信しています」と宣言。この文章からは、今後はアプリよりも、革新的なカメラ関連製品の開発に注力していくことがうかがえる。

2017年テック界最大のIPOになるか

 Snapchatの特徴は、投稿した写真や動画が保存されず、10秒以内に消えてしまうこと(お化けのアイコンが「消える」機能を象徴している)。2011年にリリースされた当初はこの消える機能に対して否定的な見方もあったが、若い層に爆発的に普及したことで、近年はそうした比較的低い年齢層にリーチしたい企業のプロモーションに活用されるケースも増えてきた。

 Snapは今のところ未公開企業だが、これまでに何度か大型の資金調達を実施しており、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の記事によると、現在の企業価値は160億〜220億ドルだとみられるという。WSJの別の記事では、同社のIPOは早ければ来年3月にも実現し、企業価値はさらに250億ドルかそれ以上に跳ね上がる可能性もあると予想している。



高森郁哉

この記事の関連ニュース