<女性と50歳未満の若年層から校長が選ばれる比率を先進国で比較してみると、日本と韓国は他国に比べて顕著に低い。日韓ともに男性優位、年功序列の傾向がはっきり表れている>
教員にはさまざまな役職の階級があるが、そのトップは校長だ。校長は「校務をつかさどり、所属職員を監督する」ほか、職員会議を取り仕切るなど、大きな権限を与えられている。学校運営の成否は、校長のリーダーシップにかかっているといっても過言ではない。
その校長には、どんな人がなっているのか。筆者の高校時代までを振り返ると、朝礼でありがたい講話をしてくださったのは、いつも白髪の紳士だった。全国的に見ても、校長の多くは年輩の男性教員だろう。
【参考記事】日本の公務員は先進国で最も少なく、収入レベルは突出して高い
OECDの国際教員調査(TALIS 2013)のデータによると,日本の中学校校長の女性比率は6.1%となっている。中学校教員全体の女性比率(39.0%)と比べると著しく低い。女性が校長になれるチャンスは少ない、ということだ。
女性が校長になるチャンスは、前者を後者で割って0.16という数値で測られる。昇進のチャンスが男女で等しいならば1.0になるが、現実はそうではない。年齢でみると、50歳未満の若年層からの校長輩出率はわずか0.02だ(1.5%/69.1%=0.02)。
他国はどうだろうか。女性と若年層からの校長輩出率を主要国で比較すると、<表1>のようになる(ドイツはデータなし)。
日韓と欧米諸国の間に断絶が見られる。女性や若年層から校長が出にくいのは同じだが、日本と韓国はそれが顕著だ。
女性が校長になるチャンスは、日本が最も低い。対してスウェーデンは高く、ブラジルのようにわずかだが女性のほうが校長になりやすい社会もある。
韓国は若年の校長が皆無なので、輩出率はゼロとなっている。年齢を重視する儒教社会の性格が出ている。その反対はアメリカで、若手からの校長輩出率が最も高い。さすがは「チャンス」の国で、年齢に関係なく有能な教員はトップに昇格できるようだ。「校長試験の受験はまだ早い」などと、年齢を理由に引き止める日本とは違っている。
以上は7か国の比較だが、対象国全体の中に日本を位置付けてみよう。横軸に女性、縦軸に若年からの校長輩出率をとった座標上に、調査対象の35カ国を配置すると<図1>のようになる。
日本と韓国が大きく外れた位置にある。女性や若手がトップになりにくい社会の典型だ。男性優位、年功序列の風潮がはっきりと表れている。これは教員の世界に限ったことではない。
どんな集団であれ、成員の属性があまりに偏るのは好ましくない。多くの自治体に校長会の組織があり、教育政策の決定に影響力を有しているが、そのメンバーが高齢の男性だらけというのは考えものだろう。
【参考記事】理系人材が育たない日本の硬直した科学教育
日本社会の各分野で、指導者層の属性は多様化したほうがいい。こうした考えのもと、2020年までに各分野の指導者層の女性比率を3割にまで高める目標が政府によって掲げられ、アファマーティブ・アクションが取られている。
今回のデータをエビデンスにして、学校のトップの登用の在り方についても再考する必要があるのではないか。
<資料:OECD「TALIS 2013」>
≪筆者の記事一覧はこちら≫
舞田敏彦(教育社会学者)
教員にはさまざまな役職の階級があるが、そのトップは校長だ。校長は「校務をつかさどり、所属職員を監督する」ほか、職員会議を取り仕切るなど、大きな権限を与えられている。学校運営の成否は、校長のリーダーシップにかかっているといっても過言ではない。
その校長には、どんな人がなっているのか。筆者の高校時代までを振り返ると、朝礼でありがたい講話をしてくださったのは、いつも白髪の紳士だった。全国的に見ても、校長の多くは年輩の男性教員だろう。
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OECDの国際教員調査(TALIS 2013)のデータによると,日本の中学校校長の女性比率は6.1%となっている。中学校教員全体の女性比率(39.0%)と比べると著しく低い。女性が校長になれるチャンスは少ない、ということだ。
女性が校長になるチャンスは、前者を後者で割って0.16という数値で測られる。昇進のチャンスが男女で等しいならば1.0になるが、現実はそうではない。年齢でみると、50歳未満の若年層からの校長輩出率はわずか0.02だ(1.5%/69.1%=0.02)。
他国はどうだろうか。女性と若年層からの校長輩出率を主要国で比較すると、<表1>のようになる(ドイツはデータなし)。
日韓と欧米諸国の間に断絶が見られる。女性や若年層から校長が出にくいのは同じだが、日本と韓国はそれが顕著だ。
女性が校長になるチャンスは、日本が最も低い。対してスウェーデンは高く、ブラジルのようにわずかだが女性のほうが校長になりやすい社会もある。
韓国は若年の校長が皆無なので、輩出率はゼロとなっている。年齢を重視する儒教社会の性格が出ている。その反対はアメリカで、若手からの校長輩出率が最も高い。さすがは「チャンス」の国で、年齢に関係なく有能な教員はトップに昇格できるようだ。「校長試験の受験はまだ早い」などと、年齢を理由に引き止める日本とは違っている。
以上は7か国の比較だが、対象国全体の中に日本を位置付けてみよう。横軸に女性、縦軸に若年からの校長輩出率をとった座標上に、調査対象の35カ国を配置すると<図1>のようになる。
日本と韓国が大きく外れた位置にある。女性や若手がトップになりにくい社会の典型だ。男性優位、年功序列の風潮がはっきりと表れている。これは教員の世界に限ったことではない。
どんな集団であれ、成員の属性があまりに偏るのは好ましくない。多くの自治体に校長会の組織があり、教育政策の決定に影響力を有しているが、そのメンバーが高齢の男性だらけというのは考えものだろう。
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日本社会の各分野で、指導者層の属性は多様化したほうがいい。こうした考えのもと、2020年までに各分野の指導者層の女性比率を3割にまで高める目標が政府によって掲げられ、アファマーティブ・アクションが取られている。
今回のデータをエビデンスにして、学校のトップの登用の在り方についても再考する必要があるのではないか。
<資料:OECD「TALIS 2013」>
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舞田敏彦(教育社会学者)