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職場のあらゆる不幸の中心にあるのは「難しい人間関係」

ニューズウィーク日本版 2016年10月21日 15時57分

<レジリエンスは孤立していては獲得できない。不安定でストレスの多い時代を生き抜くための「打たれ強さ」の身につけ方(4)>

 ここ数年、ビジネスの世界で関心を集めている概念がある。「resilience(レジリエンス)」だ。日本語では「復活力」や「逆境力」、あるいは「折れない心」などと訳されるが、そのままカタカナで「レジリエンス」と表記されることも多い。

 いわば「打たれ強さ」とも言い換えられるが、レジリエンスは孤立していては獲得できない。「人間関係を頼ることもとても重要だ」と、イギリスのキャリア・ストラテジストであるジョン・リーズは言う。「レジリエントな人は、相互に信頼し、支え合える強固な関係を少なくとも数人とは結んでいるものである」

 とはいえ、人間関係は難しい。職場には何かしら人間関係の問題があるものだし、面と向かって仕事ぶりについて話したり、行動を改めるよう告げたりといった、部下や同僚との難しい話し合いの場も避けられない。

【参考記事】キャリアを左右する「職場プロフィール」とは何か

 リーズはこのたび、レジリエンスを習得・開発・強化する方法を伝えるべく、『何があっても打たれ強い自分をつくる 逆境力の秘密50』(関根光宏訳、CCCメディアハウス)を上梓した。50の項目にまとめられた実践的な1冊だ。

 ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第4回は「24 難しい関係にうまく対処する」より。人間関係を壊す要因とは何か、難しい話し合いにはいかにして臨むべきか。


『何があっても打たれ強い自分をつくる
 逆境力の秘密50』
 ジョン・リーズ 著
 関根光宏 訳
 CCCメディアハウス


※シリーズ第1回:レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた
※シリーズ第2回:成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと
※シリーズ第3回:管理職が陥る「自分なんて大したことない」症候群

◇ ◇ ◇

 誰もが、自分こそが職場で唯一良識を備えた有能な人間だと確信しているものだ。職場ではさまざまな形の不幸に遭遇するが、そうした不幸の中心に存在するのが、「難しい」人間関係である。「難しい」の意味をはっきりとさせよう。難しい話し合いとは、聞いていてつらい話し合いだ。誰かがあなたの仕事ぶりについて話したり、誰かに行動を改めるよう告げなければならなかったりする話し合いだ。月末報告書を頼んだだけなのだが、その要求が相手をいら立たせることがある。何を言っても批判のように受け取られ、何を聞いても脅しのように聞こえる状況に陥ってしまうこともある。気まずくなってしまった関係を放置するのは、賢明とは言えない。人間関係の問題にはすばやく対処しよう。必要ならアドバイスをもらい、常に先々のことを考えて、必要な話し合いに備えよう。

人間関係を壊す要因を見極める

 あなたの成功を阻むものは何だろうか? コーチングでは、この重要な質問によって、仕事の障害となる多くの要因を浮き彫りにできる。現代の職場で成功を阻む人的要因は、だいたい以下のようなものだ。

●陰口、中傷、サイロ思考
●コミュニケーションがうまくいっていない、または時間がかかる
●仕事上のチームにおける人間関係がよくない
●過度に心配性の上司が細かい点まで管理しようとしてくる
●管理職が首尾一貫した明確な目標を設定しない

 ここで重要な問題となるのは、人間関係における結束力の弱さがあなたの仕事の成果にどの程度の影響を及ぼすかという点だ。

 職場には、必ず人間関係の問題がいくつか存在する。成果の達成を阻む問題を見極めよう。次に、そうした問題について、あなたに何ができるのかを考えよう。周囲の人を通じて、あるいはあえて難しい話し合いに挑むことによってできることはないだろうか。



難しい話し合いの前には予行演習をする

 職場でいきなり難しい話し合いの場に立たされてしまったときは、なんとかしてしばらくその場を離れ、自分が何を言いたいのかを考えよう。「即答」してしまいたくなる衝動に駆られても、それは避けること。

 話し合いの予行演習は、どういう言葉を使うかまで綿密に考えてしっかりと行おう。「ジルの仕事ぶりについて本人に話そう」とか「マイクに解雇を予告しなければ」というように曖昧に考えるだけではいけない。何と言って話し合いを設定するか、どういう言葉で話を切り出すかということまで含め、実際に使う言葉に焦点を当てて考える必要がある。何も考えずに始めると、自己防衛的な反応を引き起こすだけだ。「君の仕事へのかかわり方には、少し問題を感じているんだ」などと切り出せば、対立モードになってしまう。だが「どうだい、新年を迎えた気分は?」といったところから始めれば、慎重に手応えを確かめながら話を進めていける。曖昧で真実を確かめようがない言い方(「偶然、耳にしたんだが」のような言い方)は避けよう。

何を必要としているかを相談する

 困難な課題を与えられて、それをやり遂げなければならなくなったときは、そのためには自分には何が必要かを時間をかけてまわりの人に伝えよう。非現実的な手段を求めろとか、困り果てた姿を見せろと言っているのではない。与えられた目的をどのように達成するかを考えろということだ。仕事をやり遂げるために必要なツールは何かを考えなければ、自らを失敗に追い込んでしまう。

 複雑な仕事で、やり終えるまでに数時間以上かかりそうであれば、きちんと見通しを立てるべきだろう。仕事に必要な時間を交渉し、ほかの仕事のうち当面どれを遅らせることができるかについて考え、それを周囲の人と申し合わせておくのも、仕事を引き受ける時点でできることの一つである。

 次に、仕事をやり遂げるには何が必要かを考えよう。これは、機器や人材などの直接的な手段が必要なこともあるだろうが、多くの場合、求められるスキルや知識をどのように獲得または開発するのかが重要になる。


『何があっても打たれ強い自分をつくる
 逆境力の秘密50』
 ジョン・リーズ 著
 関根光宏 訳
 CCCメディアハウス




ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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