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日本人の「自信がない」は嘘、原因は「感染」にあり!?

ニューズウィーク日本版 2016年11月2日 17時59分

<なぜ日本人と違い、外国人は自信満々なのか。自信を身につけるには一体どうすればいいのか――。『自信の秘密50』の著者によれば、そもそも自信は「もつ」とか「できる」とか、そういうものではない>

「日本人は自信がない」とよく言われる。対して海外の人々は、なぜあんなにも自信満々なのだろうか(なぜ政治経験がまったくない人が、世界一の超大国の大統領になれると思うのか?)。その自信は一体どこから湧いてくるのか? せめて、その何分の一かだけでも分けてもらえたら......。そう思っている人は多いだろう。

 だが、実は海外の人々も、日本人と同じように「もっと自信をもちたい」と悩んでいる。その証拠に、「自信の身につけ方」「もっと自分に自信をもつ方法」といった本は、世界中で数多く出版されている。イギリスで活躍するパフォーマンスコーチ、リチャード・ニュージェントの『どんなときも絶対折れない自分になる 自信の秘密50』(前田雅子訳、CCCメディアハウス)も、そのひとつだ。

 そもそも「自信」とは何なのか? よく「やっと自信ができた」とか「なかなか自信をもてない」といった言い方をするが、著者によると、自信とはそういうものではないらしい。だれもが自信をもっている。だから「自信がない」はずがなく、また「自信がありすぎる」ということもない。なぜなら自信とは、感情の状態であって、自分の外にあるものではないからだ。

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自信は「手に入れる」のではなく「引き出す」

 どんな人でも、ある特定の部分では自信をもっている。それと同時に、別の部分では自信を失う。たとえば、パソコンには自信があるが、英語力には自信がない。営業は得意だが、事務作業は苦手。見た目にはそこそこ自信をもっているけれど、会話下手なのが悩み......などなど。自分のすべてに自信がある人などいない(大統領候補としては自信たっぷりでも、ひょっとすると、妻としての自信は失っているかもしれない)。

 著者のクライアントには、英プレミアリーグで活躍する選手もいるそうだが、そんな彼らも、(サッカー以外の場面で)常に自信に満ち溢れた状態でいられるわけではない。地元のイベントで短いスピーチをすることになったら、急に自信を見失ってしまった選手もいたという。

 そうした、それぞれの場面における感情の状態が「自信がある・ない」の実体なのだと著者は言う。だから、「自信を身につける」ということは、より多くの自信を手に入れることではなく、自分の中にある自信を「いつでも自由に引き出せるようにする」こと。実力の有無に関係なく、必要に応じて「私は自信がある」という感情になれるようにすることだ。

 本書には、そうした「自信を引き出す」ためのテクニックが並んでいる。タイトルにあるとおり全50項目から構成されていて、「25 自信のある外見をつくる」「32 対立したときの自信」「35 就職活動における自信」「39 内向的な人の自信」など、かなり細かいテーマに分かれている。どんなときでも自信を引き出すには、それぞれの場面における自信の意味を理解しておく必要があるからだ。



 たとえば「27 自信のある決断をする」では、プレッシャーから解放されることが必要だとして、決断を下す前に時間をとることを勧めている。著者によれば、プロポーズするかどうかを決めるには1週間くらい間を空けたほうがいいそうだ。その時間で、リサーチしたり、だれかに相談したり、あるいは、いったん忘れてリフレッシュしたり。そうすれば、自信をもって決断できる。

「30 経済的な自信」という項目もある。お金持ちになりさえすれば自信満々になれる、と考えている人もいるかもしれないが、著者に言わせれば、それは逆ということになる。富が自信を生むのではなく、自信が富を生む。お金についてしっかりとした信念と戦略をもち、適切な行動をとっていれば、それが経済的な自信につながり、結果的に富を手にすることができるのだ。

 もちろん、これらすべてを実践しろというわけではなく、目次を見て、自分に必要な項目を拾い読みすればいい。そして、やれることから実践していけば、自信をもてる場面が増えていくことになる。

コメディアン曰く、ダメなところを真剣に考えない

 本の後半には、「38 自信のある起業家」や「41 自信のあるスピーカー」「44 自信のある教師」など、一見、特定の人にしか役に立ちそうにない項目が並んでいる。とくに「43 自信のあるコメディアン」は、一体どれくらいのニーズがあるのか、なぜわざわざ項目を設けたのか疑問に思えてくるほどだ。

 しかしながら、読んでみると「なるほど」と思わされる。たとえば起業家なら「ニッチを知る」「やらないことを明確にする」「バランスをうまくとる」という3つのテクニックが紹介されているが、たしかに、これらを実践できている起業家なら自信満々だろう。言い換えれば、こうした点をおろそかにしていることが自信のなさにつながる、ということではないだろうか。

 つまり、「落とし穴」を埋めておくことも、いつでも自信を引き出すための重要な鍵になるのだ。そして、このことは起業家だけに役立つアドバイスではない。

「43 自信のあるコメディアン」では、著者のニュージェントではなく、実際にコメディアンとして活躍していたこともある人物(たぶん、あまり有名ではない)が、この項目のコーチとなっている。そうした項目は他にもいくつかあって、そのため項目ごとに詳細なテクニックやアドバイスが紹介されている点は、本書の特徴と言えるかもしれない。

 そして、コメディアンの何が私たちに役に立つのかといえば――「人々を笑わせるためにステージに上がることほど自信を必要とするものはない。自分のことをとても面白い人だと期待している会場中の人を笑わせるのは、控えめにいってもぞっとする」(p.219)。たしかに。彼らのテクニックとは「OKじゃないけどOKになる(=OKじゃない状態になっても冷静でいる)」「ダメなところを真剣に考えない」など。なるほど。前者は、本来の能力とは切り離された自信を育てる秘訣であり、後者は、どんなときでも自信を見失わないためのヒントだ。

【参考記事】成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと



自信は感染する。自信のなさも感染する

 もうひとつ、この本の面白いところは、ほぼすべてのページに、古今東西の偉人・有名人の名言が載っている点だ。ページ下の欄外部分に、その項目に合った(と著者が判断した)発言が引用されている。定番のソクラテスや老子に始まり、ピーター・ドラッカーからドナルド・トランプ、さらには、くまのプーさんまで。これらを眺めていると、「もっと自信のある人間になりたい」という願望が人類共通の永遠のテーマであることがわかる。

「自信は感染する。自信のなさも感染する」
――ヴィンス・ロンバルディ[アメリカンフットボールコーチ](1 自信の本質/p.10)

「自分にはできると信じれば、半分は達成されている」
――セオドア・ルーズベルト[第26代米大統領](26 自信がある人を真似る/p.138)

「チャンスがノックしてこなければ、ドアを作ればいい」
――ミルトン・バール[俳優](50 自信を共有する/p.260)

 著者は、自信のなさを受け入れることが自信につながる、と述べている。自信に満ちた人というのは、自信がない部分について思い悩まない。なぜなら、「自信がない」もまた感情の状態にすぎないからだ。

 日本人に関して言えば、この「自信がない」を少々受け入れすぎているように思う。ロンバルディの言うように、それが感染しているような気さえする。だから、もっと「自信がある」部分に目を向けてもいいのではないだろうか。著者は「本物の自信とは謙虚なものだ」とも言っている。謙虚さを重んじ、傲慢になることを恐れる日本人には、それこそが最大のヒントになるのかもしれない。

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『どんなときも絶対折れない自分になる 自信の秘密50』
 リチャード・ニュージェント 著
 前田雅子 訳
 CCCメディアハウス



ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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