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朴大統領、弾劾も覚悟の居座り 韓国検察はチェ・スンシルらを起訴

ニューズウィーク日本版 2016年11月20日 20時28分

<今日午前、韓国検察がチェ・スンシル容疑者など3人を起訴した。検察は起訴状の中で容疑者らが「朴大統領と共謀」と指摘、被疑者として大統領を取り調べる意向を明らかにしたが、大統領側弁護人はこれを拒否。大統領府は国会による弾劾手続きを促すなど、朴大統領はいよいよ国民を無視して居座りを決めるようだ>

 NEWSIS1など韓国メディアが伝えたところでは、20日午前韓国検察が、一連の国政介入疑惑に関連して、チェスンシル容疑者ら3人を起訴、朴大統領が、相当部分で共謀関係にあると公訴状に名指しした。

 検察は朴大統領に対して「これまで確保された供述証拠、業務手帳、携帯電話の録音ファイルなど広範囲な証拠資料で、被告人チェ・スンシル、アン・ジョンボム、チョン・ホソンの複数の犯罪事実のうち、相当部分に共謀関係があったものと判断した」と述べた後、「憲法84条に規定された現職大統領特権のため、起訴できない」と話した。

 これを受けて、今日午後、朴大統領の弁護人は、検察の中間捜査結果の発表に強く反発し、対面取り調べ要求に応じないと明らかにした。ユ・ヨウンハ弁護士は「検察の客観性と公正性を信じるのは難しい」とし「直接取り調べの要請に一切応じず、中立的な特検捜査に備えたい」と述べた。

 また、大統領府も検察の発表に対して批判する反応を見せた。ジョン・ヨングク大統領府報道官は20日午後に報道陣に対して、「むしろ憲法上・法律上の大統領の責任の有無を明確に選別できる合法的手順に従って一日も早くこの議論が終結されることを願う」と述べた。事実上、国会の弾劾訴追手続きを促したものと見られる。「合法的手続きが弾劾を意味するのか」という質問にチョン報道官は、「言葉通り理解してほしい」と否定しなかった。

 これは国会で弾劾訴追案が議決されても、憲法裁判では勝算があるという大統領府の判断である。この日チョン報道官が「朴大統領は、今後も国政に疎かが生まれないように謙虚な姿勢で、すべての努力を尽くしていく」と朴大統領の国政遂行意志に変わりがないことを重ねて強調したのも、このような勝算があるからだろう。

 国会が朴大統領を弾劾訴追しても、憲法裁が、これを受け入れる公算は大きくないのが現実だ。韓国の憲法第65条によると、憲法裁で弾劾を決定するためには、裁判官6人以上の賛成がなければならない。しかし、現在の憲法裁判官9人のうち6人が、セヌリ党などの推薦を受けた保守系の裁判官である。2004年に故ノ・ムヒョン前大統領の弾劾を却下したことから分かるように、憲法裁は大統領弾劾要件を厳しく解釈する傾向がある。

 今後は、朴大統領側が対面取り調べにどうしても応じない場合、検察が強制捜査に踏み込むか、また朴大統領がこうした事態に対して国民への新たな談話を発表するか、さらに国会で与野党が協力して挙国一致内閣を立てて、朴大統領が権限を内閣に委譲するか、が、大きなポイントになりそうだ。

 北朝鮮のミサイル発射や、それに対抗するためのTHAADミサイル配備、そして鳥インフルエンザの発生など、さまざまな問題を抱えている韓国。本来は国政の停滞は許されない状況だが、現状ではレームダックとなった朴大統領がそのまま居座り続ける可能性が高く、内政、外交ともに動きが取れ状態が続きそうだ。


朴大統領の黒幕チェ・スンシルら起訴

 検察は20日、チェ容疑者を職権乱用権利行使妨害及び詐欺未遂、強要未遂などの疑いで起訴した。 チェ容疑者は、アン前首席とともに職権を乱用して大手企業を相手にミール財団、Kスポーツ財団の設立出資金774億ウォンを出資するよう強要した疑い。 検察調査の結果、企業は、チェ容疑者とアン前首席の要求に応じなければ各種の許認可や税務調査などで不利益になることを恐れて指示に従った。

 ミール財団の場合、企業と企業別出資分担金が決められて、募金額が300億ウォンから500億ウォンに急に増額された。財団の理事長などの主要役員は、全経連などの出資企業ではなく、チェ容疑者の推薦通りに決まったが、全経連で推薦したように議事録が書き換えられた。

 Kスポーツ財団も、アン前首席などの一方的な指示で出資、企業と全体の募金額などが決まり、議事録も虚偽の内容で作られた。 大企業を対象にミール、Kスポーツ財団に出資を強要したり、納品や人事などに影響力を行使した疑いも持たれている。 チェ容疑者とアン前首席は職権を乱用してロッテグループを相手にハナム総合運動施設の建設費用としてKスポーツ財団に70億ウォンを寄付するよう強要した疑いも受けている。

 チョン・ホソン元秘書官は2013年1月、朴槿恵政権発足直後から今年4月まで国政文書180件をチェ容疑者に渡した容疑で起訴された。検察捜査によると、チョン容疑者は、政府省庁と1)公共機関の高官人事案、2)国務会議と首席秘書官会議、大統領の談話の資料、3)政府省庁と大統領秘書室の報告書類、4)外交資料と大統領の海外歴訪関連資料など計180件の文書を電子メールなどを通じてチェ・スンシル容疑者に流出したことが明らかになった。 この中には事前に一般に公開されてはならない上級・次官級人事関連の検討資料など47件の公務上の秘密が含まれていた。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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