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愛犬とのキスは危険がいっぱい

ニューズウィーク日本版 2016年11月30日 10時0分

<愛犬や愛猫とのスキンシップは飼い主の大きな楽しみだが、犬の口や猫の爪は人間の健康に害を及ぼす微生物の温床だ>(写真:飼い主がペットから病気をうつされるケースは珍しくない)

 最近、ニューヨーク・タイムズ紙が一部の愛犬家の怒りを買ってしまった。ペットの犬に顔をなめさせるのをやめるべし、という記事を掲載したためだ。

 専門家の間では異論もあるようだが、同紙の記事は無視できないリスクに光を当てている。ペット好きの人にとってはショッキングな事実かもしれないが、飼い主がペットから病気をうつされるケースは実は珍しくないのだ。

 記事は、米ドレクセル大学医学大学院のネイランジャン・ナンディ助教のコメントを引用している。いわく、犬の口は微生物の温床であり、人間が犬とキスをすることは避けるべきだという。

 でも、犬の唾液には傷を癒やす成分が含まれていると聞いたことがあるけれど......。ナンディによれば、確かにそのとおり。ただし、犬の唾液が癒やせるのは、あくまでも犬の傷だ。犬の口の中で生きている微生物の一部はむしろ、人間の健康に害を及ぼすという。

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 犬から人間にうつる可能性がある病気は少なくない。特に感染例が多いのは、寄生虫やバクテリア、ウイルスが原因の消化器系の病気だ。

 ハートビル・ペット保険グループの獣医師メアリー・ベス・レイニンガーも、消化器系の病気の感染を防ぐために、犬の口との接触を避けるべきだと指摘する。

「犬はよく自分の肛門の周りをなめるので、唾液の中に寄生虫が含まれている場合がある。犬に子供の顔をなめさせていいかという問いにひとことで答えれば、ノーだ」と、レイニンガーは本誌への電子メールで書いた。

アレルギー症状の原因に

 消化器系以外の病気も感染する場合がある。「屋外に出た後のペットから人間にダニが飛び移って、皮膚や呼吸器のアレルギー症状を起こしたり、疥癬(かいせん)やライム病に感染したりした例を多数見てきた」と、医療情報サイト「サルドモビル・ドットコム」の創設者であるジョセフ・モスケラ医師は言う。

 ペットからの病気感染は、犬に限った問題ではない。猫にも注意したほうがいい。



 猫から人間に感染する病気の1つが「猫引っかき病」だ。猫に傷口をなめられたり、爪で引っかかれたり、かまれたりすることで感染するバクテリア感染症で、リンパ節が腫れ、発熱が続くなどの症状が出る。米疾病対策センター(CDC)の最近の報告によれば、患者は増加傾向にあるようだ。特に症例が多いのは、5~9歳の子供がいる家庭だという。

 CDCによれば、猫引っかき病はノミを媒介して猫に感染するため、最善の感染予防策は飼い猫のノミ駆除を怠らず、猫を家の外ではなく中で飼うことだという。猫と遊んだ後にしっかり手洗いを励行することも効果がある。

 いくらペットを愛しているといっても、病気のリスクに目を閉ざすのは賢明でない。ペットとの幸せな生活を送るためにも、感染症対策はお忘れなく。

[2016.11.29号掲載]
デーナ・ダビー

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