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ついていく上司を間違えて前途を断たれないようにするには?

ニューズウィーク日本版 2016年12月2日 15時45分

<組織内で本当に影響力を持っているのは誰か? それを見極めなければ、自分が影響力を身につけ成功することはできない。影響力の50のノウハウのひとつ、「影響力のある人とつき合う」とは?>

 米タイム誌の「世界で最も影響力がある100人」にはそうそうたる顔ぶれが並んでいる。だが、そもそも影響力とは何だろうか。「他に働きかけ、考えや動きを変えさせるような力」(デジタル大辞泉より)――確かにそうなのだが、実感しづらく、縁遠いものに感じる人もいるかもしれない。

 しかし、影響力は何も、有名人や政治家だけが持っているものではない。実際、ビジネスコンサルタントのスティーブン・ピアスによれば、仕事でふさわしい給与をもらえるかどうか、会議での発言がまともに取り上げられるかどうかも、すべて影響力次第なのだ。

 ピアスは世界各地の有力者に取材し、新刊『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる 影響力の秘密50』(服部真琴訳、CCCメディアハウス)で、影響力を獲得する50のノウハウを提供している。

 ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第4回は「39 影響力のある人とつき合う」より。どうしたら、おべっかや汚い手段に頼ることなく影響力のある人々と知り合えるか。そして、間違った人を支持して前途を断たれるような事態を防ぐにはどうすればいいのだろうか。


『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる
 影響力の秘密50』
 スティーブン・ピアス 著
 服部真琴 訳
 CCCメディアハウス


※シリーズ第1回:給料が安いと感じているあなたは、おそらく影響力が足りない
※シリーズ第2回:影響力を身につけるには有名人に「便乗」すればいい
※シリーズ第3回:自分の代わりに自分を宣伝してくれる人を育てよ

◇ ◇ ◇

39 影響力のある人とつき合う

 影響力は伝染する。熱源に近づけば、それだけで体が温かくなるように、本当に影響力のある人とかかわれば、その威光のいくらかが自分のものになる。彼らの洞察や経験や人間関係にアクセスできるようになり、「内輪グループ」の一員となったあなたに対する見方も変わる。影響力はある程度まで、誰とつき合うかで決まるのだ。

 別の言い方をすれば、権威を持つ立場(高い地位や肩書きや名声)でなければ、あるいはそんな立場の人に話を聞いてもらえる者でなければ、影響力を持つことは困難だ。

 どうしたら、おべっかや汚い手段に頼ることなく、影響力のある人々と知り合えるか。最初のステップは、本当の影響力(または潜在的影響力)を持っている人物は誰かを見極めることだ。ビジネスや政治の世界には、極めて有能な人材にもかかわらず、トップになれないボスについたせいで前途を断たれたケースが山ほどある。彼らは間違った相手を支持してしまった。相性がいい人とつき合いたがるのは自然なことだ。だが好感度が高いからといって、影響力が大きいことにはならない。

 権威ある立場の人に、提供できるものなどないと思うかもしれない。それは権力が生む孤立状態を過小評価しているから。トップの座に近づくほど、「その他大勢」との結びつきを失うリスクは大きくなる。そこに、あなたの出番がある。影響力がある人とつき合えば多くを手にできるが、その関係は一方通行ではない。あなたも多くを与えられる。

意見を提供する

 キャリアの階段を上り詰めた人々がよく口にする不満のひとつが、「自分が置かれた状況を客観的に見ることが難しい」。周りにいるのは、自分の決断と直接の利害関係を持つ人ばかり。誰もが自らの利益を考えてものを言う。そんな状態に客観的な視点をもたらし、その意見が信頼に値することを示せれば、有力者と驚くほど親しくなれる可能性がある。



 ローランドは起業家を顧客とする企業の会計士だ。まだ若手だったころから、彼はある著名な起業家とのミーティングに同席することがよくあった。「テレビで見たことがあるほど有名な人だったから、最初はびくびくしていた。でも彼は、出席者のなかでいちばん下っ端の私にしょっちゅう意見を求めてきた。時々電話してきて世間話をしたり、私には理解できないことについて長々と語ったりするようにもなった。彼が一方的に話すだけだったが、最後にはいつも『ありがとう。とても助かったよ』と言われた。私はほとんど何も話していなかったのに」

 求められているのはアイデアでも経験でもなく、客観的視点と話を聞いてもらうこと、そんな場合もある。

相手の目と耳になる

 知は力なり。それなのに地位が高くなるほど、周囲の人の本音を知ることは難しくなる。誰が本当は何を考え、感じているかを伝える窓口になれば、権力者にとってあなたの価値は上がる。もちろん、権力者にすりよっていると思われる危険はある。自己保身を目的に、ゴシップや悪口を言う人はどこにでもいるから。だが正しい動機を持つ限り、自分なりの新鮮な意見を伝えるのは賢い戦略になるだろう。

 大規模なコールセンターに勤務しているケリーの職場は、異様なほど退職者が多かった。経営陣は社内アンケートを実施したが回答する者はほとんどなく、報奨制度の見直しを始めていた。「職場に嫌気がさす人が多いのはなぜか、私にはわかっていた。部下に高圧的な態度を取る女性がいて、彼女のせいでフロア全体が嫌なムードになっていた。もうひとつの原因は、ばかばかしい話に聞こえるけれど、社員食堂のメニュー。私がその職場で働き始めてから2年間、メニューはずっと同じ。近くに店も何もなかったから、ほかに選択肢がない。だからアンケートに回答するなんていう遠回しなことはせずに、上の人と直接話がしたいと頼んで、問題点をはっきり伝えた。今では食堂のメニューも少しはましになったし、嫌われ者の女性の態度も変わった。経営幹部からは時々、職場の現状に対する意見を聞かれる。私は愚痴をこぼすより、問題を解決しようとするタイプだから」

「遺産」になる

 成功した人間には、いずれ「遺産」について考え始めるときがくる。部下や業界、その外のさらに広い世界に、どんな記憶を残していくか。それを意識したとき、人は「社会に何かを還元したい」という欲求に駆られる。慈善事業に熱心になったり、これまでは避けていた役目を引き受けたり。彼らの奉仕精神にあふれる行動のリストに、もうひとつ項目を加えてあげてはどうだろう? あなたのキャリアのスポンサーになる、という使命を。

 ライバルになる恐れはないが、確かな将来性がある人材を育てるのは、賢い時間の使い方――影響力のある人がそう判断する可能性は大きい。成功者は誰かを庇護したがるものだから。庇護してもらうには、勇気を出して頼むことだ。多くの組織が、大金を投じてメンタリングやコーチングのプログラムを実施しているが、その実態は単なる相談会に近い。内部の事情や情報を知り、その影響力でキャリアアップを助けてくれる人物に、積極的なスポンサーになってもらうほうがずっといい。


『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる
 影響力の秘密50』
 スティーブン・ピアス 著
 服部真琴 訳
 CCCメディアハウス




ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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