<トランプ次期米大統領と、アメリカと国交のない台湾の蔡英文総統との電撃電話会談に中国はカンカン、世界は騒然。トランプはいったい何を考えているのか>
ドナルド・トランプ次期米大統領が外交上の慣例を破り外交関係のない台湾総統と電話会談を行った問題。混乱は政治や外交にも及んでいる。
まず、先に電話をかけたのはどっちなのか。トランプは台湾の蔡英文総統から電話をかけてきたと主張するが、台湾総統の報道官は米NBCニュースに対し、10分間の電話会談は入念に準備されたもので、驚きはなかったと語った。台湾の英字紙「タイペイ・タイムズ(台北時報)」は、トランプは台湾をめぐる諸問題について側近から説明を受けた上で、政権移行チーム内の「親台派」が間を取り持った台湾総統からの電話に応じることに、自ら合意したと伝えた。
【参考記事】トランプ・蔡英文電話会談は周到に準備されていた?
トランプは会談後、ツイッターに投稿した。「台湾総統が今日、大統領選の勝利を祝って電話をかけてきた。ありがとう!」
The President of Taiwan CALLED ME today to wish me congratulations on winning the Presidency. Thank you!— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2016年12月3日
アメリカが数十年来堅持してきた「一つの中国」の原則に疑念を投じる行動にトランプが打って出たことについて、激しい批判や懸念の声が上がっている。
無計画で重大な転換
コネチカット州選出の上院議員(民主党)クリス・マーフィーはツイッターに投稿し、トランプの行為は「無計画に始めた、外交方針の重大な転換」だと批判した。「戦争はそうやって始まる。もし転換ではなく、奇をてらっただけだととしても、我が国の立場を信じられなくなった同盟国は離れていくだろう。どう転んでもひどい結果だ」。ヒラリー・クリントン陣営で広報担当を務めたブライアン・ファロンはツイッターで、「誰かがトランプには外交手腕がないと警告してくれればよかったのに」と投稿。そのコメントに「(トランプは)グローバルな危機を解決するどころか、新たな問題を生み出してしまう」と訴えるクリントンの動画を重ね、成り行きを皮肉った。
【参考記事】トランプ政権誕生で中台関係はどう動くか
ジョージ・W・ブッシュ政権で外交政策を担当した経歴を持つアジア政策の専門家アーロン・フリードバーグは、米政治情報サイトポリティコに対し、中国側の反応についてこう語った。「中国政府は今回の件をトランプのへまでなく、意図的な挑発行為としてとらえる可能性が高い。戦略というのは単に行動を起こすだけでなく、相当な思考を伴うものだ。今回トランプ側には熟考の跡が見られなかった」
【参考記事】蔡英文新総統はどう出るか?――米中の圧力と台湾の民意
だが共和党議員の一部は、電話会談の実現はトランプの大胆なリーダーシップの賜物だと持ち上げた。「台湾はアメリカの盟友。次期大統領がそのことを世界に知らしめるのは何も悪くない」と、インディアナ州選出の下院議員ルーク・メサーは米政治専門メディア「ザ・ヒル」で語った。「共産主義の残忍な殺し屋が政権を握るキューバと国交を回復したオバマの判断を賢明だと称えていた人々が、台湾を認知したトランプを批判する光景は皮肉でしかない」
ノースカロライナ州選出の下院議員(共和党)マーク・メド―は、「政策ではなく、ただの電話」と発言し、台湾総統との会談自体が大した問題ではないとの見解を示した。トランプの選挙対策本部長だったケリーアン・コンウェイは、トランプが米政府の中台政策について「十分に認識」しており、「今後も関連する問題についてしっかり情報説明を受けて十分な見識を保持する」と述べた。
ドゥテルテを招待
今回の騒動を受けて、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)は、米政府の政策に変更はないと強調するなど火消しに追われた。ネッド・プライス報道官は「中台関係をめぐる長年の政策に変更はない」とする声明を発表した。「米中間の3つの共同コミュニケに基づく『一つの中国』政策を堅持する」
蔡英文との電話会談に加え、オバマ政権に対して強硬姿勢をとってきたフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領を来年ホワイトハウスに招待したことが明らかになったことで、今後のトランプのトップ人事にますます暗い影が差している。トランプは2日も、軍人出身で「マッド・ドッグ(荒くれ者)」の異名を取るジェームズ・マティスを国防長官に任命したばかり。今回の騒ぎの尻拭いをさせられるのは、米ブルームバーグが駐中国大使の候補に挙がっていると伝えた、アイオワ州のテリー・ブランスタッド知事(共和党)かもしれない。
ニコラス・ロフレド
ドナルド・トランプ次期米大統領が外交上の慣例を破り外交関係のない台湾総統と電話会談を行った問題。混乱は政治や外交にも及んでいる。
まず、先に電話をかけたのはどっちなのか。トランプは台湾の蔡英文総統から電話をかけてきたと主張するが、台湾総統の報道官は米NBCニュースに対し、10分間の電話会談は入念に準備されたもので、驚きはなかったと語った。台湾の英字紙「タイペイ・タイムズ(台北時報)」は、トランプは台湾をめぐる諸問題について側近から説明を受けた上で、政権移行チーム内の「親台派」が間を取り持った台湾総統からの電話に応じることに、自ら合意したと伝えた。
【参考記事】トランプ・蔡英文電話会談は周到に準備されていた?
トランプは会談後、ツイッターに投稿した。「台湾総統が今日、大統領選の勝利を祝って電話をかけてきた。ありがとう!」
The President of Taiwan CALLED ME today to wish me congratulations on winning the Presidency. Thank you!— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2016年12月3日
アメリカが数十年来堅持してきた「一つの中国」の原則に疑念を投じる行動にトランプが打って出たことについて、激しい批判や懸念の声が上がっている。
無計画で重大な転換
コネチカット州選出の上院議員(民主党)クリス・マーフィーはツイッターに投稿し、トランプの行為は「無計画に始めた、外交方針の重大な転換」だと批判した。「戦争はそうやって始まる。もし転換ではなく、奇をてらっただけだととしても、我が国の立場を信じられなくなった同盟国は離れていくだろう。どう転んでもひどい結果だ」。ヒラリー・クリントン陣営で広報担当を務めたブライアン・ファロンはツイッターで、「誰かがトランプには外交手腕がないと警告してくれればよかったのに」と投稿。そのコメントに「(トランプは)グローバルな危機を解決するどころか、新たな問題を生み出してしまう」と訴えるクリントンの動画を重ね、成り行きを皮肉った。
【参考記事】トランプ政権誕生で中台関係はどう動くか
ジョージ・W・ブッシュ政権で外交政策を担当した経歴を持つアジア政策の専門家アーロン・フリードバーグは、米政治情報サイトポリティコに対し、中国側の反応についてこう語った。「中国政府は今回の件をトランプのへまでなく、意図的な挑発行為としてとらえる可能性が高い。戦略というのは単に行動を起こすだけでなく、相当な思考を伴うものだ。今回トランプ側には熟考の跡が見られなかった」
【参考記事】蔡英文新総統はどう出るか?――米中の圧力と台湾の民意
だが共和党議員の一部は、電話会談の実現はトランプの大胆なリーダーシップの賜物だと持ち上げた。「台湾はアメリカの盟友。次期大統領がそのことを世界に知らしめるのは何も悪くない」と、インディアナ州選出の下院議員ルーク・メサーは米政治専門メディア「ザ・ヒル」で語った。「共産主義の残忍な殺し屋が政権を握るキューバと国交を回復したオバマの判断を賢明だと称えていた人々が、台湾を認知したトランプを批判する光景は皮肉でしかない」
ノースカロライナ州選出の下院議員(共和党)マーク・メド―は、「政策ではなく、ただの電話」と発言し、台湾総統との会談自体が大した問題ではないとの見解を示した。トランプの選挙対策本部長だったケリーアン・コンウェイは、トランプが米政府の中台政策について「十分に認識」しており、「今後も関連する問題についてしっかり情報説明を受けて十分な見識を保持する」と述べた。
ドゥテルテを招待
今回の騒動を受けて、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)は、米政府の政策に変更はないと強調するなど火消しに追われた。ネッド・プライス報道官は「中台関係をめぐる長年の政策に変更はない」とする声明を発表した。「米中間の3つの共同コミュニケに基づく『一つの中国』政策を堅持する」
蔡英文との電話会談に加え、オバマ政権に対して強硬姿勢をとってきたフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領を来年ホワイトハウスに招待したことが明らかになったことで、今後のトランプのトップ人事にますます暗い影が差している。トランプは2日も、軍人出身で「マッド・ドッグ(荒くれ者)」の異名を取るジェームズ・マティスを国防長官に任命したばかり。今回の騒ぎの尻拭いをさせられるのは、米ブルームバーグが駐中国大使の候補に挙がっていると伝えた、アイオワ州のテリー・ブランスタッド知事(共和党)かもしれない。
ニコラス・ロフレド