<台湾の蔡英文総統とトランプが電話会談を行ったことに中国が抗議すると、トランプは「お前のほうこそ断りなく迷惑なことをやっているじゃないか」と反論。トランプは一手に米中関係を破壊しようとしているかのようだ>
ドナルド・トランプ次期米大統領は、一手に米中関係を破壊しようと挑んでいるのかのようだ。
7週間後に大統領就任を控えたトランプは、早くも中国政府を激怒させている。12月2日に台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったのだ。アメリカ大統領もしくは次期大統領と台湾総統との電話会談は1979年以来初と見られる。中国は、台湾を領土の一部だとみなしており、独立は認めていない。中国外務省は12月3日、この電話会談についてアメリカ側に厳重な抗議を申し入れたと発表した。
中国の抗議に更なる攻撃
トランプは姿勢を軟化させる気配を微塵も見せず、それどころか12月4日、中国に対する批判を開始した。
一連のツイートでトランプは次のように述べている。「(アメリカ製品の競争が困難になる)人民元切り下げを行うとき、中国は、事前に断りを入れただろうか? アメリカが中国に輸出する製品に重税を課してもいいかと聞いただろうか(アメリカは中国製品に課税していない)。南シナ海の真ん中に巨大な軍事複合施設を建設するときは断ったのか。そんなことはない」
【参考記事】米の対台湾武器売却に対する中国の猛抗議と強気
【参考記事】南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?
トランプの主張は本当なのか、検証する。
■人民元の切り下げ
中国は2015年8月に人民元の切り下げを行い、アメリカ政府を激怒させた。中国人民銀行(中央銀行)は、この切り下げは人民元の相場が市場で決まるようにするための措置で、切り下げはIMF(国際通貨基金)からも了解を得ていると主張した。一方のアメリカは、人民元を人為的に低く抑えることで、中国製品の輸出競争力が増し、それがアメリカや諸外国の競争を妨げていると訴えた。
トランプの主張は、中国でビジネスをするアメリカ企業の意見を反映したもののようだ。在中米国商工会議所が1月に発表した年次調査によると、アメリカ企業は、中国におけるビジネス環境がますます困難になりつつあると考えており、企業の10分の1が移転を計画しているか、すでに事業の一部を中国外に移しているという。同調査では、一貫しない規制と不明瞭な法律――および一般的な排外思想――がおも理由だと述べられているが、人民元の切り下げもいくらか役割を果たしたようだ。
■中国によるアメリカ製品への課税
トランプは以前にも同様の主張を展開していた。選挙運動期間中の3月にニューヨークタイムズ紙に対し、共和党候補だったトランプはこう語っている。「アメリカが中国でビジネスを行うのは非常に難しいが、中国がアメリカでビジネスを行うのは非常に簡単だ。しかも、アメリカが中国にものを売るときは莫大な税金を支払っているのに、中国がわれわれ相手に商売するときは無税だ」
中国がアメリカからの輸入品に「重税を課している」とするトランプの主張は、部分的には正しい。中国は基本税率17%の付加価値税(VAT)を導入しているが、この税率は大半のEU諸国よりも低い(例えばイタリアのVATは22%だ)。だが、アメリカはVATを導入していない。つまり、アメリカが中国や諸外国から輸入する製品に追加課税はかからない。
アメリカは一貫して反対
だが、ファクトチェックサイト「Politifact」によると、アメリカが中国製品に一切課税していないという点は、トランプの間違い。アメリカは、自国内で販売される中国製品に関税をかけているのだ。その税率は、農産物が2.5%、他の物品が2.9%。たしかに中国はアメリカよりも高い関税を課しており、アメリカ産農産物の税率は9.7%、非農産品は2.9%となっているものの、アメリカが中国製品に一切課税していないとは言えない。
■中国の南シナ海進出
主要な海上航路である南シナ海に中国が主張している領有権は、アメリカと周辺諸国にとって重大な懸念対象になっている。オバマ政権は一貫して中国の主張に異を唱え、これらの島々の領有権を主張するベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾に対し、中国に対抗するため結束するよう呼びかけ、米海軍艦船によるパトロールも実施している。
【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味
だが、中国が南シナ海に「巨大な軍事複合施設」を建設しているとするトランプの主張に対しては反論が出ている。オンラインマガジン「The Diplomat」によると、中国が西沙諸島のウッディー島(永興島)に約1400名からなる部隊を配した軍用基地を築いているのはたしかだが、大規模な前哨基地の一部ではないという。しかしながら、トランプの言う「巨大な軍事複合施設」が将来、出現する可能性はある。The Diplomatによると中国は、同国が南沙諸島に持つ7つの人工島の軍事化を徐々に進めつつある。
コナー・ギャフィー
ドナルド・トランプ次期米大統領は、一手に米中関係を破壊しようと挑んでいるのかのようだ。
7週間後に大統領就任を控えたトランプは、早くも中国政府を激怒させている。12月2日に台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったのだ。アメリカ大統領もしくは次期大統領と台湾総統との電話会談は1979年以来初と見られる。中国は、台湾を領土の一部だとみなしており、独立は認めていない。中国外務省は12月3日、この電話会談についてアメリカ側に厳重な抗議を申し入れたと発表した。
中国の抗議に更なる攻撃
トランプは姿勢を軟化させる気配を微塵も見せず、それどころか12月4日、中国に対する批判を開始した。
一連のツイートでトランプは次のように述べている。「(アメリカ製品の競争が困難になる)人民元切り下げを行うとき、中国は、事前に断りを入れただろうか? アメリカが中国に輸出する製品に重税を課してもいいかと聞いただろうか(アメリカは中国製品に課税していない)。南シナ海の真ん中に巨大な軍事複合施設を建設するときは断ったのか。そんなことはない」
【参考記事】米の対台湾武器売却に対する中国の猛抗議と強気
【参考記事】南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?
トランプの主張は本当なのか、検証する。
■人民元の切り下げ
中国は2015年8月に人民元の切り下げを行い、アメリカ政府を激怒させた。中国人民銀行(中央銀行)は、この切り下げは人民元の相場が市場で決まるようにするための措置で、切り下げはIMF(国際通貨基金)からも了解を得ていると主張した。一方のアメリカは、人民元を人為的に低く抑えることで、中国製品の輸出競争力が増し、それがアメリカや諸外国の競争を妨げていると訴えた。
トランプの主張は、中国でビジネスをするアメリカ企業の意見を反映したもののようだ。在中米国商工会議所が1月に発表した年次調査によると、アメリカ企業は、中国におけるビジネス環境がますます困難になりつつあると考えており、企業の10分の1が移転を計画しているか、すでに事業の一部を中国外に移しているという。同調査では、一貫しない規制と不明瞭な法律――および一般的な排外思想――がおも理由だと述べられているが、人民元の切り下げもいくらか役割を果たしたようだ。
■中国によるアメリカ製品への課税
トランプは以前にも同様の主張を展開していた。選挙運動期間中の3月にニューヨークタイムズ紙に対し、共和党候補だったトランプはこう語っている。「アメリカが中国でビジネスを行うのは非常に難しいが、中国がアメリカでビジネスを行うのは非常に簡単だ。しかも、アメリカが中国にものを売るときは莫大な税金を支払っているのに、中国がわれわれ相手に商売するときは無税だ」
中国がアメリカからの輸入品に「重税を課している」とするトランプの主張は、部分的には正しい。中国は基本税率17%の付加価値税(VAT)を導入しているが、この税率は大半のEU諸国よりも低い(例えばイタリアのVATは22%だ)。だが、アメリカはVATを導入していない。つまり、アメリカが中国や諸外国から輸入する製品に追加課税はかからない。
アメリカは一貫して反対
だが、ファクトチェックサイト「Politifact」によると、アメリカが中国製品に一切課税していないという点は、トランプの間違い。アメリカは、自国内で販売される中国製品に関税をかけているのだ。その税率は、農産物が2.5%、他の物品が2.9%。たしかに中国はアメリカよりも高い関税を課しており、アメリカ産農産物の税率は9.7%、非農産品は2.9%となっているものの、アメリカが中国製品に一切課税していないとは言えない。
■中国の南シナ海進出
主要な海上航路である南シナ海に中国が主張している領有権は、アメリカと周辺諸国にとって重大な懸念対象になっている。オバマ政権は一貫して中国の主張に異を唱え、これらの島々の領有権を主張するベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾に対し、中国に対抗するため結束するよう呼びかけ、米海軍艦船によるパトロールも実施している。
【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味
だが、中国が南シナ海に「巨大な軍事複合施設」を建設しているとするトランプの主張に対しては反論が出ている。オンラインマガジン「The Diplomat」によると、中国が西沙諸島のウッディー島(永興島)に約1400名からなる部隊を配した軍用基地を築いているのはたしかだが、大規模な前哨基地の一部ではないという。しかしながら、トランプの言う「巨大な軍事複合施設」が将来、出現する可能性はある。The Diplomatによると中国は、同国が南沙諸島に持つ7つの人工島の軍事化を徐々に進めつつある。
コナー・ギャフィー