<弾劾訴追案が可決された韓国・朴槿恵大統領の支持率は、なんと4%にまで低下。実はフランスのオランド大統領も、数々の暴言が暴露されて支持率は同レベルにまで低下している>(写真:暴言が暴露され人気がガタ落ちのオランド大統領)
弾劾訴追案が可決した韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領。親友の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑に端を発して、結局は任期をまっとうすることなく大統領の座から退くことになった。
そんな朴大統領の支持率は、朝鮮日報などによると4%にまで低下していた。この支持率は、韓国史上最低の記録を更新するもので、国民100人のうち4人しか大統領を支持していないことになる。
普通に考えれば、支持率4%ともなれば、もはや風前の灯火だろう。世界的に見てもここまで不人気なリーダーはいないと思いきや、実はヨーロッパにいた。フランスのオランド大統領だ。
【参考記事】トランプが煽った米ロ・サイバー戦争の行方
フランス史上最低の支持率
仏ル・モンド紙は今年10月、オランドの支持率が4%にまで落ち込んだという衝撃の調査結果を発表。もともと支持率はこのところ低かったオランドだが、さすがに4%ともなると、欧州各国のメディアも驚きをもって報じた。この数字は、今年10月14~19日にかけて1万7000人を対象に行われた世論調査の結果で、回答者のたった3%がオランドを支持すると答え、1%がオランドの仕事ぶりに大変満足していると答えた。
この4%という数字は、1848年にフランスで初めて大統領が誕生して以来、史上最低の記録だという。
なぜここまで嫌われているのか。社会主義者のオランドは、富の再分配や公共サービス再建などを訴えて大統領に当選した。だがいっこうに経済の立て直しは進まず、10%ほどの失業率も改善しない。インフレも改善していないし、貧困層への対策もイマイチだ。
また、結婚はせずにパートナーをもつポリシーのオランドは、女優との逢い引き(不倫?)が報じられたり、派手な公費の散財が報じられたりもした。
さらに支持率4%の調査結果が出る直前には、オランド全面協力の評伝『President Shouldn't Say That(大統領がそれを言ったらダメでしょう)』が発売され、その中でオランドの数々の暴言が明らかになった。ル・モンド紙のジャーナリスト2人が連名で上梓した同書は、過去4年で61回にわたって実施されたオランドへの独占インタビューを元にまとめられている。
その中身は、失言や暴言の連続だった。例えばオランドは、フランスの貧困者を「歯なし」と呼んでいた。またフランスの司法制度は「卑怯な組織」であり、新たなパートナーである女優が「ファーストレディになりたがる」とも述べていた。サッカーのフランス代表チームの選手は、「育ちの悪いガキたち」が突然超金持ちになったのだから、「脳みそのウェイトトレーニングが必要だ」と言い放ったとも書かれている。大臣や議会幹部を軽視する発言までしていた。
【参考記事】インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー
大統領選の不出馬を表明
その結果、もはや再浮上の希望が限りなくゼロに近くなったオランドは、今月1日に、エリゼ宮から国民に向けてテレビ演説を行い、来年のフランス大統領選に出馬しないことを表明。現代のフランスでは初めて、再選を目指さない現職大統領となり、新たな汚名を残すことになった。
今月5日、フランスのマニュエル・バルス首相は、オランドの後継として来年の大統領選に出馬することを表明して辞任。翌6日にオランドは、ベルナール・カズヌーブ内相を新しい首相に任命している。ちなみにカズヌーブ首相の任期は大統領選までで、近年で史上最短命の首相だ。
韓国の朴とフランスのオランド、どちらも2017年には国政の表舞台から姿を消す。両者とも、史上稀に見る不人気なリーダーとして記憶されるだろう。
さらにもう1人、低支持率で知られる主要国のリーダーがいる。ブラジルのミシェル・テメル大統領だ。
テメルは、弾劾裁判で罷免されたディルマ・ルセフ前大統領の後釜として今年5月から実権を握り、8月に正式に大統領となった。自身も数々の汚職疑惑が指摘されるテメルだが、今年のリオ・オリンピックで大ブーイングを受けたのは記憶に新しい。
最新の調査では、テメルを評価する国民はたったの10%程度。来年はテメルの動向が注目される。
【執筆者】
山田敏弘
国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている。フジテレビ「ホウドウキョク」で国際ニュース解説を担当。
山田敏弘(ジャーナリスト)
弾劾訴追案が可決した韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領。親友の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑に端を発して、結局は任期をまっとうすることなく大統領の座から退くことになった。
そんな朴大統領の支持率は、朝鮮日報などによると4%にまで低下していた。この支持率は、韓国史上最低の記録を更新するもので、国民100人のうち4人しか大統領を支持していないことになる。
普通に考えれば、支持率4%ともなれば、もはや風前の灯火だろう。世界的に見てもここまで不人気なリーダーはいないと思いきや、実はヨーロッパにいた。フランスのオランド大統領だ。
【参考記事】トランプが煽った米ロ・サイバー戦争の行方
フランス史上最低の支持率
仏ル・モンド紙は今年10月、オランドの支持率が4%にまで落ち込んだという衝撃の調査結果を発表。もともと支持率はこのところ低かったオランドだが、さすがに4%ともなると、欧州各国のメディアも驚きをもって報じた。この数字は、今年10月14~19日にかけて1万7000人を対象に行われた世論調査の結果で、回答者のたった3%がオランドを支持すると答え、1%がオランドの仕事ぶりに大変満足していると答えた。
この4%という数字は、1848年にフランスで初めて大統領が誕生して以来、史上最低の記録だという。
なぜここまで嫌われているのか。社会主義者のオランドは、富の再分配や公共サービス再建などを訴えて大統領に当選した。だがいっこうに経済の立て直しは進まず、10%ほどの失業率も改善しない。インフレも改善していないし、貧困層への対策もイマイチだ。
また、結婚はせずにパートナーをもつポリシーのオランドは、女優との逢い引き(不倫?)が報じられたり、派手な公費の散財が報じられたりもした。
さらに支持率4%の調査結果が出る直前には、オランド全面協力の評伝『President Shouldn't Say That(大統領がそれを言ったらダメでしょう)』が発売され、その中でオランドの数々の暴言が明らかになった。ル・モンド紙のジャーナリスト2人が連名で上梓した同書は、過去4年で61回にわたって実施されたオランドへの独占インタビューを元にまとめられている。
その中身は、失言や暴言の連続だった。例えばオランドは、フランスの貧困者を「歯なし」と呼んでいた。またフランスの司法制度は「卑怯な組織」であり、新たなパートナーである女優が「ファーストレディになりたがる」とも述べていた。サッカーのフランス代表チームの選手は、「育ちの悪いガキたち」が突然超金持ちになったのだから、「脳みそのウェイトトレーニングが必要だ」と言い放ったとも書かれている。大臣や議会幹部を軽視する発言までしていた。
【参考記事】インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー
大統領選の不出馬を表明
その結果、もはや再浮上の希望が限りなくゼロに近くなったオランドは、今月1日に、エリゼ宮から国民に向けてテレビ演説を行い、来年のフランス大統領選に出馬しないことを表明。現代のフランスでは初めて、再選を目指さない現職大統領となり、新たな汚名を残すことになった。
今月5日、フランスのマニュエル・バルス首相は、オランドの後継として来年の大統領選に出馬することを表明して辞任。翌6日にオランドは、ベルナール・カズヌーブ内相を新しい首相に任命している。ちなみにカズヌーブ首相の任期は大統領選までで、近年で史上最短命の首相だ。
韓国の朴とフランスのオランド、どちらも2017年には国政の表舞台から姿を消す。両者とも、史上稀に見る不人気なリーダーとして記憶されるだろう。
さらにもう1人、低支持率で知られる主要国のリーダーがいる。ブラジルのミシェル・テメル大統領だ。
テメルは、弾劾裁判で罷免されたディルマ・ルセフ前大統領の後釜として今年5月から実権を握り、8月に正式に大統領となった。自身も数々の汚職疑惑が指摘されるテメルだが、今年のリオ・オリンピックで大ブーイングを受けたのは記憶に新しい。
最新の調査では、テメルを評価する国民はたったの10%程度。来年はテメルの動向が注目される。
【執筆者】
山田敏弘
国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている。フジテレビ「ホウドウキョク」で国際ニュース解説を担当。
山田敏弘(ジャーナリスト)