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夫が家事を分担しない日本では、働く女性の不満は高まるばかり

ニューズウィーク日本版 2016年12月14日 15時30分

<日本の既婚女性の家庭生活への満足度は、世界各国と比較すると格段に低い。夫の家事分担の低さが関係していることは明らかで、まずは「家事は女性がすべし」という社会的呪縛を解消しなければならない>

 家庭は憩い、団らんの場であるが、同時に緊張や葛藤の場にもなり得る。最近は、虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)といった家族病理による事件が頻発している。

 もちろん、これらは極端なケースだが、働く女性にとって家庭が癒しの場となっていないことは、少なくないのではないだろうか。仕事で疲れて帰宅すると、家事や家族の世話を一手に引き受けなければならない。家庭はくつろげる場ではなく、まだ職場のほうがマシという人もいるかもしれない。

 2012年に国際社会調査プログラム(ISSP)が実施した『家族と性役割の変化に関する調査』では、家庭生活の満足度を尋ねている。①「完全に満足」、②「とても満足」、③「まあ満足」、④「どちらでもない」、⑤「やや不満」、⑥「とても不満」、⑦「完全に不満」、の7段階で答えてもらう形式だ。

 25~54歳の有配偶・有業女性について、①+②の回答比率を見ると、日本が40.1%、韓国が24.7%、アメリカが81.6%、イギリスが67.1%、ドイツ(旧西ドイツ)が58.1%、フランスが57.1%、スウェーデンが69.3%、となる。性役割観の強い日本と韓国の値は格段に低い。

【参考記事】日本は世界一「夫が家事をしない」国

 しかし、7つの選択肢による細かい訊き方をしているこの場合は、一部の選択比率を拾うのではなく、分布全体を考慮した尺度を出す方が良いだろう。そこで①に7点、②に6点、③に5点、④に4点、⑤に3点、⑥に2点、⑦に1点を与えた場合の平均点を計算した。

 調査対象の36カ国を平均スコアが高い順に並べると、<図1>のようになる。働く有配偶女性の家庭生活満足度の国際順位だ。



 最下位はインド、次いで低いのは韓国、日本は平均5.04点で3番目に低い。いずれも、家庭生活で女性にかかる負荷が大きい社会だ。

 予想通り、日本の働く女性の家庭生活への満足度は低いのだが、興味が持たれるのは、夫の家事分担の度合いに応じてこれがどう変わるかだ。働く女性の不満の原因は、仕事で疲れているところに、家事や育児の負担が上乗せされることだろう。それならば、夫が家事を分担する女性のほうが、そうでない人よりも家庭生活の満足度は高くなると考えられる。



 この点をさらに詳しく見てみる。同じ調査では,パートナーとの家事分担状況も尋ねている。自分の方がやっている女性は「夫分担度低群」、同じくらいか夫のほうがやっている女性は「夫分担度高群」としよう。日本の25~54歳の有配偶・有業女性で見ると、前者は100人、後者は44人だ。

<図2>は、両群の家庭生活の満足度の違いをグラフにしたものだ。「満足」「どちらでもない」「不満」の3つのカテゴリーにまとめた。



 2つの群の回答分布には有意差が認められる。夫が家事をする女性の方が、家庭生活の満足度は高い。よく言われることだが、データでも可視化できる。

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 しかし、夫の家事分担をただ促せば良いという話でもないだろう。夫に家事分担を「してもらう(申し訳ない)」と、感じる女性もいる。夫の家事分担度が高くても、後ろめたさを感じれば、家庭生活の満足度は高まらない。三世代同居の世帯に、こうしたケースは多いのではないかと推測される。

 まずは「家事は女性がすべし」という社会的呪縛を解消しなければならない。このままでは、今後働く女性はますます追い詰められることになる。

<資料:「Family and Changing Gender Roles IV - ISSP 2012」>

舞田敏彦(教育社会学者)

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