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パン・ギムンが韓国大統領選へ事実上の出馬表明 国内の反応は?

ニューズウィーク日本版 2016年12月21日 21時23分

<パク・クネ大統領の弾劾決議案が採択され、事実上国の最高権力者が不在となった韓国。ちょうどそのタイミングでニューヨークから韓国に戻ろうとしているのが、今月いっぱいで国連事務総長の任期を終えるパン・ギムンだ。「国難のためには我が身をなげうってでも......」と語るパンだが、韓国国内での反応は......>

 ニューヨークの国連本部で20日(現地時間)パン・ギムン国連事務総長が、韓国特派員らとの最後の懇親会を行い、「国際的な指導者であるよりも、祖国のために働くことが至急の問題だ」と、大統領選挙に向けこれまでにない意欲を打ち出した。

 これを受けて今日のYTNなど韓国メディアは一斉にパン・ギムンの帰国後の政治活動について、韓国政界の反応も含めて報じている。

「大韓民国の発展に役立つなら、私の一身を燃やしてでも努力する用意があります」と語り、国連事務総長退任後の活動を明らかにしなかったこれまでとは一転、事実上の大統領選挙への出馬を表明したパン・ギムン。だが、具体的な枠組みなどについては「どのような形でできるかは、帰国後に各界の国民に会って、話を聞いてから決めたい」「韓国国民の失望、挫折感、これらは今現在、政治をしている方々への不満を示したものと見られる」と語り、特定の政党や派閥との連携には慎重な姿勢をみせている。

 とりわけ、現在パク・クネ大統領をめぐり党内対立が見られる与党セヌリ党への参加については「政治というのは一人でできることではない。だが政党の何が重要なのだろうか? 国民不在、国をないがしろにして、何の政党、何の派閥が重要なのか。 親パクと非パクといった派閥がなぜ必要なのか分からない」と批判、セヌリ党合流については否定した。

 また、パク大統領が弾劾決議を受けることになったいわゆる"チェスンシルゲート"については、「弾劾、退陣要求という事態が韓国で起こったことを心苦しく思い、帰国はするものの、心は重い」と語った。

事実上の大統領選出馬表明 韓国特派員との最後の懇親会で意欲を語るパン・ギムン (c) YTN / Youtube






救国の士になるか、政界混乱に拍車をかけるか......

 一方、パン・ギムンを迎える韓国国内の反応はさまざまだ。

「パン氏の帰国後に、大統領選挙のスケジュール、政治日程に関連する言葉をいただく機会があると信じる」と語ったのはセヌリ党のチョン・ジンソク前院内代表。国会内で記者団に「時間が経てば、パン氏と行動を共にする賛同する現職議員が相当増えると思います」とも語り、パン大統領を担ぎ出すためのグループを集めることもにおわせた。

 一方で冷ややかな反応も聞こえる。「結論として申し上げますと、過去の例を見てもそうですが、"第3地帯"は蜃気楼に過ぎないのです」と語ったのはオ・サンホ共に民主党院内代表だ。同党のムン・ジェイン前代表が大統領選の最有力候補であることを踏まえての発言だが、確かに国連事務総長として2期10年にわたって韓国政界を不在にしたパン・ギムンは、国内での地盤が脆弱な面は否定できない。

 事実、世論調査機関アルエンサーチの12月3週の次期大統領候補支持率では、ムン・ジェイン46.2%に対し、パン・ギムンは36.3%に留まっている。この状況を打破するためには、セヌリ党の反主流派や、共に民主党以外の野党と手を組むなど、支持基盤固めが求められる。

 パン・ギムンが韓国に帰国するのは1月中旬。自らが語った「国民不在の今の韓国政界」を一新できるか、それとも自身を中心にした政界再編の波に飲まれ、自ら国民不在の政治の中心となってしまうのか。今後の動きが注目される。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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