<ナッツリターンで世界的に注目を集めた大韓航空だが、今度は客室内で暴れた乗客への対応が不十分だったということで非難を呼んでいる。問題を起こした男は搭乗拒否、今後同様の問題が起きた場合は警告後即座にスタンガンで対応するというが──>
今月20日ベトナム・ハノイ発、韓国・仁川行の大韓航空KE480便の機内で暴動事件を起こしたイム・ボムジュンについて、仁川地方裁判所は、明日の午後2時半航空保安法上の航空機安全運航阻害暴行と傷害の疑いでイムの拘束令状の審査をする予定だと明らかにした。毎日経済など韓国メディアが伝えるところでは、裁判所は令状審査を経て、明日の午後遅くにはイムを拘束するかどうかを決定するという。
この事件は20日午後、ベトナム・ハノイ空港から出発した大韓航空KE480便で、搭乗前から酒に酔っていたイム・ボムジュンが、「話しかけたのに無視された」という理由で隣の席に座った乗客につばを吐き、顔を殴るなどし、さらには静止しようとした客室乗務員と整備士らにまで殴りかかり、2時間ほど暴力をふるったというものだ。たまたま、同じ便に乗り合わせたアメリカのシンガーソングライター、リチャード・マークスがこのトラブルについて自身のツイッターとfacebookに投稿。現場を収めた写真も公開し、「私たちのそばにいた精神の不安定な乗客が、ほかの乗客を攻撃し始めた」「私たち夫婦は大丈夫だが、乗務員1人、乗客2人がけがをした」などと当時の状況を生々しく伝えて、世界中に知られるようになった。
(参考記事:大韓航空パイロットがスト 元凶は高給で引き抜きをする中国?)
実は、この機内で暴れたイム・ボムジュンは昨年9月にも同じ大韓航空で暴行事件を犯し、ベトナムの裁判所から罰金200ドルを宣告された経歴の持ち主だった。イムは、中小企業であるトジョン物産=イム・ビョンソン社長の息子であることがわかり、わがままに育てられた金持ちのどら息子のお騒がせ騒動として世界中から非難を浴びている。
大韓航空機内で客室乗務員に取り押さえられるイム・ボムジュン (c) Youtube
一方でかつてトラブルのあった男をそのまま乗せていた大韓航空も非難を受けている。当初は、6人の客室乗務員が全員女性だったこと、スタンガン(スタンガンの一種)を使おうとしたが近くに他の乗客がいたため使えず、ロープで拘束したことなどを説明し、事態の収拾を図ろうとしたが、世界的な厳しい批判を受けて、27日ジ・チャンフン社長自ら出席して機内安全の向上対策についての記者会見を行った。
(参考記事:イスラム教徒ユーチューバー、「挑発的行動」でデルタ航空が降ろす)
それによると、まず問題を起こしたイム・ボムジュンについては、今月29日と来月にも大韓航空の航空券を予約していたが、これについては搭乗拒否をすることとして、25日に通知したという。大韓航空が乗客に対して搭乗拒否を通知したのはこれが初めてだという。また今後、イムについて永久搭乗拒否にするかどうかも検討中だ。
大韓航空は27日、機内安全の向上対策を紹介した。客室乗組員が客室で暴れる者を囲みスタンガンで狙う訓練のようす。(c) 大韓航空
客室乗務員が機内で暴れる者を容易に制圧できる新型ロープ
さらに、今後機内での暴動が発生したときに効率的に対応するため、現状10%しか配置されていない男性客室乗務員を増やしていくという。またスタンガンについて従来は「乗客や乗務員の生命又は身体に切迫した危険があるか、航空機の飛行の安全を維持することが危機に瀕した場合などの重大事にのみ使用することができる」という厳しい使用規定があったため、過去に機内に導入されてから3回しか利用されることがなかった。そのため規定を「暴れる人物に対し警告をして、それでも従わない場合はスタンガンを発射して気絶させる」と改めていくという。また拘束するためのロープについては、タイラップのようにひっぱるだけで締め付けられる新型のロープを披露、機内安全への取り組み強化を強調した。
とはいえ、世界的なスターのリチャード・マークスが問題を指摘しなければ、うやむやのまま、軽微なトラブルとして処理されていた可能性も高い。2年前の"ナッツリターン"事件に続く今回のトラブルは、「大韓航空の安全不感症」として韓国メディアから強く批判されている。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
今月20日ベトナム・ハノイ発、韓国・仁川行の大韓航空KE480便の機内で暴動事件を起こしたイム・ボムジュンについて、仁川地方裁判所は、明日の午後2時半航空保安法上の航空機安全運航阻害暴行と傷害の疑いでイムの拘束令状の審査をする予定だと明らかにした。毎日経済など韓国メディアが伝えるところでは、裁判所は令状審査を経て、明日の午後遅くにはイムを拘束するかどうかを決定するという。
この事件は20日午後、ベトナム・ハノイ空港から出発した大韓航空KE480便で、搭乗前から酒に酔っていたイム・ボムジュンが、「話しかけたのに無視された」という理由で隣の席に座った乗客につばを吐き、顔を殴るなどし、さらには静止しようとした客室乗務員と整備士らにまで殴りかかり、2時間ほど暴力をふるったというものだ。たまたま、同じ便に乗り合わせたアメリカのシンガーソングライター、リチャード・マークスがこのトラブルについて自身のツイッターとfacebookに投稿。現場を収めた写真も公開し、「私たちのそばにいた精神の不安定な乗客が、ほかの乗客を攻撃し始めた」「私たち夫婦は大丈夫だが、乗務員1人、乗客2人がけがをした」などと当時の状況を生々しく伝えて、世界中に知られるようになった。
(参考記事:大韓航空パイロットがスト 元凶は高給で引き抜きをする中国?)
実は、この機内で暴れたイム・ボムジュンは昨年9月にも同じ大韓航空で暴行事件を犯し、ベトナムの裁判所から罰金200ドルを宣告された経歴の持ち主だった。イムは、中小企業であるトジョン物産=イム・ビョンソン社長の息子であることがわかり、わがままに育てられた金持ちのどら息子のお騒がせ騒動として世界中から非難を浴びている。
大韓航空機内で客室乗務員に取り押さえられるイム・ボムジュン (c) Youtube
一方でかつてトラブルのあった男をそのまま乗せていた大韓航空も非難を受けている。当初は、6人の客室乗務員が全員女性だったこと、スタンガン(スタンガンの一種)を使おうとしたが近くに他の乗客がいたため使えず、ロープで拘束したことなどを説明し、事態の収拾を図ろうとしたが、世界的な厳しい批判を受けて、27日ジ・チャンフン社長自ら出席して機内安全の向上対策についての記者会見を行った。
(参考記事:イスラム教徒ユーチューバー、「挑発的行動」でデルタ航空が降ろす)
それによると、まず問題を起こしたイム・ボムジュンについては、今月29日と来月にも大韓航空の航空券を予約していたが、これについては搭乗拒否をすることとして、25日に通知したという。大韓航空が乗客に対して搭乗拒否を通知したのはこれが初めてだという。また今後、イムについて永久搭乗拒否にするかどうかも検討中だ。
大韓航空は27日、機内安全の向上対策を紹介した。客室乗組員が客室で暴れる者を囲みスタンガンで狙う訓練のようす。(c) 大韓航空
客室乗務員が機内で暴れる者を容易に制圧できる新型ロープ
さらに、今後機内での暴動が発生したときに効率的に対応するため、現状10%しか配置されていない男性客室乗務員を増やしていくという。またスタンガンについて従来は「乗客や乗務員の生命又は身体に切迫した危険があるか、航空機の飛行の安全を維持することが危機に瀕した場合などの重大事にのみ使用することができる」という厳しい使用規定があったため、過去に機内に導入されてから3回しか利用されることがなかった。そのため規定を「暴れる人物に対し警告をして、それでも従わない場合はスタンガンを発射して気絶させる」と改めていくという。また拘束するためのロープについては、タイラップのようにひっぱるだけで締め付けられる新型のロープを披露、機内安全への取り組み強化を強調した。
とはいえ、世界的なスターのリチャード・マークスが問題を指摘しなければ、うやむやのまま、軽微なトラブルとして処理されていた可能性も高い。2年前の"ナッツリターン"事件に続く今回のトラブルは、「大韓航空の安全不感症」として韓国メディアから強く批判されている。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部