<甘いマスクの下は権力に飢えた冷血漢?トランプの娘婿が次期政権の要職に就くと聞いて悪夢にうなされる人も少なくない>
トランプ次期大統領の政権移行チーム幹部は1月9日、トランプの娘イバンカの夫ジャレッド・クシュナーが大統領上級顧問に指名される見込みだとNBCニュースに語った。カザフスタンやトルコをも思わせる強権的な動きだ。
クシュナーが経営していた企業の取引先には怪しげなところも多く、トランプ自身の事業をめぐる利益相反疑惑に輪をかけることになりそうだ。
クシュナーはトランプの選挙運動と政権移行チームの両方で中心的役割を果たしたとされる。トランプの本当の息子たち、ドナルド・ジュニアとエリックは、不動産王の父が大統領職に就いている間、父から経営権を引き継ぐ見通しだ。
【参考記事】トランプを大統領にした男 イバンカの夫クシュナーの素顔
クシュナーはニューヨーク市で不動産開発事業を手がけており、1月9日まではクシュナーカンパニーのCEOを務めていた。同社は世界中の企業と取引を行っており、クシュナーが政権に参加すれば、諸外国で利益相反が問題になるのではないかという声が上がっている。
クシュナーの弁護士はそうした疑念を否定して言う。「クシュナー氏は連邦政府が定める倫理法に従うと誓っている。われわれは、政権に参加するための手続きについて、政府倫理庁(OGE)と協議してきた」
嫌われたら大変
だがクシュナーは大統領選でも、傘下企業を通じて影響力を行使してきた。たとえば、自ら所有する週刊紙「ニューヨーク・オブザーバー」をトランプの選挙運動のためのプラットフォームとして活用し、2016年7月には「私が知っているドナルド・トランプ」と題する記事を執筆。ホロコーストを生き延びた祖母を引き合いに出し、トランプは一部の人々が非難するような反ユダヤ主義者ではないと主張した。
オブザーバー紙のある元ライターは次のようにツイートしている。「クシュナーの下で働きながら、彼がこんなに権力を持つことについて何度も悪夢を見た」
クシュナーの影響力は、選挙運動やメディア内から政権移行チームへと広がっている。選挙戦中、トランプの右腕的存在だったニュージャージー州知事のクリス・クリスティーを失脚させたのも、クシュナーの意向だったとされている。
【参考記事】トランプ政権移行チーム、「内紛」の真相とは
クリスティーは元連邦検事で、クシュナーの実父を刑務所に送った経緯がある。クシュナーの実父は、脱税や証人買収、違法献金に関与していた人物で、連邦捜査局と手を組み、売春婦を使って人を陥れようとしたこともある。クシュナーが恨みを抱いていることに間違いはない。
クシュナーは政権移行チーム内の駆け引きだけでなく、トランプの「外交」にも参加している。トランプの当選直後には、妻のイバンカとともに日本の安倍晋三首相との会談にも同席した。
【参考記事】トランプファミリーの異常な「セレブ」生活
またクシュナーは、中国保険大手の安邦保険集団と取引を行っており、それがトランプの対中政策にも影響している。トランプが台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったことに関して、駐米中国大使は政権移行チームに電話を入れ、「強い不満」を表明した。その電話はクシュナーに回された、とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。それはクシュナーが、安邦保険集団や中国のほかの投資家たちと関わりを持っているからだ。
さらにトランプは、クシュナーがパレスチナ問題解決の中心人物になるかもしれないとも語っている。その理由はおそらく、イスラエルのハポアリム銀行がクシュナーに繰り返し融資を行っているためだろう。同銀行はイスラエル最大手で、一説によると、アメリカ人顧客たちの税金逃れを手助けしていると言われている。
倫理的に見れば極めて厳しいが、家族の絆にとっては素晴らしい時代が到来するようだ。おめでとう、ミスター・クシュナー。
From Foreign Policy Magazine
エミリー・タムキン
トランプ次期大統領の政権移行チーム幹部は1月9日、トランプの娘イバンカの夫ジャレッド・クシュナーが大統領上級顧問に指名される見込みだとNBCニュースに語った。カザフスタンやトルコをも思わせる強権的な動きだ。
クシュナーが経営していた企業の取引先には怪しげなところも多く、トランプ自身の事業をめぐる利益相反疑惑に輪をかけることになりそうだ。
クシュナーはトランプの選挙運動と政権移行チームの両方で中心的役割を果たしたとされる。トランプの本当の息子たち、ドナルド・ジュニアとエリックは、不動産王の父が大統領職に就いている間、父から経営権を引き継ぐ見通しだ。
【参考記事】トランプを大統領にした男 イバンカの夫クシュナーの素顔
クシュナーはニューヨーク市で不動産開発事業を手がけており、1月9日まではクシュナーカンパニーのCEOを務めていた。同社は世界中の企業と取引を行っており、クシュナーが政権に参加すれば、諸外国で利益相反が問題になるのではないかという声が上がっている。
クシュナーの弁護士はそうした疑念を否定して言う。「クシュナー氏は連邦政府が定める倫理法に従うと誓っている。われわれは、政権に参加するための手続きについて、政府倫理庁(OGE)と協議してきた」
嫌われたら大変
だがクシュナーは大統領選でも、傘下企業を通じて影響力を行使してきた。たとえば、自ら所有する週刊紙「ニューヨーク・オブザーバー」をトランプの選挙運動のためのプラットフォームとして活用し、2016年7月には「私が知っているドナルド・トランプ」と題する記事を執筆。ホロコーストを生き延びた祖母を引き合いに出し、トランプは一部の人々が非難するような反ユダヤ主義者ではないと主張した。
オブザーバー紙のある元ライターは次のようにツイートしている。「クシュナーの下で働きながら、彼がこんなに権力を持つことについて何度も悪夢を見た」
クシュナーの影響力は、選挙運動やメディア内から政権移行チームへと広がっている。選挙戦中、トランプの右腕的存在だったニュージャージー州知事のクリス・クリスティーを失脚させたのも、クシュナーの意向だったとされている。
【参考記事】トランプ政権移行チーム、「内紛」の真相とは
クリスティーは元連邦検事で、クシュナーの実父を刑務所に送った経緯がある。クシュナーの実父は、脱税や証人買収、違法献金に関与していた人物で、連邦捜査局と手を組み、売春婦を使って人を陥れようとしたこともある。クシュナーが恨みを抱いていることに間違いはない。
クシュナーは政権移行チーム内の駆け引きだけでなく、トランプの「外交」にも参加している。トランプの当選直後には、妻のイバンカとともに日本の安倍晋三首相との会談にも同席した。
【参考記事】トランプファミリーの異常な「セレブ」生活
またクシュナーは、中国保険大手の安邦保険集団と取引を行っており、それがトランプの対中政策にも影響している。トランプが台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったことに関して、駐米中国大使は政権移行チームに電話を入れ、「強い不満」を表明した。その電話はクシュナーに回された、とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。それはクシュナーが、安邦保険集団や中国のほかの投資家たちと関わりを持っているからだ。
さらにトランプは、クシュナーがパレスチナ問題解決の中心人物になるかもしれないとも語っている。その理由はおそらく、イスラエルのハポアリム銀行がクシュナーに繰り返し融資を行っているためだろう。同銀行はイスラエル最大手で、一説によると、アメリカ人顧客たちの税金逃れを手助けしていると言われている。
倫理的に見れば極めて厳しいが、家族の絆にとっては素晴らしい時代が到来するようだ。おめでとう、ミスター・クシュナー。
From Foreign Policy Magazine
エミリー・タムキン