<戦後日本の高度経済成長を支えた若年層の増加「人口ボーナス」は今後反転し、日本社会は若年層が急減するかつてない大変化に直面する>
日本の近い将来についてはいろいろな予測があるが、人口が減っていくことは明らかだ。年齢層別にみると、減少のスピードが最も大きいのは若年層で、その結果として、人口の高齢化も進行することになる。
若年人口はバリバリ働いて社会を支えると同時に、消費性向が大きく景気を刺激してくれる存在だ。これまでの日本の発展も、若年層によってもたらされた面が大きい。
【参考記事】2050年の「超高齢化」日本に必要な意識改革
日本の若年人口の時系列カーブを描いてみると、大まかには景気動向と重なっている。将来予測も含む、20~40代人口の長期カーブは<図1>のようになる。
青色が日本のカーブだが、1960年代までは増え続けていた。バリバリ働き、かつモノを大量に購入・消費してくれる若年層の増加。「奇跡の復興」と称される高度経済成長は、人口ボーナスという条件に支えられていたと言える。
70年代半ばになると増加は止まり、80年代まで高原状態が続いて、低成長の時期と重なっている。そして90年代以降は坂を転げ落ちるように減っていき、不況の深刻化の時期と見事に一致している。
労働意欲・消費意欲がともに旺盛な若者の存在は大きい、ということだ。その若者は今後も減少の一途をたどると見込まれ、2020年にはベトナムに追い越される。躍進の可能性を秘めた市場の選手交代というところだろうか。
若年人口の国際順位は、時代とともに変化する。日本の20~40代人口は、高度経済成長のさなかの1960年では3943万人で、世界で5位だった。最近はどうで、さらに将来はどうなるか。40年のスパンで、上位20位の顔ぶれの変化をまとめると<表1>のようになる。
人口大国の中国とインドが圧倒的に多い。インドは今後も勢いが続き、2040年には中国を抜いて首位になる。2040年では、この2国だけで世界の若年人口の3分の1が占められる。巨大なマーケットとなるので、両国の言語や文化を学ぼうという機運も高まるだろう。
日本は時代とともに順位が下がり、2040年には19位まで落ちると予測される。その一方で、アジアやアフリカの新興国の躍進が目立つ。上記の表は、経済勢力地図の変化と言えるかもしれない。
【参考記事】世界トップの教育水準を労働生産性に転換できない日本の課題
日本では今後、人口減少と高齢化により、国内市場ではモノが売れなくなる。お隣の韓国では、一流企業に入るには英語力や海外留学経験が必須というが、日本も近いうちにそうなるのではないか。いやおうなしに企業は国外への進出を迫られるのだから。
欧米並みに社会を多国籍化することで、消費意欲旺盛な若年人口をキープするのか。あるいは空洞化が進む一方なのか。これからの日本には、かつて経験したことのない大変化が待ち受けている。
<資料:United Nations「The 2015 Revision of World Population Prospects」>
舞田敏彦(教育社会学者)
日本の近い将来についてはいろいろな予測があるが、人口が減っていくことは明らかだ。年齢層別にみると、減少のスピードが最も大きいのは若年層で、その結果として、人口の高齢化も進行することになる。
若年人口はバリバリ働いて社会を支えると同時に、消費性向が大きく景気を刺激してくれる存在だ。これまでの日本の発展も、若年層によってもたらされた面が大きい。
【参考記事】2050年の「超高齢化」日本に必要な意識改革
日本の若年人口の時系列カーブを描いてみると、大まかには景気動向と重なっている。将来予測も含む、20~40代人口の長期カーブは<図1>のようになる。
青色が日本のカーブだが、1960年代までは増え続けていた。バリバリ働き、かつモノを大量に購入・消費してくれる若年層の増加。「奇跡の復興」と称される高度経済成長は、人口ボーナスという条件に支えられていたと言える。
70年代半ばになると増加は止まり、80年代まで高原状態が続いて、低成長の時期と重なっている。そして90年代以降は坂を転げ落ちるように減っていき、不況の深刻化の時期と見事に一致している。
労働意欲・消費意欲がともに旺盛な若者の存在は大きい、ということだ。その若者は今後も減少の一途をたどると見込まれ、2020年にはベトナムに追い越される。躍進の可能性を秘めた市場の選手交代というところだろうか。
若年人口の国際順位は、時代とともに変化する。日本の20~40代人口は、高度経済成長のさなかの1960年では3943万人で、世界で5位だった。最近はどうで、さらに将来はどうなるか。40年のスパンで、上位20位の顔ぶれの変化をまとめると<表1>のようになる。
人口大国の中国とインドが圧倒的に多い。インドは今後も勢いが続き、2040年には中国を抜いて首位になる。2040年では、この2国だけで世界の若年人口の3分の1が占められる。巨大なマーケットとなるので、両国の言語や文化を学ぼうという機運も高まるだろう。
日本は時代とともに順位が下がり、2040年には19位まで落ちると予測される。その一方で、アジアやアフリカの新興国の躍進が目立つ。上記の表は、経済勢力地図の変化と言えるかもしれない。
【参考記事】世界トップの教育水準を労働生産性に転換できない日本の課題
日本では今後、人口減少と高齢化により、国内市場ではモノが売れなくなる。お隣の韓国では、一流企業に入るには英語力や海外留学経験が必須というが、日本も近いうちにそうなるのではないか。いやおうなしに企業は国外への進出を迫られるのだから。
欧米並みに社会を多国籍化することで、消費意欲旺盛な若年人口をキープするのか。あるいは空洞化が進む一方なのか。これからの日本には、かつて経験したことのない大変化が待ち受けている。
<資料:United Nations「The 2015 Revision of World Population Prospects」>
舞田敏彦(教育社会学者)