<プリンスの熱烈なファンなら絶対に行きたいミネソタ州の「ペイズリーパーク」。生前のプライベートライフを垣間見ることができるほか、衣装や楽器、そして骨壷まで展示されている>(写真:昨年11月のアメリカン・ミュージック・アワードではプリンスの『パープル・レイン』が最優秀サウンドトラックを受賞した)
昨年4月に急死したプリンスは、多くの不可解な行動で知られた。世界的な成功を収めたミュージシャンでありながら、生涯ミネソタ州に住み続けたことも、その1つだろう。
プリンスは州都ミネアポリスに生まれ、そこから車で30分ほどの小さな町チャンハッセンにある自宅兼スタジオ「ペイズリーパーク」で死んだ。
以来、ファンの間では、ペイズリーパークが記念館として一般公開されるのではないかという噂が絶えなかった。その噂が、ついに現実になった。
ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。小さな町にファンが殺到することや、交通渋滞を懸念したチャンハッセン市議会が、開館を許可することに消極的だったのだ。このため当初は、昨年10月に数日だけの限定で公開された。
【参考記事】プリンスが残したデジタル実験の軌跡
だが結局は、市議会も地元への経済効果に気付いたようだ。ペイズリーパークは12月から、正式に一般公開が始まった。
「プリンスはずっとペイズリーパークを一般に公開したいと考えていて、積極的に準備をしていた」と、プリンスの実妹タイカ・ネルソンは語っている。「兄の生前、ここを訪れる機会に恵まれた人は数百人しかいなかった。その門戸を開くことで、世界中のファンがプリンスの世界を体験できるようになる」
ペイズリーパークを訪れたファンは、生前のプリンスのプライベートライフの一部を垣間見ることができる。吹き抜けの大広間からレコーディングスタジオ、リハーサルルーム、映像の編集室、ライブスペースまで見どころは数多い。
さらに「数千点」に及ぶとされる展示品には、きらびやかな衣装と数多くのトロフィー、楽器、バイク、映画のセットが含まれる。一番の驚きは、大広間のアトリウムに飾られている、プリンスの遺灰を入れた骨壷かもしれない。骨壷といっても、ペイズリーパークの形を模したかなり大きな入れ物だ。
ペイズリーパークのチケットは3種類。一般チケット(38.50ドル)では、館内のほとんどの展示を見られる。平均的な所要時間は1時間10分。金曜日と土曜日はアフターダークチケット(60ドル)で午後6~11時に館内を回れるほか、DJ付きのパーティーに参加したり、プリンスのお宝映像を見たりできる。
VIPチケット(100ドル)では、1時間40分にわたるガイド付きツアーを楽しめる。一般チケットでは見られない品々にお目にかかれるほか、写真撮影もしてもらえる(それ以外は館内での撮影は一切禁止)。
運よく木曜日のVIPツアーに参加できれば、多くの名曲が録音されたスタジオBで、プリンスの曲の一部に自分のボーカルをかぶせてレコーディングしてもらうという、ファンには夢のような体験ができる。写真や自分の録音は、紫色のUSBに保存して持ち帰れる。
プリンスの没後1年となる4月には、「セレブレーション2017」という4日間の特別イベントを予定。「ミュージシャンや特別ゲスト、それにプリンスと一緒に仕事をし、彼のことを最もよく知る友人たちが一堂に会して」ライブやパネルディスカッションを繰り広げる計画だという。
【参考記事】紫の異端児プリンス、その突然過ぎる旅立ち
ファンの衝撃を癒やす場所
プリンスのファンにとってのペイズリーパークは、エルビス・プレスリーのファンにとってのグレースランドに似たものになるだろう。グレースランドとは、テネシー州メンフィスにある旧プレスリー宅で、ファンには聖地のような存在だ。
グレースランドを訪れることは、「本物」のプレスリーファンである証し。それと同じように、ペイズリーパークを訪れることは、熱烈なプリンスファンにとって死ぬまでに必ずやりたいことの1つになるだろう。
昨年は、伝説のギタリストであるジミ・ヘンドリックスが60年代末に住んでいたロンドンのフラットの一般公開も始まった。壁に飾られたタペストリーから、レコードプレーヤーの隣に積まれたレコードの山まで、ヘンドリックスが68年に住んでいた状態をそっくり再現したという触れ込みだ。
確かにヘンドリックスは史上最高のギタリストの1人であり、60年代の文化を象徴する存在だ。だが、現役時代は主にイギリスの一部の音楽シーンの枠組みで活躍したにすぎない。
プレスリーとプリンスは違う。彼らは自分の枠組みを作り、自分の音楽シーンを作り上げた。彼らの熱狂的なファンは、彼らの体現する世界を共に生きた。だから2人の不慮の死は、ファンの人生をひっくり返す大事件として受け止められたのだ。
その死によって、人生にぽっかり穴があいてしまったファンにとって、心の穴を埋めるには「聖地」を巡礼するしかない。
[2017.1.17号掲載]
ライアン・ボート
昨年4月に急死したプリンスは、多くの不可解な行動で知られた。世界的な成功を収めたミュージシャンでありながら、生涯ミネソタ州に住み続けたことも、その1つだろう。
プリンスは州都ミネアポリスに生まれ、そこから車で30分ほどの小さな町チャンハッセンにある自宅兼スタジオ「ペイズリーパーク」で死んだ。
以来、ファンの間では、ペイズリーパークが記念館として一般公開されるのではないかという噂が絶えなかった。その噂が、ついに現実になった。
ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。小さな町にファンが殺到することや、交通渋滞を懸念したチャンハッセン市議会が、開館を許可することに消極的だったのだ。このため当初は、昨年10月に数日だけの限定で公開された。
【参考記事】プリンスが残したデジタル実験の軌跡
だが結局は、市議会も地元への経済効果に気付いたようだ。ペイズリーパークは12月から、正式に一般公開が始まった。
「プリンスはずっとペイズリーパークを一般に公開したいと考えていて、積極的に準備をしていた」と、プリンスの実妹タイカ・ネルソンは語っている。「兄の生前、ここを訪れる機会に恵まれた人は数百人しかいなかった。その門戸を開くことで、世界中のファンがプリンスの世界を体験できるようになる」
ペイズリーパークを訪れたファンは、生前のプリンスのプライベートライフの一部を垣間見ることができる。吹き抜けの大広間からレコーディングスタジオ、リハーサルルーム、映像の編集室、ライブスペースまで見どころは数多い。
さらに「数千点」に及ぶとされる展示品には、きらびやかな衣装と数多くのトロフィー、楽器、バイク、映画のセットが含まれる。一番の驚きは、大広間のアトリウムに飾られている、プリンスの遺灰を入れた骨壷かもしれない。骨壷といっても、ペイズリーパークの形を模したかなり大きな入れ物だ。
ペイズリーパークのチケットは3種類。一般チケット(38.50ドル)では、館内のほとんどの展示を見られる。平均的な所要時間は1時間10分。金曜日と土曜日はアフターダークチケット(60ドル)で午後6~11時に館内を回れるほか、DJ付きのパーティーに参加したり、プリンスのお宝映像を見たりできる。
VIPチケット(100ドル)では、1時間40分にわたるガイド付きツアーを楽しめる。一般チケットでは見られない品々にお目にかかれるほか、写真撮影もしてもらえる(それ以外は館内での撮影は一切禁止)。
運よく木曜日のVIPツアーに参加できれば、多くの名曲が録音されたスタジオBで、プリンスの曲の一部に自分のボーカルをかぶせてレコーディングしてもらうという、ファンには夢のような体験ができる。写真や自分の録音は、紫色のUSBに保存して持ち帰れる。
プリンスの没後1年となる4月には、「セレブレーション2017」という4日間の特別イベントを予定。「ミュージシャンや特別ゲスト、それにプリンスと一緒に仕事をし、彼のことを最もよく知る友人たちが一堂に会して」ライブやパネルディスカッションを繰り広げる計画だという。
【参考記事】紫の異端児プリンス、その突然過ぎる旅立ち
ファンの衝撃を癒やす場所
プリンスのファンにとってのペイズリーパークは、エルビス・プレスリーのファンにとってのグレースランドに似たものになるだろう。グレースランドとは、テネシー州メンフィスにある旧プレスリー宅で、ファンには聖地のような存在だ。
グレースランドを訪れることは、「本物」のプレスリーファンである証し。それと同じように、ペイズリーパークを訪れることは、熱烈なプリンスファンにとって死ぬまでに必ずやりたいことの1つになるだろう。
昨年は、伝説のギタリストであるジミ・ヘンドリックスが60年代末に住んでいたロンドンのフラットの一般公開も始まった。壁に飾られたタペストリーから、レコードプレーヤーの隣に積まれたレコードの山まで、ヘンドリックスが68年に住んでいた状態をそっくり再現したという触れ込みだ。
確かにヘンドリックスは史上最高のギタリストの1人であり、60年代の文化を象徴する存在だ。だが、現役時代は主にイギリスの一部の音楽シーンの枠組みで活躍したにすぎない。
プレスリーとプリンスは違う。彼らは自分の枠組みを作り、自分の音楽シーンを作り上げた。彼らの熱狂的なファンは、彼らの体現する世界を共に生きた。だから2人の不慮の死は、ファンの人生をひっくり返す大事件として受け止められたのだ。
その死によって、人生にぽっかり穴があいてしまったファンにとって、心の穴を埋めるには「聖地」を巡礼するしかない。
[2017.1.17号掲載]
ライアン・ボート