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注目の就任式は行われるか、もうひとつの大統領就任に高まる緊張

ニューズウィーク日本版 2017年1月18日 20時1分

<トランプ米大統領就任の前日、西アフリカの小国ガンビアでも新大統領就任が行われる予定だ。しかし、選挙で敗北した独裁者ヤヤ・ジャメは居座り、直前になって非常事態を宣言。タイムリミットは間近だが果たして...> (写真:ガンビアのジャメ大統領)

 昨年大統領選があり、負けた候補の支持者は結果を受け入れず、路上に出て「ノー」を叫んだ。その候補自身も、直後は敗北を認めていたが、その後は「不正があった」と主張。公職に就いた経験がない新大統領の就任が今週に迫っている。

 アメリカの話ではない。今週20日に行われるドナルド・トランプの米大統領就任が世界の注目を集めているが、こちらは19日、西アフリカの小国ガンビアの話。近隣諸国は大いに"注目"し、軍事介入をちらつかせている。

【参考記事】トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジョン・ルイスって誰?

 大統領選が行われたのは12月1日。22年にわたりガンビアに君臨してきた「独裁者」ヤヤ・ジャメ大統領が敗北し、対立候補のアダマ・バロウが今週19日に就任予定だ。しかし、ジャメは選挙で「前例のない異常な内政干渉」があったとして結果の受け入れを拒否。任期切れを目前にした17日、非常事態宣言を出した。ガンビア情勢に詳しいジェフリー・スミスはフォーリン・ポリシー誌に、「ジャメは長期戦に備えている」と語る。

 ロイターによると、地域大国ナイジェリアやガンビアの隣国セネガルなどが加入する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が、ジャメが権限移譲に応じない場合に備え、軍事介入を準備している。ナイジェリアは17日、ガンビア沿岸に軍艦を展開させた。

 報道によれば、高まる緊張を前に、連日数千人が隣国に脱出している。英旅行会社大手トーマス・クックも約1000人のイギリス人旅行者を緊急出国させる計画だとガーディアン紙は報じた。



同じ年の独裁者と新参者

 現職のジャメは94年の軍事クーデターで権力を掌握し、96年に複数政党制を盛り込んだ新憲法を制定。政党「愛国再建同盟(APRC)」を結成し、選挙に勝利して大統領に就任した。任期は5年。これまで4期20年を務めている。

 フォーリン・ポリシーによれば、魔女狩りのように弾圧を繰り返し、自分ならエイズを治せると言い張り、「ネブラスカ州大海軍大将」という謎の経歴を持つ、危険で奇怪な独裁者だ。昨年10月には国際刑事裁判所(ICC)からの脱退も表明している。

【参考記事】アフリカ諸国の脱退相次ぐICC、ガンビアは西側の二重基準を非難

 一方、大統領選に勝利したバロウは、ガンビア政界の新参者だ。ガンビアがイギリスから独立した1965年に同国西部の小さな村に生まれ(ジャメと同じ年)、2000年代前半にはイギリスで学びながら警備員として働いていたと、BBCは伝える。2006年に帰国して不動産業を興し、昨年9月、野党リーダーが投獄されたという要因もあって野党7党の大統領選統一候補に選ばれたという。

 バロウは選挙戦でジャメの政敵投獄や長期政権を批判し、その「業績」を否定、ICC復帰も公約した。ガンビア経済は低迷にあえいでいるが、BBCによれば、その影響をもろに受けている若年層に特に支持されたようだ。

 選挙戦での勝利後、バロウは1月14日にマリで開催されたアフリカ・フランス首脳会議に招待され、フランソワ・オランド仏大統領とも会談している。国際社会のバックアップは得つつあるが、果たして予定どおり大統領に就任できるのか。

 独裁者、選挙の混乱、経済低迷......。よくあるアフリカの話で済ませてはならない。「世界の警察官をやめる」と主張してきたトランプの大統領就任により、今後はこうした政変や危機がますます野放しになるかもしれない。


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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