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ネタニヤフがトランプに問い質したい6つの懸案

ニューズウィーク日本版 2017年2月15日 18時0分

<大統領選中はイスラエル寄りの発言を繰り返し、パレスチナ和平をぶち壊しかねない勢いだったトランプと、15日の首脳会談を心待ちにしていたイスラエルのネタニヤフ首相。実際には何が話し合われるのか>

アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は水曜、ワシントンで初会談に臨む。少なくともネタニヤフにとっては待ちに待った会談だ。トランプの大統領就任に祝辞を送り、訪米に先立ってアメリカとイスラエルの同盟関係は「一層強くなろうとしている」とツイートした。記者団に対しても、トランプと「率直に語り合う」と述べている。

だが、イスラエルとアメリカの絆をことさらに強めなければならないのは、両国の間に深刻な問題が横たわっているからにほかならない。今回のトランプ・ネタニヤフ会談で話題に上りそうな話は以下の6つだ。

入植)サマンサ・パワー前米国連大使は2016年12月23日、イスラエルが占領地のガザ地区や東エルサレムなどで行う入植活動の停止を求める国連安保理の決議案への投票を棄権した。アメリカが拒否権を行使しなかったことで、決議案は採択された。

【参考記事】イスラエルの入植に非難決議──オバマが最後に鉄槌を下した理由

この行動を、トランプとネタニヤフはともに公然と批判した。イスラエルはその後、入植を急速に拡大した。ところがトランプは、ネタニヤフの訪米数日前になって、入植は和平交渉のためにならないという考えを示した。

【参考記事】トランプはどこまでイスラエルに味方するのか:入植地問題

イスラエルに対するトランプの姿勢が、親イスラエルから、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指した前政権の方針を引き継ぐ方向へとシフトしたことを伺わせる動きだ。それまでのトランプは、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移設すると公約したり、駐イスラエル大使に入植を支持する強硬派のデービッド・フリーマンを指名したりしていた。

国連)トランプは米国連大使指にニッキー・ヘイリーを指名したが、議会の指名承認公聴会の前に何の合意形成も行っていないようだった。唯一意見が一致したのは、国連のイスラエルに対する扱いが不当だということ(これに関してはネタニヤフもまったくの同意見である)。指名承認公聴会の席上では、国連がイスラエルに対する姿勢を変えない限り、アメリカは国連への分担金支払いを取りやめるという考えも示唆された。

さらに、ヘイリーは2月10日、パレスチナ自治政府のサラム・ファイヤド元首相を国連リビア特使に任命するアントニオ・グテレス事務総長の初の人事案に反対した。パレスチナは国連の正式な加盟国ではないからだ。外交筋によれば、国連関係者はアメリカから事前にファイヤドの特使就任を承認するという連絡をもらっていたにも関わらず。いったい政権内部の意思統一はどうなっているのか。



イラン核合意)イランに関しては、ネタニヤフとバラク・オバマ前米大統領は意見が対立していた。イラン核合意とは、同国の核開発を阻止しつつ、ウラン濃縮の一部は容認し、一方でイランに対する経済制裁を解除するというもの。イランを仇敵とみなすネタニヤフは、この合意はイランを利するだけだと激しく反発した。

【参考記事】イランの弾道ミサイル実験は核合意違反にならない?──イスラエルは激怒

トランプは大統領選中、イランとの核合意は破棄すると発言していたが、実際のところ、アメリカだけでは破棄できない(ほかにもロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツも合意に署名している)。この件に関してトランプは今のところ、何の動きも見せていない。今回の会談ではこの件に関するトランプの意向について問われるだろう。

パレスチナとの和平交渉)トランプは2016年11月にニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、「イスラエルとパレスチナの和平をまとめたい。それができたらどれほど素晴らしいか」と述べた。そして、娘婿で大統領上級顧問のジャレド・クシュナーを中東和平の仲介役に起用した。クシュナーやユダヤ人で父親はネタニヤフと親交がある。

アメリカの対イスラエル援助)オバマは2016年9月、イスラエルに対して380億ドルという史上最大規模の軍事支援を決めた。トランプはおそらく、イスラエルとの関係強化に努めているのはオバマではなく自分だということを示すために、会談で何らかの支援を申し出ようと考えるだろう。

スキャンダル)トランプ政権では、国家安全保障担当補佐官のマイケル・フリンが就任前に駐米ロシア大使と接触し、オバマのロシアに対する追加制裁について助言したことが露見し、早々に辞任した(民間人が外交を行うのは違法行為)。ネタニヤフも汚職などで事情聴取を受けている。共に嘆きたいこともあるだろう。

From Foreign Policy Magazine


エミリー・タムキン

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